109.ミヤコ君と熊本城からの景色
お付き合い有難うございます。
今日はここまで。
もし気が向いたら感想が欲しいです。
出来れば感想が欲しいです。
もっとここ案内してよ!っていう類の感想が欲しいです。
我儘ですみません。
そして熊本城に行ってほしいです。
熊本城おもてなし武将隊、その演舞が毎日行われるはずだった。
しかしこの日は熱中症アラートが出ていたため、午後からの演舞予定は中止となったらしい。
あるという事を知らなかったミヤコだったが、中止と聞いてしょんぼりと肩を落とした。
できればまた見たかったなあ。そう口に出して言わなかったが、目がありありと語っていた。
仕方ないのでまずは本丸の中を見学することに。
そこは熊本城の歴史や、加藤家、細川家の当地の様子や、熊本地震での被災と復興についてなどが展示されていた。
加藤家時代の河川工事をはじめとした領地改良の計画は、本当に長大で人も物も金銭も大量に必要な大事業だったことも分かった。
何せ川の流れを変える工事。
現代ですら何十年もかかるような工事を、親子二代でずっと続けていたのだという。
そういった土木工事が、土地に仕事を生み、領地の金回りをよくする一つの方法だったという事をユカリは説明する。
さすがにそこまであからさまなことは展示内容には無かったが、公共事業が社会の活性化につながるのは何時の時代も同じらしい。
日本はスクラップアンドビルドの国なのだから、災害などで何かが壊れたとしても、それを悲しむばかりではなく、次世代へ繋がる事業に昇華させるべきなのだと、やたら壮大なことを言うツバキ。
その言葉は震災や水害を乗り越えた熊本の人間だからこそ、実感として口から出る物だったのかもしれない。
震災以前はもっと別の物が展示されていたのだが、それらは今は別の博物館に展示されているので、その内見せに連れていくねとツバキが鼻息荒くミヤコに宣言する。
特に細川時代の参勤交代に使った船の原寸大の復元模型がとても素晴らしいのだという。
きっとまたニッチ観光案内をするつもりなのだろう。
小天守、大天守閣と、二つの天守閣を供えた他に類を見ない城を、上へ上へと昇って行くと、やがて最上階の展望フロアへとたどり着く。
熊本の街並みが一望できる。
クロスノックスもクロノスも見えるが、残念ながら黒江家は建物の間に呑まれて見えないようだ。
「あの辺りのはずなんだけどなあ」
苦笑しながらツツジが指さす。
ミヤコも見てみるが、何となくの位置関係は分かっても、やはり家は見えない。
「ちなみにね、ミヤコ君に受験してもらうのを考えてる高校は、あの高いマンションの横らへんの高校なんだって」
ユカリが指さす場所には、なるほど濃い灰色の高層マンションと、学校らしく校庭のような少し開けた場所が見えた。が、その周辺には校庭を持つ学校が複数あるようにも見える。
「……どれですか?」
「どれだろう?」
具体的には分かっていないらしい。
それでもあの辺り、と分かれば、徒歩で行くのか公共交通機関を使うのかもわかるというもの。
ミヤコは仕方ないかと、大まかな位置を確認するだけで諦めた。まだ時間はあるのだから、その内足を運ぶこともあるだろう。
一通り本丸内の展示を見終わると、ミヤコたちは本丸を後にした。
もう一度見学通路を通って下へ下へと降りていく。
行きよりもミクが楽しそうなのは何故だろうか。
普段は人の言葉を復唱するばかりなのに、今はちょっと調子はずれな歌声が聞こえる。
「われはーきよまさーひごをーまーもーらーん」
その楽し気な歌声に、ツバキも小さく合わせて歌っている。
「民をー守りぬくー今日よーりあーしーたー」
クスクスと周囲から笑い声が聞こえるが、二人は気にせず歌っている。
歌詞からして加藤清正の事を歌っているのだろう。
「あれはね、ツバキとミクちゃんが好きな劇の劇中歌なんだよ。聞いての通り加藤清正の肥後を、国を良くしていこうっていう決意の歌。たぶん熊本城の展示を見て、思い出したんだろうね」
ツツジの説明になるほどと頷き、ミヤコは二人のするがまま、歌を聞いていた。
そう長くはない歌が終わると、二人はとても満足そうに頷きあった。
サツキがミクを抱え上げる。
「よし、満足したならとっとと降りるぞ。暑いし冷たい物が食いてえ」
早くソフトクリームを食べに行こうと促すサツキに、誰も文句を言わない。
三十七度の炎天下。帽子が有ろうと暑いものは暑い。
そうして、身を焼く陽射しから、逃げるように城彩苑へと向かったミヤコたちは、何十種類もあるそソフトクリームを堪能し、この日一日の観光を終えた。
ミヤコが特に気に入ったのは、福田農園のはちみつドリンクフロートのブルーベリー味だった。
プレゼン成功者のツバキはガッツポーズをとっていた。
ちなみに、夕飯用に城彩苑で売っている熊本の名産品を使った、豆腐の味噌漬け、馬肉のメンチカツ、サラダちくわ、魚のすり身のフライであるオランダ揚げを大量購入したのだが、そのことを連絡していなかったため、コハナにはみっちりと叱られた。
このままでは夕飯のおかずが余ってしまうため、コハナは急遽白米を五合炊き、ツカサとユカリを呼び、事なきを得た。
しかし考えなしの買い物に、黒江家の兄弟はツカサには指を指して笑われたのだった。
炭水化物を避けて買ってるのは、多分配慮のつもり。
本当はウニコロッケ(お米の入ってるコロッケ)とかも買いたかったに違いない。
でも白米さえあればおかずはいらなかったかもしれない。熊本はふりかけ発祥の地なので、ご当地ふりかけめっちゃたくさんあるのだよ!是非食べて欲しい!
有明海の海苔使ったやつとか目が落ちるほど美味しい!美味しいから!
本日の更新はここまで。
明日はたぶん一話のみ更新だと思います。