表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/145

47.黒江家の兄弟

 スイカの騒動の翌日。

 黒江家に泊まったツカサとユカリは、すっきりと目覚めた様子で朝七時前にはリビングいた。

 ミヤコも同じくらいの時間にはリビングに来ていたのだが、きっちり身支度を済ませた二人と違って、まだ寝癖が付いたままだった。


 今日は朝食の後ツカサとユカリの出勤について行き、二人の会社で健康診断と異能についての検査を受ける事になっていた。


「今日はちょっと忙しくなるけどいいかな?」


「はい、だいじょうぶです」


 ユカリにヘアミストで寝癖を直されながらミヤコはこくこくと首を縦に振る。

 ミヤコが熊本に来て六日目、ツカサやユカリと出会って五日目だが、そろそろミヤコはユカリとツカサには慣れてきた。


 というか、この二人が本当はもっとミヤコを構い倒したいと思っているだろうことを、ミヤコは薄々感じていた。

 特にツカサはミヤコに対しての興味関心や、親愛の表現とも言えるような言動を隠す様子がまるでない。

 同じ災害を生き抜いたミヤコを助けることは、自分のためでもあるとツカサは言っていたが、それ以上の何かがあるのではないかと思えるほど。


 ミヤコの異能を便利に使いたいという思いもあるのだろうとは、ミヤコ自身も考えていた。

 むしろそうして、役目として傍に置く理由を貰っていた方が安心できるので、ツカサがミヤコの異能を使う事には文句はない。

 ただそれはどうやらシオリの怒りに触れる事らしいので、あまりツカサは明言しないだろうことも、ミヤコは感じていた。


「おはよう兄さん、姉さん、何でそんなに早いの?」


 七時を少し過ぎてまだパジャマのままリビングに来たツツジは、ミヤコと一緒に朝の情報番組を見ているツカサとユカリを見てビクッと身をすくめる。

 そのままキッチンを覗いて、一人で朝食を作るツバキを確認して、またリビングから出ていった。


 そこから数分してサツキがきちんと身支度を済ませた状態でアセビを引きずってリビングへ。

 やはりツカサとユカリを見てビクリとするも、しっかりと目を見て挨拶をする。


「おはよう、ツカサ兄さん、ユカリ姉さん。昨日はその……迷惑をかけた」


「別にサツキは何もしてないじゃない。謝らなくていい事まで謝る必要はないよ。失望はしても怒ってはない」


 作り笑いで答えるツカサに、サツキはしょんぼりと肩を落とす。


「サツキちゃんサツキちゃん、むしろツカサちゃんは久々に帰ってくる理由が出来て喜んでるから気にしなくていいよ。頼りたい時はもっとちゃんと頼っていいって。これでもツカサちゃんもお兄ちゃんなんだから」


 対してユカリはとても上機嫌でニコニコとわらい、ついでにソファの自分の隣の空席をぽんぽんと叩く。

 サツキは少し迷って、自分が引きずって来たアセビをそこに放り投げた。


「ちょ、サツキ!」


 アセビは逃げたそうにしているが、ユカリはそんなアセビの首に腕を回して捕まえる。

 捕まえて先ほどまでミヤコにそうしていたように、アセビの寝癖を整え始める。


「アセビちゃんはちゃんと連絡できたからいい子だよねえ。問題はツツジちゃんだよ。ツツジちゃんったら一番ツカサちゃんにお願いが出来ないんだもん……本当に困りもんだよねえ」


「別に良いんじゃない? 気に入らない兄に媚びを売る必要もないでしょ」


「もう、ツカサちゃんまたそういう事言う」


「寝癖くらい自分で出来るから離して」


「できてないからいつもぼさぼさなんでしょー。大人しくてよアセビちゃん」


 そんな兄弟の会話をしり目に、サツキはキッチンへ行くと、ツバキに何か手伝う事はないかと尋ね、そのまま朝食の支度を手伝いだした。


 昨晩は夕食がパンになったので、朝食は米だった。

 朝からせっせとツバキとサツキとツツジが握ったおにぎりだ。

 具材は高菜の油炒め、梅おかか、しそこんぶとミヤコも知っている物から、ポークハムと卵焼きを挟んだもの、カレー粉で炒めたコマ切りウィンナーを入れた物と、ちょっとした変わり種もあった。


 変わり種おにぎりはツツジが作ったらしい。とてもいい笑顔で食べる様ミヤコとミクにもうプッシュしていた。

 ミヤコはポークハムのおにぎりを一つ食べたが、残りはすべてミクが食べてしまったので、普段からミクの好きな味付けだったのだろうとミヤコは納得した。


 昨日もそうだったが、ツツジがミクの食事の面倒を見ている。


「ミクちゃん美味しい?」


「美味しい!」


 ミヤコにとって黒江家の兄弟の関係はよく分からないが、とりあえずツツジが一番自分より年下の人間を構いたがる性格なのが分かってきた。

 その分もしかしたら、歳上の兄弟に甘えるのが苦手なのかもしれない。

 対してサツキはツカサとも平気で会話をして、今も手にしたおにぎりの具の話で盛り上がっているようだった。


「青い高菜も美味しいんだよねえ。でもあれって季節ものじゃない?」


「ああ、まあ今の時期も売ってはあるが、まあ、味が落ちる気はする」


「うん、だよね。そうなるとやっぱり古漬けがマストなんだよね? 油炒めにするのって面倒だからそのまま入れちゃうけど、やっぱり油炒めにした方が美味しいと思う?」


「油っ気は会った方が子供は喜ぶんじゃないか? それよりも俺はめはり寿司と青高菜のおにぎりの違いが分からんのが気になる」


「えー? 同じ物なんじゃないの?」


「食い比べればわかるだろうか?」


「あ、じゃあ今度探して買ってくる。関西行く予定あるからさ」


「ああ、頼む」


 ツツジやアセビと比べると、びっくりするくらい普通に会話をしていた。

青高菜の葉っぱ巻いたおにぎりと、めはり寿司の違いを知りたい今日この頃。


本日の更新はここまで。

明日も一日一回以上の更新を目指します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ