103.ミヤコ君と怪しいキッチンカー
繰り返し書きますが、このお話は私の有り余る熊本への愛情と破壊衝動をもってして書かれています。
不穏な事件も愛情ゆえです。
そして時々挟まる熊本市内の観光案内も愛情ゆえです。
この話に書いたイベント広場は、すぐ横に某Nで英知系放送の建物とかあります。
来季の朝の連続テレビ小説は小泉八雲さんが題材だそうなので、行ってみるのも一興だと思います。
そして鶴屋の裏側にある公園には、小泉八雲旧邸があるので、そちらも是非!
目的のアイスのキッチンカーには、長蛇の列とまではいかないが、十人近くが並んでいた。
しかしミヤコたちはその列には並ば無い。
ミヤコがしっかりとツツジの服の袖を掴んでいた。
「……えっと、駄目?」
「駄目です」
あれはよくない物だと、ミヤコは真剣な様子でツツジを止める。
アセビが大きくため息を吐き、スマホを取り出す。
「クソ兄貴に連絡ー」
目的のキッチンカーに並ぼうと近付くなり、ミヤコはあれは異界の気配がするから近付いちゃ駄目だ、と言い出した。
そして確かめるだけ確かめたいと言うツツジに、ミヤコは絶対にダメだと袖を掴んで引き留めた。
ならば他のキッチンカーはどうだと、イベント広場を回ってみると、うち幾つかのキッチンーでも怪しい気配がするとミヤコは言った。
そのどれもが夏の定番であるアイスやかき氷だった。
もちろんそういった物は暑いこの季節に売れ行き好調で、どこも客がキッチンカーの前に並んでいた。
逆を言えばそういったアイスやかき氷といった氷菓以外は安全だとミヤコは言う。
このことはツカサにも既に報告がされており、返事として「消費が早くて、下水に流して証拠隠滅出来るタイプの食品だけに絞られてる感じかな?」という推測が帰ってきていた。
言われてみれば、夏の暑さで証拠隠滅が容易な食品ばかりが怪しい気配をかもしだしている。
なのでミヤコたちは明らかに怪しい氷菓と、ついでに飲料を避け、料理だけをキッチンカーで購入した。
ミヤコが気になる物に視線を向ける端から、サツキが、ツツジが、ツバキが並んで買いに行くので、ミヤコはミクと一緒に飲食用のテーブル席に着いて待った。アセビだけは自分が気になる物を人数分買ってきた。
台湾から揚げ、牛肉の乗ったペッパーライス、スパイスカレー、チュロス、バインミーと、なかなかのボリュームに大満足だった。惜しむらくは冷たい物が無いと言う事。
交差点を挟んで向かいのコンビニで買ったお茶を飲みながら、ツツジが不完全燃焼気味に呟く。
「はあ……今まで気が付いてなかっただけで、意外とこういうの多いのかもね」
よほど濃厚ジャージー牛乳のアイスクリームが食べたかったのか、視線がチラチラと例のキッチンカーへと向いていた。
食べたい物を一通り食べた後、ツツジの様子を見かねてツバキが提案した。
「あー、そうだ、じゃあ……熊本城、行く?」
熊本城と聞いてミヤコは首をかしげる。
イベントの行われている広場がある場所から熊本城が見える。
茶臼山という小高い山の上にあり、もこもこと歪に盛り上がった緑に囲まれている。
市役所に来た時にも見たが、本当に市街地の中にあるなあとミヤコは思っていた。
有名な観光地だと言うのは知っていた。けれど何を見に行くべき場所なのかはよく分からない。
ツバキは時計で時間を確認しながら予定を決める。
「時間的には軽くお城見た後城彩苑で買い食いするといいよ。城彩苑ってお城の城下に作られてる江戸時代風の城下町を模した商業施設でね、ソフトクリームの種類が多いのが売りの一つなの。きっと気に入るのあると思う。というか兄さんが食べたがってる濃厚なやつもあるよ。城彩園のお店で売ってるソフトクリーム濃厚なの多いんだよね。クレミアとか天草の塩ソフトとか」
ツバキの提案にツツジもそれはいいかもしれないと納得する。
サツキやアセビも城彩苑ならいいかと頷いている。
ソフトクリームと聞いて、ミヤコはふっと思い出す話があった。
昨日、蛍火を捕獲しに行く車で、ユカリとシオリがどこそこの餡子が美味しいと話している時に、餡子と言えばとユカリがちょっと面白い物を紹介したのだ。
「……あ、そう言えば、ユカリさんが、小豆が美味しいソフトクリームがあるって。何か……羊羹みたいなお菓子を直接ソフトクリームに練り込んだやつ」
説明を聞いただけではよくわからなかったのだが、一度食べさせてみたいとユカリが言っていたので、きっと美味しい物だったのだろうとミヤコは思っていた。
「香梅の陣太鼓ソフトだね、多分。うん、食べよう食べよう」
「食べよう食べよう」
ミヤコの話を聞いて、ツツジが嬉しそうに城彩苑に行こうと腰を上げる。
ミクも城彩苑行きは賛成のようだ。
城彩苑にはソフトクリームが何十種類もあるので、是非制覇を……しようとしたらお腹が壊れるのでほどほどに。
本日の更新はここまで。
明日以降も一日一回以上の更新を目指します。