315.ミヤコ君と懐っこい幽霊
幽霊はプラズマなんだよ。
プラズマが何かはしらん。
ミヤコに向かって手招きをする軍服姿の幽霊。
「あれ?」
ミヤコが思わず声を上げ、少し離れた幽霊を見ていると、何があったのかとツカサ達も同じ方向を何かを探すように見る。
ミヤコは自分が見えている物をツカサ達に説明する。
「なんかあの幽霊が手招きしてて」
ここの幽霊に悪意が無いだろうことは分かった。
しかし人払いをされた後にもこうしてミヤコに積極的に接触してくる理由はないんだろうか。
見えない幽霊へと視線を向けながらツカサが問う。
「うーん、それってどんな人? 現代っぽいか昔か、昔だったら甲冑とか着てたりする? それとも着物? 軍服の兵隊さん?」
「えっと……兵隊さん?」
ミヤコの答えを聞き、いつものように取り出したタブレットで画像を検索しだすユカリ。
「というとお……これ?」
検索してすぐに出て来た西南戦争の絵をミヤコに見せる。
軍服の政府軍と、バラバラな着物を着た薩摩軍の絵だ。
ユカリが画面をスクロールすると、他にも沢山の西南戦争の絵があった。
一貫して軍服なのは政府軍のようだ。
つまり手招きしているのは、熊本城に拠点を構えていた政府軍の兵隊。
「あ、はい、そんな感じの、もっとくたびれてるけど」
絵と幽霊を見比べながらミヤコは言う。
見た感じは飾りも無く、徽章も無く、サッシュも無い、ただの一兵卒と言ったところだろう。
手ぶらでこちらへ来いと何度も手招きをしているが、そこに何か嫌な雰囲気や悪意は感じない。
「うーん……嫌な感じは?」
ツカサの問いが聞こえていたのか、幽霊がぱあっと笑顔を浮かべて手招きから手を横に振って、さらにはぺこりとお辞儀まで。
ミヤコもそれに帰すようにお辞儀をし、ツカサに答える。
「しないです。すごくフレンドリーです。笑顔で手を振ってます。あとちょっと顔立ちが、動物っぽい?」
気のせいでなければ、軍服の幽霊はちょっとだけ動物っぽい顔立ちで、口元にミヤコと似たような犬歯が覗いていた。
少し親近感を覚えて、ミヤコはちょっと手を振り返す。
幽霊も嬉しそうに振り返して、次にどこかを指さした。
幽霊が指さす方向は、元々ミヤコたちが向かおうとしていた場所ではあるが、さらに幽霊はそこから左へ行けと手を振って教える。
「あっちに行ってみろって、言ってるみたいです?」
ミヤコは幽霊が指さす方向を真似て、ツカサに教える。
「あっちは、棒庵坂かな?」
熊本城周辺は防衛拠点である城と言う事もあって、坂や道に逐一呼び名が残っている。
その道は小高い場所にあると言うだけでなく、武装した兵が登りにくいように急な坂道になっていたり、あえて段差がちぐはぐになっていたりと、とにかく登る人間を苦しめるような嫌らしさがある。
そんな坂の一つが棒庵坂だ。
そう言えば、以前熊本城観光した時に案内したいとツバキが言っていたなとミヤコは思い出す。
「行くだけ行ってみる?」
そう提案するツカサに、ミヤコはこくこくと頷く。
「行ってみたいです。気になります」
行ったところで、ツバキ曰く急峻な坂と井戸があるだけらしいが。
行くべき場所は棒庵坂で間違いないだろうかと、確認をするために軍服の幽霊を見れば、幽霊は腕を使って大きな丸を作ってくれた。
ミヤコはお礼のつもりでもう一度ぺこりとお辞儀をする。
ミヤコたちが再び歩きだすと、もう幽霊たちは無理についてこようとはしなかった。
少し気温が上がったのを感じてミヤコは気が付く。
幽霊がいるとやっぱり気温が下がるらしい。
だったらいっそ一人二人くらいついて来てくれたらよかったのにと思ってしまうのは、この暑さでは仕方ない話だった。
ミヤコはぼんやりと考える。
もしかして幽霊は、周囲の熱エネルギーを吸い取って活動してたりするんだろうか?
日本では夏場に出現するし、出現したら周囲の気温は下がるし、いつまでも存在し続けることのできるエネルギー源は何かと考えたら、熱エネルギーであれば普遍的にそこら辺にあるのだから、どんなに使用しても困ることはないだろう。
だとしたら、エネルギー源である熱を持つ存在は、きっと幽霊たちには認識ができるはず。
では幽霊にとって認識できない存在であるツカサはどうなのだろうか。
まさか実はもうすでに死んでいて、熱なんて一切ありません、みたいな事だったりしたら……。
などと妄想じみた事を考えながら、いやそんなはずはないなとミヤコは苦笑した。
本日の更新もこれだけ。
明日も一回更新です。




