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追放ですか?別に構いませんけど。  作者: しましまにゃんこ


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5 聖女の薬草園

 ◇◇◇


 聖女の力は万能ではない。回復魔法は痛みを和らげる程度の効果しかないし、結界も、魔獣を追い払うほどの強い効果は期待できない。だからこそ、聖なる力を持つ象徴のような存在に甘んじているのだが、かつての聖女と呼ばれた人のなかには、より多くの人の助けになりたいと考える人もいた。


 その証拠として今も受け継がれているのが、聖女の薬草園である。一般的な傷薬や頭痛薬に使われる薬草や毒消し草の他にも、ここでしか見ることのできない珍しい薬草が植えられている。


「薬草園のお世話、ですか?」

 いつものようにバルタザールに呼び出されたテレサは、雑草だらけの畑の前に連れてこられていた。

「ここは、初代聖女さまが作った由緒ある薬草園だ。今度からここの管理をお前に任せる」

「はぁ……」

「いいか。この図鑑を見ながら、薬草と雑草を分けてきちんと管理するんだ。貴重な薬草を台無しにするんじゃないぞ!」

「は、はいっ!」


 初代聖女の薬草園とご立派な名前がついているものの、貴族の令嬢は、手が土で汚れるなど我慢できないため、実際には薬草園とは名ばかりの、荒れ果てた場所になっていた。他の聖女候補にやらせるとなると苦情が来るかもしれないが、テレサなら世話をさせるのにちょうどいいと、今回白羽の矢が立ったのだ。


 テレサは分厚い本をめくって、薬草と雑草の違いを一つずつ確認していく。最初はよく分からなかったけれど、覚えると面白かった。葉の形、花の色、香りや根の張り方。一つとして同じものなどない。

 そうして、冬のあいだコツコツ勉強したテレサは、春になると芽吹いた薬草を一つずつ丁寧に確認して、種類別に植え替えていく。数ヶ月後には立派な薬草園が完成した。


「おお!凄いじゃないか。お前には庭師の才能があるな。私の目に狂いはなかったということか!」

 珍しくご機嫌なバルタザールを見て、ほっとするテレサ。けれども、新たに薬草園のお世話が仕事に加わったことで、テレサの睡眠時間はますます削られて行くのだった。


 そんなある日、テレサはふと考えた。せっかく薬草を作ったのだから、薬を作らないのはもったいないのではと。バルタザールに聞いても薬の調合方法は分からなかったので、部屋の掃除をするという条件で、テレサは資料室の資料を閲覧できる許可を貰った。


 最初は簡単な傷薬から初めて、毒消し草や風邪薬など、様々な薬を調合していく。幸い資料室には、調合に必要な道具も揃っていた。貴重なものだと思うのだが、埃まみれの部屋は長い間誰も使う人がいなかったようだ。


 テレサは暇さえあれば本を読み、薬を調合するようになった。ただ、そうなると今度は、作った薬をどこにしまえばいいのか問題になった。バルタザールに尋ねると、

「勝手にしろ」

 とのことだったので、試しに神殿にきた人たちに、症状に合わせて渡してみたところ、テレサの作った薬が大評判になってしまう。


「聖力よりよっぽど効く!」

「薬をくれ!」

 と言う人が殺到したせいで、またもバルタザールに怒られてしまい、テレサの薬は神殿で管理、販売されることになってしまった。


 結果として、神殿の収入源の一つとなるほど莫大な利益を生むことになったのだが、テレサには知る由もなかった。


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