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追放ですか?別に構いませんけど。  作者: しましまにゃんこ


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4 孤児院の子どもたち

 ◇◇◇


 今日は初めて孤児院に行くことになった。数人の聖女候補たちが、それぞれ子どもたちが喜びそうなクッキーや洋服、ぬいぐるみなどのおもちゃを手に、子どもたちに手渡していく。子どもたちは歓声を上げながら、聖女候補たちから施しを受け取っていた。


(どうしよう……私、何も持ってない……)

 子どもたちに上げられるものが何も無かったテレサは、隅っこで肩身の狭い思いをしていた。


「なぁ、お前今度入る新入りか?」

 ヤンチャそうな男の子が、テレサをジロジロ眺めてくる。

「あの、私は、聖女候補で……」

「聖女候補?お前が?冗談だろ?」

 男の子の声が響くと、周りからクスクスと笑いが漏れた。

 他の聖女候補たちがチラリとテレサを一瞥すると、子どもたちにこう説明する。


「この子は、神殿で下働きみたいなことをしてる子なの」

「そうね、私たちとは立場が違うのよ」

 その言葉に子どもたちは納得したように頷いた。

「聖女候補様たちの下働きみたいなもんか」

「お前、神殿で働けるなんてツイてるな」

(そうなのかなぁ……)

 テレサは首を傾げたけれど、もしかしたら最初から、そのために神殿に連れてこられたのかもしれないと考え直した。テレサだけ掃除や水汲みをさせられているのは、そのせいなのだろう。


「一緒に遊ぼうよ!名前は何ていうの?」

「よし!俺が面倒見てやるよ!」

 子どもたちにわっと囲まれるテレサ。戸惑いながら他の聖女候補たちを見ると、

「私たちは、今日はこのまま実家に帰る予定なの。あなたはここで、子どもたちと遊んでから神殿に帰るといいわ。これも立派な奉仕活動よ」

 と言われてコクリと頷く。


 勝手に遊んで帰ったら、またバルタザールに怒られてしまうからだ。


 男の子と駆けっこしたり、女の子とぬいぐるみ遊びをしたり。その日はテレサにとってとても楽しい一日となった。何よりも嬉しかったのは、他の子どもたちと同じように、テレサの食事も用意されていたことだ。久し振りに口にする温かい食事に、テレサは思わず涙ぐむ。


「あら、どうしたの?熱かったかしら?」

 心配してくれるシスターに、

「おいしくて、泣いちゃいました」

 と素直に答えるテレサ。

「まぁ……」

 孤児院の食事は決して豪勢なものではない。必要最低限のものだ。それなのに、涙ぐむほど喜ぶとは、この小さな少女は神殿でどのような扱いを受けているのか。

 シスターは沈痛な面持ちで必死にスプーンを口に運ぶテレサを見守った。


「おい、俺のクッキーやるよ」

「私のキャンディーも上げる」

 何かを察した子どもたちが、次々にテレサにお菓子やおもちゃを運んでくる。

「みんな、優しいねぇ……私も、どうせならここの子になりたかったなぁ……」

 テレサの言葉にグッとくる子どもたち。


「お前、親は?」

「父さまは小さい頃死んじゃって、母さまと弟がいるよ……でも、大人になるまで会えないの」

「そうか……」

 聖女候補は、二十歳になるまでに聖女になれなければ、実家に帰される。逆を言えば、二十歳になるまでは、神殿から出ることが出来ない決まりだ。普通なら、せいぜい2、3年の間。けれど、テレサは、どれだけ長い間神殿に縛られることになるのだろう。


 聖女候補になるのは特別なことであり、名誉なこと。けれど、テレサはとても幸せそうには見えなかった。


「また来いよ」

「待ってるからね!」

 すっかり仲良くなった子どもたちに手を振って、テレサは神殿へと急ぐ。

 馬小屋の掃除をしたら、また泉で水浴びをしなければ。けれど、今日は心がポカポカと温かかった。


 その日、テレサは神殿に来て初めて、お腹がいっぱいのまま眠ることができた。



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