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85.シオリさんと浴衣

架空の夜市です。

蛍が見られる場所は実在します。

清正堰とかお勧めします。お勧め。


個人的には一度くらい長崎、島原城の蛍見に行きたいなあと思っております。

島原城にも武将さんがいらっしゃるので、武将さん好きな人も是非。

島原のポークハム美味しいです。

あとポップコーンも美味しいです。薬草ポップコーン。


熊本への愛と九州への愛も溢れてます。

「みんなでホタル観賞、という名目で、ついでに今日だったら日曜日だから、規模は小さいけど夜市が近くで行われるんだよね。だからさ、浴衣着ていってもいいよ?」


 そう言えば今日は日曜日だったとミヤコは思い出す。

 夏休みで学校に行かないから、見知らぬ土地で色々濃密な毎日を過ごしているから、すっかり曜日の感覚が狂っていた。


「日曜日……はっ」


 そして気が付く。ツカサは日曜日だと言うのに、会社に普通に出勤をしているということに。

 まさかこれは世に言うブラック企業というやつなのだろうかと、ミヤコは不安になりツカサとシオリを交互に見やる。


「日曜出勤、そうね……もしこれがクロスノックスでも同じなら、考えるべきかも」


 シオリも今更そのことに気が付いたわと、酷く後悔したような声で、無表情にツカサを見やる。


 ツカサは慌てて首を振る。


「いや別に日曜日が定休ってわけじゃないから、ちゃんと別の日に休んでるから安心して? というか、うちみたいなトラブル対応を専門に行ってる会社って、多分日曜が定休ってのはないよ。月ごとに決めたシフト制だよ。社長だけど僕現場出動するの何時もの事だから、曜日通りに休むって無いんだよ」


 世の中曜日で定休が決まってる会社ばかりじゃないんだと必死に弁解するツカサに、まあそれもそうだなと二人は納得する。

 義務教育期間中は曜日に縛られて生活しているが、中学生ともなれば、公民の授業や親や親戚の働き方を見て、必ずしも日曜日が休みでないことくらいは分かるものだ。


 それでも二人がツカサやクロスノックスが年中無休のブラックなのではないかと思ってしまったのは、ミヤコと出会った日からツカサは、一度も休んでいる日が無かったからだ。


 まだ少し心配そうな二人の様子に、ツカサは少し苦笑して言葉を続ける。


「それに僕もミヤコ君と浴衣で出かけたいんだよ。ツツジがね、ユカリと僕の分も浴衣あるよって、今朝貸してくれたんだって」


「ツカサちゃん用に、ちゃんと黒い浴衣選んでくれたんだよね。どこで売ってるのか分かんないけど、男物の黒い浴衣に黒いレースの飾り付いてるの。もしかしたらツバキちゃんが縫い付けてくれたのかな? しかも黒一色なのによく見るとバラの模様が浮き出る感じの織なんだよね。すごいの。それに合わせた黒レースの手袋と黒のレース編みのブーツも用意してあって、ちょっと見て爆笑しちゃった」


 ツカサとユカリの言葉にミヤコは驚く。

 今朝は気まずくてツツジ度は挨拶だけしかしていなかったが、ミヤコが見ていない内にそんなやり取りをしていたとは思わなかった。

 そして市役所に行った時にツカサが来ていた黒のレースたっぷりのブラウスを思い出せば、ツカサなら似合いそうかもと思ってしまった。


 ミヤコはツカサの服を観察する。

 今ツカサが着ている服は、薄手のシンプルな黒いブラウスと黒い艶の無いズボンとシンプルな布の靴だ。足音からズボンと靴には何故か金属が仕込まれているのが分かっていた。

 何故いつもこの人は真っ黒なんだろうか?


「バイト代出すからあ」


 おもわずツカサの浴衣姿を想像し、黙り込んでいるミヤコに、ツカサはまだ納得しないのかと、最後の手段を繰り出した。

 金銭の話はちょっと下品ではと、シオリが眉を寄せる。


「それっていいんですか?」


「法的な事? うーん、まあ名目は保護してる家からのお小遣いってしておくよ」


「家の仕事のお手伝いを下からお小遣い。よくある話でしょ。お手伝い程度の事は法率じゃ取り締まる範囲じゃないって。大丈夫大丈夫。メインは夜市で、蛍探しはついで? 仕事をするのはクロスノックスのエモトさんと幽霊君でその手伝いをちょっとやりました、みたいな?」


 ユカリが答え、ツカサが補足する。

 別に違法っていう程じゃない。そもそも未成年者略取と言う程働かせるつもりも無いからとツカサは言う。


 夜市がメインだと言うのなら、確かにお小遣いを渡されるくらいいいだろうと、ユカリは納得する。


「あ、だったら私着たい浴衣あるんでそれ着ていいですか?」


「え、シオリさんも浴衣着るの? 今日だけどすぐ取りに帰れる?」


 時計を見ながらユカリが問う。


「大丈夫ですよ。今日は母が家にいますから、連絡してすぐに用意してもらえるはずです」


 シオリの返事を聞きユカリはだったら大丈夫だと頷く。


「オッケーオッケー。着付けてから来る? それともうちの女性社員に着付けてもらう? ヘアセットもできるよ」


「じゃあお願いしたいです」


「はーい、じゃあ」


 浴衣の着付けをするならクロスノックス社で出来るよと、ユカリはすぐにツカサの執務机に置いてある電話に向かった。

 受話器を取ると短い番号ですぐにどこかに繋がる。どうやら内線らしい。


「あ、もしもしコトエさん? お願いがあるんだ。潜入調査の場所に家族連れ装っていくから、女の子に浴衣の気付けをしたくてね。お願いします。時間はそうだなあ、二時間後に。うんそう、就業直前ギリでごめんね。浴衣は本人の物を使うよ。あ、そうだね、うん、髪飾りはじゃあ……造像の魔女のお守り花つかおっか。一般の協力者だから。」


 シオリの浴衣の着付けは潜入調査という、会社の仕事という事にしてくれるらしい。

 シオリたちが電話の邪魔にならないように無言で待っている間に、ユカリは予定を決め、浴衣に合わせる髪飾りも会社の方で用意することを決めてしまう。

 通話が終わり、受話器を置くと、ユカリは事後承諾だがいいだろうかとユカリに問う。


「いいですよ。あれですよね、災厄を一度だけ退けるっていう」


「そうそれそれ」


 造像の魔女のお守り花、それが何なのかミヤコは知らなかったが、シオリは問題無いと受け入れる。


「何? その、お守り花って」


 ミヤコはシオリに訊ねたのだが、先にツカサが応える。


「造像っていう作家名で魔法の込められた道具作る人がいるんだよ。で、髪飾りに持ち主を守る魔法が付いてるってのを、昔読んだ漫画に触発されて作ったんだってさ。結構強い守護の魔法がかかってる髪飾りらしいんだけど、見た目は普通に和服用の布の……造花っていうのかな? 舞妓さんとかが付けてるお花の簡単な物みたいな」


 とにかく身に着けてる人を守る物だと言う事だけは分かったので、ミヤコは頷いておく。

 ちらとシオリを見やれば、口角が上向きだった。


「舞妓さんのって、それつまみ細工ですよ。ただ造像の魔女のお守り花はちゃんと伝統的な造りの物より、最近の浴衣や和服事情に合わせたカジュアル感のある飾りになってるらしいです。実物は見たことなかったんで楽しみ」


 そう言うシオリの表情は、珍しく一目で分かるくらいに嬉しそうだった。

これを定期で読んでらっしゃる方はいるでしょうか?

評価は特に必要としてませんが、できれば感想が欲しいです。

お暇なときにでもいいので、好きな県とか好きな武将とか好きな虫とか好きな季節とか好きな自然現象とか好きな妖怪とか好きな地形とか教えていただけたら嬉しいです。

どっかで世界観と突き合わせて設定造ってちょろっと出てくるかもしれません。


本日の更新はここまで。

明日以降も一日一回以上の更新を目指します。

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