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88.ミヤコ君と山盛りドーナツ

ドーナツはお好きですか?

私はオールドファッションとポンデ黒糖とハニーディップとハニーチュロが好きです。

昔は柔らかいのばかり好きだったのに、この頃噛み応えが有る方が美味しく感じる。

噛み応えを求める人は何かしらのストレス、それも理想の現実が遠い人に多いのだとか。

歯ぎしりや歯を食いしばるのが常態化しないように、ガムを噛む習慣付けると良いらしいです。←伝聞。

 結局棒銭の半分はお札に替え、早速ミヤコの財布には熊本に来た時に手元に残ってた数百円と、一万円分のお札と小銭が詰め込まれることになった。入りきれない分は紙袋の中に残してある。

 ちょっと不格好に膨れた財布に、ミヤコは嬉しそうに目を輝かせた。


 しばらく黒髪に向けて車を走らせていたツカサだったが、社外の景色を見ながらちょっと考えたように言う。


「ちょっと、日が暮れるまで時間があるからご飯食べよう。夜市でどれくらいの出店があるか不確かだし、あんまりちゃんと食事できるか分からないしさ」


 日が暮れて蛍が見やすくなるまでいるのは確実で、実際見つかるか分からないので時間は八時までは探すつもりでいた。

 そのためミヤコとシオリの夕食はツカサたちが責任を持つと、それぞれ黒江家とシオリの母親に連絡をしてあった。


「ミヤコ君もシオリさんも多分いつもしっかりしたご飯食べてるよね? たまにはちょっとジャンクな物食べない?」


 ふふっと悪戯っぽく笑うツカサに、ミヤコもシオリもそれでいいですとあっさり答える。

 するとすぐに反応したのはユカリだった。


「あ、じゃあこの道なら先にドーナツあるドーナッツ。ドーナツにしよう。テイクアウトで車内で食べるでいい?」


「僕ハンバーガー想定してたんだけど……まあいいか」


 この道の先に見せあるからとユカリが言うので、まあいいかとツカサはドーナツ屋に向かった。

 分かりやすいドーナツのチェーン店の看板。その少し先には有名ハンバーガーの店の看板がちらりと見えていた。


 有無を言わさないユカリの甘味への意欲に、ミヤコもシオリも拒否はない。

 代わりにシオリはミヤコに問う。


「ミヤコ君ドーナツ食べた記憶ある? 食べられないってことはないよね?」


 ミヤコはちょっと記憶を探る様に上を見ながら考える。


「昔は食べたことあったよ。もっちもちしてるのとか……好きだったかも」


 はっきりとした記憶ではないが、親が買ってきてくれたものを食べた覚えがあるとミヤコは言う。

 懐かしそうというよりも、あまりにもおぼろな記憶過ぎて自身が無さそうな言い方だ。


 食べた記憶があるのだったら、きっと大丈夫だとツカサも安心したように笑う。


「いいよいいよ、気になるのどんどん買おう」


 そうしてドーナツ屋の店舗に入ると、ツカサは手の消毒をすませるや三つトレイを取り出し、その上に一通りのドーナツを置いて行く。

 全種類一個は必ず買う気だということがわかった。


「幾つ買う気ですか?」


「え? うーん、三十個はマストでしょ。期間限定のは二個ずつくらいは食べたいし、あ、しょっぱいのもいいよね」


 呆れた様子のシオリに、ツカサはケースの中のドーナツを見ながら答える。


 三人居た店員たちの間に、にわかに緊張が走った。

 たがいに目を合わせ小さく頷くと、一人がすぐに店内調理のできる厨房へ。一人が幾つかの紙の箱を組み立て始めた。もう一人はレジのチェックをしている。

 店舗の営業時間は夜の十時まで。それまでに必要なドーナツの数が足りなくなることを見越したのだろう。


「ミヤコ君これとかどう?」


 とりあえずミヤコはツカサの勧めてくれるドーナツへと視線を向ける。

 ドーナツというくくりでいいのかわからないが、それは揚げパンのような物に見えた。


「カレーだって。おかず系のパイとかドーナツっていいよね。甘い物ばっかりよりこういうの途中で挟みたくなる」


「あ、カレーの、食べたい、です」


 カレーと聞いてミヤコが反応する。

 販売期間限定の新メニューに、カレーの入ったドーナツがあった。

 一も二も無くミヤコが欲しがったので、ツカサはそれをトレイに五個乗せた。


「ミヤコ君すっかりカレー好きだねえ」


「はい!」


 嬉しそうなミヤコの返事に、ツカサは満足そうだ。


「シオリさんも好きなのを好きなだけどうぞ」


「と言われても、私ドーナツあまり食べないんですよね」


 促されるも、シオリはあまりドーナツに食指が向かないらしい。

 それでも一応は食事という事で、スタンダードなオールドファッションと、ベシャメルソースの入ったパイを選んでツカサに取ってもらう。


「僕はねえ、これとこれとこれとこれとこれとこれとお」


 さらにもう一巡全種類をトレイに乗せようとするツカサ。

 しかしかなりの量がすでにトレイの上に並んで、その上に積みあがっている状態だったので、ユカリが新しくトレイを出しツカサの手からトングを奪う。


「ツカサちゃんドーナツだけでこんなにたくさん食べられる?」


 そう言いながらも、ユカリは自分の分としてクリームが入っているタイプのドーナツを次から次にトレイに乗せている。

 皿に積みあがっていくドーナツを見て、ツカサはこれじゃあだめだねと首を横に振る。


 店員がさらに二つの箱を組み立て、ツカサたちの様子見をする。


「うーん水分欲しくなりそう。ユカリ、僕ちょっと近くのスーパーでお茶買ってくるから、ドーナツの方お願いね。皆で手分けして持てば持てるよね?」


「あ、はーい、じゃあコーヒー牛乳とかバナナ牛乳とか甘い系の飲み物も欲しい」


 甘いドーナツに甘い飲み物をと頼むユカリに、ミヤコはちょっとだけ胸を押さえる。

 胸やけと化しないんだろうか?


「うん分かった。あ、別にサツキたちへのお土産も見繕って……オールドファッションとチョコファッション、ポンデリング全種類は絶対ね。あとフレンチクルーラーとかエンゼルフレンチ無いとツバキががっかりするよね。ミクちゃんって何食べたっけ? カスタードクリームよりもホイップの方が好きだったのは覚えてるんだけど」


「うん、じゃあホイップ入ってるの一通り買おう」


「たのむねー」


 ドーナツの購入をユカリに託し、ツカサは店を出ていく。

 食料を買い込むためのスムーズな連携。ミヤコは思わずつぶやく。


「……食べる事に容赦がない」


 店員はさらに二つ、箱を組み立てていた。

ポンデリングって2003年から発売されたんだって。

もう二十年以上前なのかあ。


今日の更新はこれだけ。

明日もどうなるか分からないです。

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