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53.ミヤコ君と社食

 クロスノックス社の社員食堂は一階にあった。

 というか、ほぼ一般人も利用できる状態で、ビルの裏手に普通にレストランとしての入り口があった。

 食堂以外の社内に入ることが無いように、社内側の入り口には警備の人間がいた。

 警備の人間は大きなトラ柄の猫のような耳を持った人だった。


 ミヤコは自分の容姿がずっと普通の人間では無いと思っていたが、ちょっと瞳孔が大きさを変える程度や、牙が覗く程度は、むしろ普通なのかもしれないと思い始めた。

 大きな耳の警備の人をまじまじと見つめていると、警備の人はにやりと口の端を持ち上げ、指先で自分の大きな犬歯を指さした。


「お揃いだ」


「あ、本当だ、サンガさんとミヤコ君お揃いだねえ」


 ミヤコは思わず自分の口元を押さえ隠すが、目の前のサンガと呼ばれた警備の人が決して嫌そうにしているわけではないのに気が付き、口元の手を離した。


「お揃い……です」


 サンガはミヤコの返事に目を細めて笑う。

 たったそれだけの、深い意味も無いやり取りだったが、ミヤコは何だか嬉しくて、サンガと同じように目を細めて笑っていた。


 サンガは仕事中だから、これ以上話をして邪魔をするわけにはいかないので、ミヤコたちは食堂へと入って行った。

 ユカリが言うには、実際この社員食堂の運営は別の会社に委託しており、社内証を持っている人間と持っていない人間で値段が変わるとのこと。

 今回はツカサの都合で連れてきているので、社員食堂の利用料金はクロスノックス社が払うのだとか。


 それは職権乱用なのではとミヤコは思ったが、シオリが言うには異能持ちの保護とその異能についての検査も会社の仕事だから問題はないとのこと。


 入ってすぐに五つ並んだ券売機で食券を買い、すぐ横の受付カウンターに出して購入する、よくある大学の食堂のような雰囲気ではあるのだが、クロスノックス社の社員食堂はちょっと変わっていた。


「スペシャル……いっぱい」


 まずメニューにスペシャルと銘打っている料理が多い。

 券売機には料理の写真を写すモニターも有り、メニューには摂取カロリーが記載されているが、スペシャルと銘打つ料理のカロリーが軒並み二千キロカロリー前後もある。成人女性に推奨される一日分の摂取カロリー量だ。


「異能にはご飯が必須だから」


 ユカリはそう言って二千キロカロリーオーバーのスペシャルオムライスハヤシセットと大きなプリンのプリンアラモードの食券を購入する。

 ミヤコがツカサと行ったカフェのスペシャルランチと比べて品数は少ないが、表記されているカロリーと「スペシャルの表記があるセットは、メインの品が通常メニューの二倍から三倍になっています。食べられる量を考えてご注文ください。」という文言でどういった代物化が分かった。

 セット内容を読むと、オムライスが大きいだけでなく、一緒にカロリーを付加できるように日替わりの揚げ物が付いてくるらしい。


 ユカリに続いてシオリが購入したのは、ごくごく普通のカレーセット。カレーライスにサラダとスープが付いている。


 カレーならきっと美味しい。ミヤコはメニューを見ながら一つ頷き、シオリに倣おうと食券のボタンに手を伸ばすが、シオリがそれを押し留めるように手首を掴んだ。


「ミヤコ君は、食べようね」


 真顔で諭され、ミヤコはこくりと頷いた。


 ミヤコが選んだのは、夏野菜のスペシャル焼きカレーセットだった。

 やはりカロリーを足すために、大きなウィンナーとデザートとしてジャムがかかったヨーグルトが付いて来る。

 とにかくカロリー、一応栄養素は気にするがそれ以上に摂取カロリーだ、そう訴えるようなメニューだった。


「うんだって摂取カロリー増やすためのメニューだからねえ」


 ユカリはしたりと頷く。


「会社では異能を使うお仕事も多いからね、どうしても必要となってくるエネルギーが大きいんだよ。スペシャルメニューが量が多いのに軒並み千円くらいに抑えられてるのはね、クロスノックスの福利厚生なんだ」


「それほど異能持ちの食事事情は大事なんだよ。食べなきゃ異能持ちの人は真価を発揮できないから」


 出来る限り安く提供し、とにかくカロリーを摂取させるとユカリが言えば、シオリもいかに食事が大事かを説く。


 二人に促されるまま、ミヤコはさらにポテトサラダや単品のから揚げを食べさせられることになった。


 クロスノックスの社員食堂はスペシャルメニュー対応カウンターが通常メニューの受け渡しカウンターとは別にあり、貸出ワゴンが常備されていた。


「食べさせることに容赦がない……」


 ミヤコは料理がいくらでも並べられるよう、一人分の席の幅がやたら広く取られた社員食堂に、ほんの少しだけ身を震わせた。


 ほぼ一人でフードファイトをしているような状況になりながら、ミヤコは一生懸命に食べた。

 食べに食べた。


 その結果、昼食を乗り切ったのだが、ミヤコはカレーが美味しいと思えたのは三分の二までだった。あまりにも代わり映えの無い味にだんだんと食べることが作業になってきていた。

 色んな味のカレーを食べるって、結構大事だったんだなあと、ツカサたちの拠点でのカレーを思い出す。


 ユカリは味の目先を変えるためか、オムライスの合間合間にプリンアラモードを美味しそうに食べている。

 それをシオリが死んだ魚のような目で見ていた。


 ミヤコはもう一度自分のカレーと向き合い、一つ頷きスプーンを動かす。


「食べるって……大変だ」 

ミヤコ君がカレーを選んだ理由。

カレーだったら味が分かるから。

他の料理は給食以外で見たことも食べたことないからよく分からない。

多分他の料理もユカリさんやシオリさんが勧めてたら食べた。

自分では選べない系ミヤコ君。


サンガさん。

モデルはセブンイレブンで配布されてる絵本でおなじみ、森の戦士ボノロンの舞台に出てきた猫さん。

ボノロン阿蘇にいるんだよ!

ボノロンの舞台は見に行けなかった。

死ぬほど悲しい。

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