31 女神降臨
◇◇◇
次に目が覚めたとき、テレサは見たこともない豪華な天蓋付きベッドの上だった。
「んん?あれ、ここは……」
テレサが目覚めた瞬間、王宮の侍女たちが駆けつけて来る。
「聖女さまが目覚めたわ!すぐに陛下と殿下に連絡を!」
「はいっ!」
「あなた達はこちらに来て、聖女さまのお支度を手伝ってちょうだい!」
メイド長らしき女性が、立ち並ぶメイドたちにテキパキと指示を飛ばしていく。
(聖女さま……?)
全く状況が飲み込めず、ぽやんとするテレサ。
「では、少々失礼いたします。聖女様はそのままで結構ですので、全て私どもにお任せください」
「あ、はい」
理由も分からないまま、熟練のプロの手つきで風呂に入れられ、磨き上げられ、ドレスを着せられて髪を整えられる。
化粧を施し、爪を磨き上げ、美容のフルコースにテレサが疲れ果てた頃、周囲はテレサのあまりの美しさに、魂が抜けたようになっていた。
「め、女神……」
「女神さまが降臨なさったわ……」
鏡の中に映る自分の姿に、テレサもわぁ〜と歓声を上げる。
「凄いです。初めてお化粧をしてもらいましたが、お化粧でこんなに変わるんですね。うふふ、カールさんに見せて来てもいいですか?」
無邪気に微笑むテレサを見て、心臓を撃ち抜かれるメイドたち。
「くっ、なんて尊いの……」
「可愛いが過ぎるっ」
そこに、控えめなノックの音が響いた。
「テレサ嬢が目覚めたと報告があったが、準備はできただろうか……」
「あ、はーい。ただいま……」
パタパタと扉に向かうテレサ。
返事を聞いて侍従がゆっくり扉を開けた所で、自分でドアを開けようと、ドアの前まで来ていたテレサと、ユリウスがぶつかりそうになる。
「きゃっ」
「あ、すまない……」
至近距離で見つめ合う二人。
「綺麗だ……」
ユリウスは思わず呟いた。
「えへへ。そうですか?皆さんに頑張って貰いました」
無邪気に微笑むテレサに心臓を撃ち抜かれるユリウス。
「くっ……破壊力が強すぎる……」
激しく同意するメイドたち。
ユリウスの後ろからひょっこり顔を出したカールも、テレサの姿に目を細めた。
「おお。すごく似合うぞ。テレサもすっかり大きくなったな」
「えへへ。カールさんに褒められちゃった」
「こうしていると、テレサも立派な貴族令嬢に見えるな」
「そうですか?お母さまやレオンにも見せたいなぁ」
「よし、領地に帰る前に俺がドレスを買ってやろう」
「本当に?わーい」
親子のように和やかな二人の会話に、ユリウスが思わず口を挟む。
「あ、あの!その前に父上と母上に会ってくれないか。ぜひ、テレサ嬢にお礼をしたいと言ってるんだ」
「え、お礼なんていりませんよ」
「そ、そう言うわけにはいかないんだ。頼む!このとおりだ!」
「え、頭を上げて下さい。えっと、じゃあ、両陛下にご挨拶をしてから帰りますね」
「助かるよ……」
◇◇◇
テレサが通されたのは、謁見の間ではなく、国王の執務室だった。国王の側近のほかにも、王妃とリリアーヌも一緒だった。
「聖女様。この度は娘のリリアーヌをお救いいただき、ありがとうございました」
国王の言葉にテレサは首を傾げる。
「えっと、私、聖女じゃありませんけど。リリアーヌ姫様が回復されて良かったです」
「あ、あの、リリアーヌはこれで完治したのでしょうか?」
不安そうな王妃の言葉に、テレサはにっこり微笑む。
「ええ。もう大丈夫ですよ。また急に目が見えなくなるようなことはないと思うので、安心してくださいね」
ほっと胸を撫で下ろす王妃。
「あの、聖女……テレサ様?本当にありがとうございました。私、正直もう一生目が見えないんじゃないかって諦めていたんです。光も感じられなかったから。また目が見えるようになるなんて、今でも夢みたいです……」
涙ぐむリリアーヌ。
「多分、命の危険を感じて、聖力が一気に開花したんだと思います。聖力を極限まで使いすぎたせいで、目が見えない状態になったみたいですね。体に残った毒と魔素を取り除いて私の聖力で満たしたので、今はすっかり健康体のはずです」
「はい。もう、どこも痛くありません」
「良かったですね。また誰かが噛まれたときのために、薬草と毒消し草を用意してきました。後でレシピをお渡ししますね」
「何から何まで、本当にありがとうございます。良かったわね、リリアーヌ」
「はい!ありがとうございました」
王妃と連れ立って退出するリリアーヌ。
「それで、今回テレサ嬢にはいくつか確認したい事があるのだが……」
「確認したいこと、ですか」
「神殿について教えてほしい」




