313.ミヤコ君と伝説の男
ミヤコが数えるのも馬鹿らしくなるほど大量の幽霊を見て精神的ダメージを受けていると、幽霊たちの中で指揮官っぽい感じの軍人が、砲身の長い銃を上空へと打ち鳴らした。
ツカサとサユキが何かに気が付いたように周囲に視線を走らせる。
「今……何か聞こえた?」
ツカサとサユキには聞こえていたようだが、他の者達には一切聞こえていないようで、誰も分からないと首を横に振る。
どうやら幽霊の存在を見聞きできる感覚には強弱があるらしいとミヤコは初めて知った。
「あの……幽霊の一人が、銃を撃ちました。たぶん?」
ミヤコは銃を撃った軍人の幽霊を見やる。
幽霊は何故かミヤコに向けて敬礼のような仕草をしている。
ミヤコが慌てて敬礼を返すと、幽霊はふにゃっと笑ってサムズアップをする。
言葉が交わせない分、どうにかコミュニケーションを取ろうとしてくれているのが分かって、ミヤコは安心する。
悪い幽霊ではない。
「銃を持ってるって……ああ、西南戦争の時の幽霊か」
熊本は日本最後の内戦の地。
ツカサにはミヤコの見ている幽霊が薩摩軍か政府軍のどちらなのかはわからないが、きっとその時の幽霊だろうと納得する。
「西南戦争って、日本で最後の内戦ですっけ? ここってそういう幽霊いるんですね」
カンナはあまりこの辺りの歴史に詳しくないらしく、単純に凄いなあと感心する。
そんなカンナにサユキが苦笑し教えてくれる。
「そりゃあ、ここは西南戦争でも特に被害の多い場所の一つだよ。この辺りは確か政府軍の基地みたいなの設営してたとかじゃなかったかな? 熊本城は敷地が十分にあるし、小高いし、そもそも参勤交代用に薩摩藩の人がこのお城の敷地通って西に行くように道が作ってあるから、向かってくる薩摩軍を見張るにもちょうどいい所だったの。でもそのせいで集中砲火を浴びるような場所でもあってね、熊本城が西南戦争の時に燃えた理由は、一説には薩摩軍が向かってくる時に熊本城を大砲の砲撃の目印にしていたから、その目印を消すためだった、っていう話もあるんだよ」
サユキの話に、何故かツカサやユカリも知らなかったと感心する。
「ってことは幽霊はその西南戦争の時に死んじゃった人なんだねえ」
そう言って周囲を見回し、見えない幽霊を見ようとするユカリにつられるように、ミヤコもチラリと周囲を見る。
軍服の幽霊以外もまだぞろぞろと集まっていたが、ミヤコを囲みちょっかいをかけてくる者はいなかった。
それどころか、銃を撃った軍服の幽霊と、何人かの侍然とした幽霊、それに丸太で作った土突き棒を持った男たちが、集まってきていた幽霊たちを追い払っているようだった。
「あ、でもなんかお侍さんっぽい人とか、水でずぶ濡れの人とかもいます。あと、でっかい岩を担いだお相撲さんみたいな人とか」
土突き棒を持った男たちに指示を出しているらしき男は、思わずミヤコが言及するほどインパクトのある、石垣の石なのだろう巨石を抱えた大男。
それを聞いてサユキとカンナがあっと声を上げる。
「うそ、本当にいたんだ」
「わあ、伝説の人だ伝説の」
巨石を持った男はサユキたちの声が聞こえたのか、そちらを見てにやりと笑うと、そのまま姿を消してしまう。
何故かやけに満足そうな笑みに、ミヤコはどういうことなのかと首を傾げる。
「まあこの辺りで人柱にされてるとそうなるんだね。築城当初からいるとなると、地縛霊歴も長いんだろうねえ」
うんうんと何故か納得してしきりに頷くユカリ。
どうやら巨石を担いだ大男は築城に関わった人物らしい。
しかしミヤコは幽霊の正体以上に、この辺りではそうなる、というユカリの言い方が気になった。
「この場所に何かあるんですか?」
ユカリの代わりに答えたのはつかさ。
「あるよ、魔法関連の話。熊本城は魔法を行使するための場所としても機能していたんだよ」
平安の頃まではこの国にも魔法は有ったとされているが、室町を過ぎ江戸時代になってもその魔法の残滓があった場所がこの熊本城だとツカサは言う。
「と言っても、そんなに大それたことが出来たわけじゃない。ちょっとだけ、守るための力を引き出していたんだよ……熊本城はね、戦うためのお城じゃない。守るためのお城だったんだ」
横手五郎!
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