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79.反省

 呆然とするミヤコに、ツツジは頭上から大きなため息を吐きかける。


「無茶……しないでね、ミヤコ君」


 ぎゅうぎゅうとミヤコを抱きしめ、何故か頭に頬ずりまでしてくるツツジに、ミヤコはどうすればいいのだろうかと、視線で助けを求める。


 ミヤコと目が合ったアセビは、そんなミヤコを鼻で笑い、ツバキは困ったようにツツジを見上げ、首を横に振る。

 ミクだけはミヤコを助けようとツツジの脚を掌で痛くない程度にベチベチ叩いている。


「無茶して死にかけたお前が悪い」


「うん、ミヤコ君が悪いね」


 ツツジの過剰なスキンシップの原因はミヤコの行動のせいだと、アセビもツバキも助ける気はないようだ。


「あの、でも……」


 あそこでミヤコが動いていなければ、きっとあの子連れは異形に襲われていた。

 だからミヤコは自分が間違ったことはしていないと思っている。

 思っているが、アセビの視線はとても鋭く、ミヤコを責めるようだった。


 黒江家に帰って、留守番をしていたコハナと、ちょうど帰って来たばかりのサツキは、靴をなくしボロボロのカートを抱えて帰ってきたミヤコたちに驚いた。

 しかもアセビとミヤコの二人は浴衣がかなり濡れている。

 ビショビショとまではいかないが、それでもこのままでは冷えること間違いないと思えた。


「何があったの? 怪我は?」


 コハナは真っ先にミヤコの身体を確かめ、足の裏が少しだけ切れているのを見ると、すぐにお風呂場へと連れていき、先に風呂に入って足の裏をしっかり洗うように厳命する。

 ミヤコの部屋の傍のシャワー室でないことに驚くも、


「何があったかは上がって来てから聞きます。服は用意しておくから、着替えたらすぐに声を出して呼んでね。足の裏の手当てするから」


 怒っているような泣いているような顔でコハナが言うものだから、ミヤコは拒否できないまま風呂場へ。

 湯舟はすでに溜めてあったが、入る気にはなれなかった。

 今更ながらに足の裏が痛いと感じていた。

 夏場の湯気のこもった熱い浴室が、あまりにも懐かしすぎて、ミヤコは何故か妙に泣きたくなった。


 風呂から上がって来たミヤコの傷の手当てをすると、すぐにコハナはリビングへ。ミヤコもそれに付いて行くと、

 部屋ぎに着替え、ソファーの下に正座をしたツバキとアセビがいた。


「えっと……」


 正座し床をじいっと見つめる二人。


「ツカサさんから連絡があったの。だいぶん叱られたみたいでね。それと明日ミヤコ君迎えに来るって。今日見たこと感じた事改めて聴取したいから記憶の整理でもしておいてって」


 そう言うとコハナは着ていたエプロンを脱いで、ダイニングの床の端に置かれていたトートバックへと丸めて入れてしまう。

 どうやらこれから帰宅するようだ。


「あ、あの、怪我の治療……ありがとうございます」


「どういたしまして。はやく良くなるよう明日は朝から足洗ってね。ツバキちゃんに薬塗りと、ガーゼ貼ってもらってね」


 足の裏の治療は人にやってもらった方が楽だからと言うコハナ。ミヤコは遠慮しようとしたが、ツバキがすぐに「任せて!」と元気よく請け負ってしまった。


 コハナが完全に帰っても、ツツジとアセビはまだ正座をしたままだった。


「自主反省だから大丈夫だ。明日からはもうちょっと体鍛えるらしいぞ」


 そう言ってサツキが苦笑いする。

 それはあの異形相手にとっさに動けなかった事への反省だろうか。


 二人のことは放っておくように言われ、そう言えばと、ミヤコはツバキにお風呂が空いたことを告げる。


「ああそうだね、私たちも少しは濡れちゃったしすぐに入ろっか」


「はいろっか」


 ツバキとミクが風呂へ行ったのを確認して、ツツジがようやく立ち上がり、ミヤコに向かって頭を下げた。

本日の更新はここまで。

明日以降も一日一回以上の更新を目指します。

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