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117.ミヤコ君と地獄の花

 お気に入りのお菓子をコーヒーでゆっくり味わい、すっかり落ち着いたツカサと、北海道銘菓を存分に堪能し、満足げなユカリ。


 そう言えばユカリは甘い物を譲らなかったなと、ミヤコは今更ながらに思い出す。

 ミヤコとツカサとマコトは、それぞれマルセイバターサンドを二つ、三方六の三種類を一切れずつ食べた。残りは全てユカリが食べた。


 よいとまけという相当甘いらしいお菓子は、明日ユカリが一人食べるつもりだと聞いて、ミヤコは思わずユカリの頭からつま先までをじっくり見てしまった。

 身長は女性の平均よりは高いものの、体形はやせ型、そんなユカリのどこに、あれだけのカロリー塊が入って行ったのだろうか。


 コーヒーは思ったよりも苦くて、ミヤコはコーヒーの倍の分量の牛乳を入れて飲んだ。

 ツカサはそれを特に気にした様子も無く「コーヒーの匂いだけ堪能したい時はそうやって飲むといいかもね」と穏やかに笑った。


「それでね、ミヤコ君が見つけてくれた、カフェやアイスクリームに使われた地獄の花から作られる生薬は、ものすごく足が早い。あっという間に悪くなっちゃう。鯖なんか目じゃないくらいなんだよ」


 唐突に甘味を食べる前に話を戻され、ミヤコは飲んでいた牛乳を吹きそうになった。


「あ、ごめんごめん。話を戻すね」


 甘い物を食べて一心地付いたから話を戻したいというツカサ。

 もちろんミヤコたちに異論はなかった。


 地獄の花から作られる生薬。それがミヤコがカフェやアイスクリーム感じた異界の気配の元凶だったらしい。

 その生薬についてツカサが説明を続ける。


「日本だと、というか、この辺りだと地獄の花は濃い色で一、二時間しか花開いてないんだ。特殊な咲き方をしている分、その開花にもエネルギーを使ってるらしくてね、最も効率よく太陽光を得られる昼時、正午の前後含めて一、二時間くらいかな」


 花を咲かせるのにも効率というものがある。

 ほんの数時間しか咲かない花というのはこの世界にもあるが、それは受粉を担う虫の活動時間によるものだった。

 しかしこの地獄の花は受粉を担う虫では無く、種子を作るのに必要なエネルギーのために花を開かせる時間を限定しているという。

 オジギソウやネムノキの葉が似たような性質を持っていることを、ミヤコは図鑑で知っていたので、すぐに納得できた。


 必ずしも花が咲いている状態とは限らない、それが分かっているという事は、目視で探す時の形状を想像できるという事だ。

 今はまだ夕方には早い、昼下がりと言った時間。この時間だと咲いているかどうか怪しいだろう。

 センダングサの蕾をミヤコは知っているので、きっと見つけることができると頷く。


 ツカサの話はまだ間続く。

 地獄の花の特殊過ぎる性質は、知れば知るほどミヤコが地獄の花を見つけるのに役だ情報だ。


「そして生の状態から加工するなら、やっぱり摘んで一時間くらいに加工をしなくちゃ、地獄の花の効果は得られないのだとか。これについては生薬を扱う魔女に確認済み。花を圧搾して取り出した汁を、状態を固定する魔法を使って生薬にするらしいんだけど、そうやって地獄の花を加工したものは、この世界の魔力の乏しさもあって、もっても一日、二日しか効果が無いと来てる。でもその分その効果は証拠として見つかりにくいっていう、証拠隠滅特化のお薬になるんだよね……まだ流通量は多くなくて、多分季節的に今作り始めたばかり。種を取るまではいってないとは思うけど」


 ふうっと話疲れたようにツカサが息を吐く。

 対してミヤコは一体自分は何を聞かされたのかと、首をかしげ眉間に皺を寄せる。


 植物の話だと思っていたら、何故か魔法の話だった。


 ミヤコは魔法というものがあるのも聞いていた。それを使った実験室も実際に見せてもらった。シオリがそう言った魔法を使えるという魔女だというのも聞いていた。

 しかし、いきなり魔法があること、魔力という何だかふんわり概念を当たり前のように話されてしまうと、混乱をするのは必至だった。


 辛うじて、今まで読んできた本から得たなんとなくこんな感じかも知れない、という空想に支えられて、ミヤコは話をふんわり理解する。


 この世界では地獄の花はその効果を保っていることが難しい、それは魔力と呼ばれる何かミヤコの知らないエネルギーが関係しているらしい、という事だろう。


 ミヤコは口元を手で隠しながら、肉食動物が唸る時のように犬歯をむき出しにする。

 ミヤコ自身があまり好きではない、思い悩んだ時にしてしまう癖だ。

 不快な時や考えがまとまらない時に、人を威嚇するように牙をむいてしまう自分がミヤコは嫌いだった。


「ミヤコ君、理解できてないんじゃない?」


 ユカリに問われ、ミヤコは牙を唇の下に隠し、こくこくと頷いた。

 考える前に聞けばいいのだ。

 ここでは無闇に質問をしたからと、不機嫌になって手を上げる大人はいないのだから。

熊本には随兵寒夜ずいびょうがんやという言葉がありまして、それが昨日だったんです。

この日を過ぎると冷え込んできて、秋の訪れを感じるなあっていう季節です。

でも最近は暑さが長々続いたり、季節が先取りすぎる商品が多いので、いつが季節の変わり目やら?

あ、ブルボンの栗系の期間限定商品、熊本県産栗使用なので、是非食べてみてください!

隙あらば熊本推し!隙が無くとも熊本愛!

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