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57.ミヤコ君と帰宅

 夕方の四時半。今日の門限は五時だからと言われていたが、そろそろミヤコは帰らなくてはいけない。


 シオリは一人でバスで帰ると言うので、ミヤコはクロノス社の玄関で見送った。

 まだ気恥ずかしさは残っていたが、また明日ねと言ったシオリの口元は、わずかに笑っていた。

 魔女だなんて言っていたが、シオリはただの優しい女の子だとミヤコは思った。


 それからミヤコとユカリはしばらくツカサが来るのを社長室で待った。

 五時を大幅に過ぎて、妙にボロボロのツカサとマコトが二人で社長室へと入ってきた。


 ミヤコは飛び上がるほど驚いたが、二人はそんなミヤコに苦笑を返し、大丈夫だ怪我は無いと言う。


「あーでもさあああああああ、もうもうもう、最悪だった。何であんなところで爆発なんてするかな?」


「爆発落ちとか最低だろう」


 ツカサとマコトは二人で悪態を吐きながら適当な椅子に腰を下ろす。

 一体何が起こったのかはわからないが、とにかく大変だったのだろうと、ミヤコは二人にお疲れ様ですと声をかける。


 ユカリは大きくため息を吐くと、二人のために牛乳と鉄分カルシウムウェハースを持ってきた。


「もっとカロリー欲しい」


 ツカサはさっそくウェハースを開けながらユカリに言う。


「帰ってからねえ」


 笑って返しながらもユカリの視線は手元で操作するスマホへと落とされている。


「ツバキちゃんに連絡したから、ご飯は黒江の家で食べようねえ」


 そんなわけでミヤコは今朝一緒に黒江家を出たツカサとユカリに加え、マコトと一緒に黒江家へと帰る事となった。


 ツカサとマコトは疲れたと言って運転をユカリにしてもらう事に。

 そのまま十数分、ツカサとマコトは二人で後部座席に座り、車の中で仮眠を取った。


「何があったんだろう?」


 ミヤコの疑問に答える声は無かった。


 時刻はもうすぐ七時。まだまだ熊本の空は明るい。

 家に帰りつくと、すぐに飛び出してきたツツジがミヤコの肩をが知りと掴み問いただす。


「お帰りなさい、兄さんにひどい目にあわされてない?」


「えっと……大丈夫、でした」


「何をしてきたの?」


「健康診断と、カウンセリングと、あと、異能の、どれくらいわかるかって言う、何か、検査を」


 後はクロスノックス社の怪談巡りだが、ミヤコとしてはこれは言ってもいいのだろうかと躊躇し、当たり障りのない事だけを口にする。


「視力とかなんか、凄くあるらしいです。あと、幽霊、見えました」


 幽霊だったらクロスノックス社で見たと言わなければいいだろうと答えたら、ツツジは困ったように口元に手をやり、考えこむ。


「ミヤコ君はそういう類の異能なのか。だったら僕よりも他の分家の子の方が相談乗ってあげられるな。今晩にでも連絡を取って……」


 ミヤコの異能について心配をしてくれているのだろう。経験者との間を取り持とうとしてくれるツツジに、問題はないとミヤコは答える。


「あ、大丈夫、です。見える人紹介してもらったので」


 怪談巡りの途中で、クロスノックス社のエモトさんという女性を紹介された。

 異能ではなく霊感があるんだそうで、クロスノックス社屋の幽霊妖怪だったら基本的にエモトさんが管理をしているのだという。

 しかしエモトさんは幽霊妖怪と意志疎通できても、他人の異能には気が付かないし、魔法の気配も分からない。

 すべてが分かるミヤコの異能は、その点破格なのだと教えてくれた。


「僕らがそういう対応怠るわけないでしょ。安全なところで安全な事しかさせてないよ。ちゃんとユカリとシオリさん付けてたし、霊能者エモトさんにもしっかり時間取ってもらったんだから」


 ツカサが口を挟んだことで、ようやくツカサ、ユカリ、マコトの三人がいる事に気が付いたツツジは、ばつが悪そうにミヤコから数歩離れた。

 ツカサはこれ見よがしにミヤコの肩を掴み、にっこりと作り笑いでツツジを見やる。


「さあ家に入ろうか。すぐに部屋に帰る? それともリビングでくつろぐ?」


 ミヤコは何故かツカサに肩をぐいぐいと押され、ツツジを無視する形で屋内へと押し込まれてしまう。


「ツツジちゃん、今のはツツジちゃんが悪いからね? ツカサちゃんの信用が無いからって、すぐに疑うのは駄目。ちゃんとお話を聞いて、何かッ教育に悪い事やってたらそれに対してしっかり注意をするのが正解だから」


「やらかす奴だと言う事は分かっている。だが話を聞く前に文句を言うな。やらかしてる時はすぐにわかる。雑に誤魔化そうとするからその時はしっかり言え。言いにくいなら俺たちに伝えろ、説教くらいはしておく。俺たちもあいつはもっと反省するべきだと言うのも分かってるから」


 ミヤコたちの背後でユカリとマコトがツツジに説教をする声が聞こえたので、ミヤコは名前を出された本人であるツカサを見やった。

 ツカサは唇を尖らせ、ミヤコを見下ろす。


「ねえ、僕そんなに信用無い?」


「えっと……分かりかねます」

デリカシーの無さ度

アセビ>>>サツキ>ツツジ


ツカサへの遠慮

ツツジ>>>>>サツキ≧アセビ


ツカサへの信用

サツキ>>アセビ>>>ツツジ

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