30 本物の聖女
◇◇◇
バタバタと連れて行かれる二人を呆然と見送る国王と王妃。
「これは、一体……」
「父上、母上、大事ございませんか」
「あ、ああ。とっさに目をつぶったし、お前がすぐに対処してくれたしな」
「それより、なぜ聖女さまが我らにこんな仕打ちを……」
わけが分からぬままの二人をユリウスは優しく椅子に座らせる。
「後ほど厳しく追及致しましょう。テレサ嬢、ご無事ですか?」
「ん〜!んん〜!」
カールの厚い胸板にがっしり抱き締められて守られていたテレサは、慌てて腕を緩めたカールから離れて、プハッと息を吐く。
「あ、はい。無事です!カールさんが守ってくれました」
「良かった……カール隊長、感謝する」
素早くカールがテレサを抱き締めるのをみて、若干モヤモヤしていたユリウスだが、テレサが無事だったことにほっと胸を撫で下ろす。
「それよりも、リリアーヌ様はご無事でしょうか……」
心配そうにリリアーヌに近づくテレサ。
「私は平気よ。何も見えないもの。怖くなんかないわ」
クスッと笑うリリアーヌに、誰もが胸を痛めた。
「うふふ。そうですね。今のはちょっと怖かったので、包帯を巻いていて良かったですね」
テレサはそう言うと、くるくるとリリアーヌの包帯を取る。
固く閉ざされたままの瞳にそっと手を触れるテレサ。
「今までよく我慢しましたね。もう大丈夫ですよ。さあ、目を開けて」
「えっ?」
「大丈夫。見えるはずです」
リリアーヌが恐る恐る目を開ける。
息を呑む人々。
「……見える……どうして?私、目が見えるわ!う、ううう〜」
思わず泣き出したリリアーヌを、テレサが優しく抱き締める。
「リリアーヌ姫様は、とても心の美しいお方です。女神さまはちゃんとご存じです。目が見えなかったのは、ご自分の聖力で毒や傷を癒されていた副作用のようなものでしょう。これからも、女神様のご加護がありますように」
テレサがそう言うと、リリアーヌの体が淡く輝いた。
「これは、聖力!?」
「リリアーヌに、聖力が!?」
ざわつく国王と王妃。
「はい。リリアーヌ姫様からは、女神の加護を感じます。立派な聖女になって下さいね。では、わたしはこれで……あ、でも、ちょっと、ねむ……」
そのままパタリと倒れるテレサ。今度はユリウスがしっかりと受け止める。
「ユリウス、この御方は一体……」
国王の言葉にユリウスは答える。
「ご覧の通り、この方こそが、本物の聖女様です」
「本物の、聖女様……」
誰もが息を呑む中、テレサは幸せそうにスヤァと眠りに落ちていた。




