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110・ミヤコ君と何気ない夏の昼

 熊本城に行った翌日。ミヤコは一日暇だった。

 何だったら明日も暇だ。

 何も予定が入っていないだけでなく、ツツジが月末締め切りの仕事のために部屋にこもりきりになった事で、率先してミヤコを外に連れ出したがる人間がいない事が、ミヤコの暇の理由だった。


 ちなみにサツキは仕事で、アセビは昼前に大学の研究室へと出かけて行った。


 ミクの方も暇を持て余していそうなものだが、今日は午後から黒江家の別の分家の人に付いてもらって異能の制御を学びに行き、明日はそのご褒美としてアセビとツバキに付き添われて市民プールに行くらしい。


 今日の朝にミヤコも誘われはしたが、ミヤコは泳げないだけでなく、そもそも大量に水がある状態がそこまで好きではないので謹んで断った。

 ミヤコの両親が何故亡くなったのかも聞いていたようで、一度誘ったツバキが、はっとして顔色を悪くしたのは、ミヤコとしても申し訳なかった。


「大丈夫です。行きたいと思えないだけで、怖いとは思ってないんです。水に顔を付ける事と、着衣水泳の授業だけは受けたんで、溺れはしないってのは分かってるんで、克服する必要も感じてません」


 淡々と、いつもより長く話すミヤコに、ツバキもアセビも少し困った顔をしていたが、深く追求することはなかった。


 なのでミヤコはずっと読めないでいた児童書を、ここぞとばかりに読んでいた。

 それこそ昼食の時間にコハナが呼びに来るまで、ミヤコは水すら飲まずに部屋で本を読んでいた。

 そのせいでコハナには少し怒られた。


 昼食の配膳をしながらコハナが言う。


「いくら空調が効いてるからって水分と塩分は摂ってね。それからトイレも行くこと。健康のために少しくらいの運動を。夕方の陽射しが弱まった時間でもいいんで、散歩に行ってほしいんだけど」


「すみません、気を付けます」


「気を付けます」


 何故かミクも一緒にしょんぼり肩を落とす。

 どうやらミクもお散歩拒否界隈だったらしい。


 ミヤコは冷蔵庫から麦茶のペットボトルと牛乳の一リットルパックを取り出してテーブルに置く。

 ペットボトルでお茶を管理するのは、衛生問題と多人数分だと時間がどうしてもかかってしまうからなのだとか。

 黒江家は異能持ちの人間が多いので、飲食量が多いので仕方ないらしい。


 この家を和式から改装する際は、食糧庫であるパントーリ部分をとにかく大きく作ってもらったと、改装以前からこの家で家政婦をしていたコハナが以前語っていた。

 ミヤコは山盛りの昼食を前に、さもありなんと頷く。

 異能持ち、食への執着凄い。


 昼食はチャーハンとピラフだった。

 このチャーハンはわざわざ昨晩夕食の後に、今日のお昼用に炊いたご飯で作った物だった。

 ピラフはミヤコが部屋にこもっている間に、ミクとツバキが一緒に作ったそうだ。

 チャーハンとピラフの違いは何か、をミクに教えるための昼食なのだとか。

 家庭科の夏休みの宿題で、夏休み中一回だけでいいのでお昼ご飯を自分で作って、その感想を原稿用紙二枚以上に書くというのがあるのだとか。

 食育に力を入れている小学校だからねえ、とはツバキの言。


 ひき肉とネギたっぷりのチャーハンと、シンプルに古漬けの高菜とごまを一緒に炒めただけの高菜チャーハンの二種類に、冷凍シーフードのピラフと、ささがきゴボウと鶏肉のピラフ。トマトと卵の中華スープを添えて。

 最期に少しだけ手伝いとして、ミヤコもトマトを切った。

 小学校での家庭科の調理実習以来の包丁だったので、ちょっと緊張した。


 昼食にはツツジも一緒だ。

 仕事の進捗は問題無いと本人は言うが、ツバキは懐疑的だった。

 それでも昼食くらいは一緒に食べたいと駄々をこねるツツジに、ツバキは仕方がないなと一緒に昼食を摂ることを許可した。


「ありがとうツバキ。一日部屋にこもりきりとか、人恋しくて死ぬところだったよ。兎は寂しいと死んじゃうんだ」


 阿呆なことを言っている兄を、ツバキは冷めた目で見遣る。


「兎は縄張り意識が強いから、一羽で飼育しても問題無いです」


 図鑑で見たことあるとミヤコが言えば、ツツジはすんと表情を消して、そういう事じゃないとぼやく。


「もう、僕が、寂しかったんだよ。兎の話じゃなくて」


 ではなぜ兎の話を出したのだろうかと首をかしげるミヤコ。ツツジもどこかのネットミームを拾ってきただけで元ネタを知らないので、盛大に滑った自分を恥じて頭を抱えた。


「はい、はい、馬鹿な事言ってないで、お昼ご飯食べるよ兄さん」


 くすんくすんとわざとらしい泣き真似をするツツジを無理やりダイニングテーブルの前に座らせて、ツバキは手を合わせる。


 食材に感謝して、作った人に感謝して、美味しくご飯を食べましょうと、ミクの教育のためにツバキが宣言する。


「それじゃあ皆、いただきます」


「いただきます……」


 慣れない食事の挨拶に、ミヤコは毎回面映ゆくなる。

 ただそれが嫌ではないので、今日もミヤコは少し照れながら、小さな声でいただきますと挨拶をした。


「散歩はさ、日が照ってる時間は大変だよね? でも室内ならいいと思うんだ。ミヤコ君一緒に買い物行かない? 車でさーっと大型店舗に行って、涼しい店内をグルグル回るの」


 チャーハンを食べながら、ふっといい事を思いついたとツツジが提案すると、確かにそれは良いかもとツバキも頷く。


「ああ、そうね、熱中症になるよりはずっといいかも」


 だがしかし、ツバキはにっこりとツツジに笑みを向け、確認をする。


「兄さんは、もちろんお留守番でお仕事ね?」


「……はい」


 本当はツツジが行きたかったのだろうが、それを許すツバキではない。

 締め切りはきっちり守りなさいと、笑顔でツツジの奔放を諫めた。

水すら飲まずに八時間読書でハリポタを四冊読破、実際にやったら頭痛がしたのでお勧めしません。

ちなみに私は小学生の時からそういうあほな読み方をする人間です。

本を読んで体調を崩すのは正直時間を無駄にするのでお勧めしません。

適宜休憩挟んで読書しましょう。


本日はこれだけ。

明日はもう少し更新できると良いなと思ってます。(願望)

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