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15.お昼ご飯は怪しいお店で

 市役所の二階にある小部屋、さらにその奥のパーテーションの向こうで、ツカサは役所の職員と警察の職員、それともう一人福祉施設の職員だという人と話をした。

 ミヤコには直接聞かせるつもりはなかったのか、パーテーションの奥へは通されず、手前で会議用の机とパイプ椅子の並ぶ場所で座って待つように言われた。


 それでもミヤコの耳にはしっかり聞こえていたが。


 どうやらツカサにミヤコの保護を頼んだのが今パーテーションの向こうにいる警察職員で、ツカサがミヤコを引き受けるなら連絡も取りやすいし経過も見やすいと言っているようだ。対してミヤコの身柄を引き受けたいと言っているのが福祉施設職員、役所の職員は福祉施設寄りで、施設の実績数が有る方が今後も予算が取りやすいと結構あけすけな話をしている。

 何より黒江家の保護下というのにははなはだ不安があると言われているので、ツカサの実家は何か問題があるのだろうと察せられた。


 そこでツカサはミヤコの祖父母を探す約束をしている事、自分が手足を失った災害と同じ災害で両親を亡くしているミヤコを放っておけない事、異能についての取り扱いなら自分の家が県内随一の実績があることなどを盾に、服施設職員の申し出を突っぱねる。

 それにすでに異能が確認されているので、今後のケアについては黒江家に一日の長があるのだとツカサが言えば、それに対しては誰からも反論が出ない。

 追撃するように警察職員が同じ災害の被災者なら、下手に物を言って地雷を踏むこともないからいいだろと言うと、とたん役所の職員が呻いたので、何か過去にあったのだろうと察せられた。役所の職員が折れると、それなら仕方ないから本人にしっかり確認しようと、福祉施設の職員はため息を吐いた。


 時間にして一時間ほど話した後に、パーテンションの向こうから福祉設の職員だけがミヤコの傍に来て、本当にツカサが保護者で大丈夫かと、一見すると親しみやすそうな様子で訪ねて来た。


「ツカサさんがいいです。助けてもらったので信用してます」


 ミヤコのその一言で福祉施設職員は白旗を上げたようだった。

 その表情にも、僅かに聞こえる心音にも、まるで嘘は無いなとミヤコは納得する。

 どうやら本気で虐待児童を助けたい、そのために本人の意志が優先という意識があったらしい。

 昨日今日出会ったばかりの相手であるツカサを、信用すると言い切るのなら、それも仕方ないと思っているようだ。



 市役所を出て刺すような日差しの下に出てきてツカサが呟く。


「まあ黒江家だしねえ……あんまり良くは思われてないよねえ」


 諦観の色がにじむような呟きに、ミヤコはやっぱり早まったかなと首をかしげる。

 しかし一度決めてしまったのだから、今更やっぱりやめた波通用しないだろう。


 市役所での手続きはミヤコが思うよりも簡単で、ミヤコは自分の意思確認をされた後は、数枚の書類にサインをかくばかりだった。

 しかし十一時過ぎに役所に着き、二十分ほど面会予定の職員たちが揃うのを待ち、その後二時間弱で話し合いと手続きが終わった時には、もうすっかりお昼時を過ぎていた。


「あー終わった終わった。少し遅いけどお昼いこっかあ」


「あ、はい、食べたいです」


 そう返事したミヤコを、ツカサはじゃあこっちに来てと連れていく。

 市役所のすぐ近くには繁華街。道を一本二本超えた先にはより取り見取りの飲食店が軒を連ねているはずだった。しかしツカサはわざわざ車線の多い道路を渡って少し離れた場所へとミヤコを連れて行った。


 その店は大きな間口に良く磨かれた板張りの床、アイボリーの壁紙、濃い緑の観葉植物が並ぶ、広々スペースにゆったりサイズの椅子。外光を沢山取り入れた明るい店構えの、表を一見すると洋菓子店のような店だった。

 しかし店内は持ち帰りと店内で食事をするためのスペースがわけられており、ツカサはミヤコの手を引いて奥の食事をするスペースへ。

 飲食スペースの手前にはランチメニューが書かれた黒板が有ったので、どうやらしっかりと食事もできるらしい。


「お洒落カフェ……ってやつだ」


 イートイン用レジ横にはおいしそうなイートイン用のケーキのショーケース。土産用の日持ちがする焼き菓子も置いてある。

 食事メニューはあるが喫茶の方が主役の店なのではないかとミヤコは不安になる。

 この二日でツカサがミヤコにひたすら食事を与え続けるというのは分かっていた。さすがに甘い物ばかりを大量には食べられないかもしれない。

 しかもショーケースの中に並べられているケーキのビジュアルは、ミヤコが今まで見たことも無いほどキラキラしい。


「気後れしちゃう? でもここすごくお茶が美味しいって評判なんだよね」


 ちょっとだけしょぼんとした顔でツカサが振り返って尋ねる。


「いえ、大丈夫、です」


 たしかにこのような店に入る事は都が叔父の家で暮らすようになってから今までなかった。ただこういう店が存在しているという事は薄っすらと残るそれ以前の記憶ではあった。だから問題無いと思えたのだが……。


 ミヤコは鼻につく妙に甘い匂いに吐き気を覚え、腕で口元を押さえた。


「えー、何でそんなに緊張してるの?」


 ミヤコの行動を緊張のせいだと捉えたツカサは、まだ座る前だしそんなに嫌ならやっぱりやめようかと足を止める。


 しかしミヤコはそうではないと必死に首を振り、店員に聞かれたら気を悪くさせてしまうかもしれないと、ツカサの腕に縋りながら小声でミヤコは訴える。


「えっと……あの、何か、言い悪いんですけど、妙な感じって言うか……異界っぽい雰囲気? あるなって」

熊本市の中央区の区役所。

地味に観光地として覗いてほしい。

知ってる人は知っている、ケロロ軍曹の像が置いてあるので写真撮るといいと思うの。

十四階からは熊本城が良く見えるのでここも写真スポットだと思うの。

ルフィ像があるのは県庁なのでここではない。

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