表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/140

82.ミヤコ君は稼ぎたい

現実では十五歳未満のアルバイトは禁止です。

芸能関係や新聞配達、牛乳配達は一部例外。


 ミヤコの考えるように上を向いた視線で気が付いたのだろう、シオリが小さく口元に笑みを浮かべ先回りして答える。


「世界の罅が見えてる人はミヤコ君以外にもいるよ。ただ、私は直接会ったことはないけど。東京で活躍してるんだって」


 魔都とまで言われる場所で活躍と聞いて、ミヤコは小さく呻く。


「職場としては過酷だけど、やりがいはありそうだよね」


 呻くミヤコに、シオリはクスクスと笑いながら告げる。


「お給料が良さそうなら……考えたい、かも」


 少し唸った後に、ミヤコは一つ頷きそうシオリに告げる。

 無表情ながらもその目には期待や希望的な喜びが見えた。


「あ、意外と前向きだった」


 シオリはミヤコのここ数日の様子を見て、危険に対してもっと消極的な態度を取るかと思っていたが、ミヤコは思いの外東京に対して、というよりもクロスノックスの仕事について前向きであるようだった。

 それはここしばらくクロスノックス社の内部を見て回ったからか、それとも何度も遭遇した異界やこの世界の怪異との交流があったからだろうか。


「うん……自分で、自分の欲しい物、買える様になりたい、かな?」


 前向きに自分のしたい事を口に出すミヤコ。

 自分で選ぶことができないと言っていていたミヤコのその宣言に、シオリは僅かに目を瞠る。


「何かあった?」


「お祭りで、同じくらいの子とか、小学生くらいの子とかがさ、自分の財布で買い物してたから」


 シオリの問いにミヤコはこくこくと頷きながら答える。

 シオリは「ああ……」と感嘆のため息を吐く。


 自分と同じ年頃の子供たちの普通を、ミヤコは目にした。

 それと同じようにふるまいたいと、ミヤコが思うようになった。

 僅かな変化だ、だがそれを目にしてシオリは心底安堵した。


 ミヤコは自分で選ぶことができる。少しずつだが、自分で選びたい物を見つけられている。

 まだ目に見える物を所有する事への恐怖はあるようだが、それでもミヤコが手に入れられるものはこれからも増えていくはずだ。


 シオリは優しく微笑んだ。


「良いね、自分で買い物」


「うん……だから、俺も自分で稼ぎたいなって」


「だったらツカサさんの手伝いするときに、アルバイトって事にする?」


 ミヤコが積極的に就職への意識を持ったのなら、さらに後押しをと、シオリはアルバイトを勧めた。

 しかしミヤコは知っている。今の法律では未成年をはたらかせる際に色々と問題がある事を。

 ましてやミヤコはまだ義務教育中の年齢。簡単にアルバイトと言ってもツカサが雇ってくれるとは思えないと、ミヤコはシオリに言う。


「それは、無理なんじゃ?」


 シオリは首を振る。


「うーん、色々法的な問題はあるけど、ミヤコ君は両親がいないっていう事と、感覚の異能があるから、ちゃんと異能について調べて保証してもらえるところに行って保証書作ってもらったら、児童でも仕事できるんだよ。感覚系の異能ってのは昨日の話で分かると思うけど需要が高いから。無償で情報提供ってのもあるけど、ちゃんと保証書が有れば異能はお金に換えられるよ」


 確かに目視で得られる情報はかなりあった。

 匂いでも怪しいお茶を探し出せた。

 異界の流入や世界の罅に対応するためには、きっと見えると言う事は大事なことのはずだ。


「えっと……どこにあるの?」


 自分の力で稼げるのなら、その保証書というものが欲しいとミヤコは思った。

 前のめりに問うミヤコに、シオリは簡単だよと答える。


「ここからだと九州大学の小泉八雲研究所だね。すぐに保証書が欲しいならツカサさんかユカリさんに頼もう。きっと二人も歓迎するよ。あ、でもその後役所でも児童の就労に関する許可証ってのが必要になるから、実際に働くまでは少し時間がかかるかも」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ