69.お祭りには武将が欠かせない
ミヤコの反応にツツジはがっかりと肩を落とす。
「ああそうなんだ……誘われてはいないのかあ」
何やらミヤコとシオリの仲が進展することを望んでいるようだが、流石に出会ってまだ数日の相手ではしっかりとした友情を結ぶのも難しいのではとミヤコは首をかしげる。
そもそもシオリは最初から一緒に行きたい祭りの話をいたのではなく、ミヤコが面白がるかもしれない催しがお祭り中にあると教えてくれたのだ。
「流石に……でも、お祭りには武将が来るからって、教えてもらって」
武将、本当にどうして祭に武将という単語が付いて回るのか、ミヤコはそれが知りたい。
そしてミヤコの言葉に何故かその場にいた全員、アセビやミクまで揃って納得した。
「武将かあ、そう言えばお祭りに武将は欠かせないね」
「お祭りに武将は欠かせない」
ツツジの朗らかな声に、うんうんとミクが嬉しそうにうなずく。
「よしじゃあ武将が来るお祭りピックアップしよう!」
そう言うツツジに、アセビが呆れたような目を向ける。
「どこ見ればわかるんだよそんなの」
「どこって、武将の公式武録」
ツツジより先にスマホを取り出し検索をしていたサツキが、アセビに向かってスマホの画面を掲げて見せる。
「なんて?」
「あ、うんうん、来るね、今度の水前寺夏祭り! よしミヤコ君連れていこう」
サツキの見せて来たスマホの画面を確認し、ツツジはさっそく準備をしようと立ち上がる。
ミクも一緒に立ち上がる。
「いこう!」
「もちろんミクちゃんも一緒だよ」
「一緒だよ!」
ツツジとミクはすっかり明日の祭りを楽しみにしている様子。
今日の今さっきまで行く気なかったのにねと、アセビが呆れてサツキのスマホをスワイプする。どうやら時間を調べているらしい。
口では呆れたように言っているが、少し持ち上がった口角が、アセビも楽しみにしていることを物語っていた。
「うーん、じゃあ明日の夕飯何時にしようかな」
夕方からの祭りで、あまり夕飯が遅くなるようならミクの健康にも悪いしと、ツバキは小さく唸る。
場所自体は黒江家からは徒歩で行ける距離なので、作り置きして行って、目的のモノを見るだけ見て帰ってきて食べるのがいいだろうと、一人で決めていく。
「あの……わがまま言ってごめんなさい」
ツバキの仕事の邪魔をしてしまったとミヤコが謝るが、ツバキは気にしてないよとぱたぱたと手を振る。
「いいよいいよいいよ、むしろ兄さん頼ってもらって嬉しいみたいだから」
むしろ我儘は歓迎すると、ツバキはニコニコ。
「兄さん普段家の中でお仕事してるから、こういう人に言われて外出予定立てるんじゃないと出ていかなくてね。でも兄さん本質的にイベント大好きな「のぼせもん」だから、理由付けて外出したがるんだよ。それでまあ夕ご飯が晩御飯になって怒ると言うか叱るのはコハナさんの役目。私はちょっとくらい遅くなってもいいし、たまには買い食いとかも楽しいよねって思ってるから。というか私も行きたいし」
言ってツバキは茶目っ気たっぷりのウィンクをする。仕事として夕飯の支度をしているからには、ツバキ自身が夕方のイベントに行く機会はそうないのだろう。
明日が楽しみだと、その表情が語っていた。
ツツジもアセビもミクも楽しそうだ。
サツキは一人だけ蚊帳の外のようだが、それでも楽し気にしてる弟たちを微笑んで眺めている。
ミヤコとを視線が合うと、にいっと笑って手招く。
「カラオケ大会とかするんだと。武将が出てくるのステージイベントはその後だから、夕飯は祭りの会場の出店の食ってくるといい。小遣いはツツジとツバキに持たせとくから、腹いっぱい食べるんだぞ。目標十キロだからな」
そう言うサツキに、ツバキが大丈夫と返す。
「食べ足りなかった時用に一応夜食作り置きしておくよ」
祭りだろうが容赦なく食べさせてくる気満々の二人に、ミヤコはちょっとだけ身を震わせた。
本作品の武将さんは、モデルとした団体、個人はございますが、あくまで創作の中の武将であることをここに宣言します。
実在の武将さんではなあるようなないような、そんな武将さんだと思ってください。
明確なビジュアル描写は、色と持ち物くらいしかしないと思います。