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60.お説教

一応書いておくと、森野の教育方針というわけではないです。

我が家は結構放任主義だったので。

 結局ツカサが何を考えているのかはわからないまま、ツカサとマコトは着替えに行ってしまい、戻ってきたころに夕飯の支度が出来た。

 ミクもリビングに連れ戻された。

 夕飯の支度が終わるとコハナが帰り支度を始めながら、ツカサたちにちょっとだけ注意をした。


「こちらで夜もお過ごしになるなら、できれば五時までに連絡ください。特に仕事終わりだったら、ツカサさんたち底なしなんですから」


 夕飯を作る身にもなってほしいと言うコハナに、ツカサたちは本当に申し訳なさそうに頭を下げる。


 ミヤコは説教を受け頭を下げる三人を見やる。

 確かに三人分の食事が必要になるのではなく、一人五人前くらい食べる人間の食事が三人分必要になる。それは事前連絡なしではかなり大変なことになるだろう。


「はい、ごめんなさい。無理だった時は自分たちのご飯は買ってくるよ」


 食事がすぐにできる物では無いならば、買ってきて自分たちの分を確保する、それはツカサが出来る最善の方法のように思えたが、コハナはそれもいただけないと首を振る。


「それは駄目です。一緒の食卓に着くなら同じメニューを、ミクちゃんを預かる時から決めていたことのはずですよ。集団での食事も教育だと。まあどこかのツツジさんはそれを分かっていながらミクちゃんのためだけの食事を作ろうとしますが」


 急な飛び火にツツジも頭を下げる。

 真似しようとしたミクを、サツキが抱え上げて止める。

 別にミクが謝るようなことでは無いのだ。


「あ、はい、ごめんなさい」


「時々は容認します。特別というのはとっても嬉しい事ですしね」


 それでも、家に幼い子供がいる家なのだから考えろとコハナは言う。

 ルール無用の食卓では、健全な教育はできないのだと。


 雇用主と被雇用者のはずなのだが、この家のルール上はどうやらコハナの方が決定権を持っているらしい。

 これこそが正しい意味での家政をつかさどる婦人という事かと、ミヤコは依然本で読んだ内容を思い出し納得する。


「ミヤコ君が何か目をキラキラさせてる」


「コハナさんみたいな毅然とした態度の大人が好きなんだろうか?」


「コハナさん好きなんだろうか?」


 ひそひそと声を交わし合うツツジとサツキ。もちろんミヤコにはしっかり聞こえているがここは聞かないふり。

 人の言葉を復唱するミクが、ちょっと語弊のある言い方をしているが、それも気にしない。


「ごめんなさいコハナさん。できる限り早い連絡を心がけます」


 ユカリの謝罪に「お願いしますね」とコハナが言ったところで、どうやらお説教はおしまいらしい。

 それじゃあ私は帰りますと、コハナはリビングから出ていってしまった。

 本当はもうちょっと早くに帰るはずだったのに、急なツカサたちの泊りで、食事の用意が足りず、また離れの部屋にシーツ等のリネン類を用意したりで、この時間になってしまったのだそうだ。

 時刻はもうすぐ八時を示そうとしていた。

ご飯は美味しく有難く食べるのが一番です。

出来れば作ってくれた人にお礼を言うのを忘れずにいてくれたら助かります。

金銭的、物質的、精神的な見返りが無い労働が心身に及ぼす影響は計り知れない。

奴隷の鎖自慢も、要は精神的見返りを求めた結果の話なので。

ご飯を作ってくれる人には感謝を。

でも愛情があると食べてもらえるだけで精神的な見返りになっちゃうっていう面も否めない。

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