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追放ですか?別に構いませんけど。  作者: しましまにゃんこ


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18 奇跡の土地、ローレンス領!

 ◇◇◇


 その日、ローレンス領に奇跡が起きた。

 レオンの報告を受けて、ソワソワと自分たちの畑に向かう領民たち。痩せてひび割れた大地に、枯れた作物。今年の収穫は絶望的。誰もが諦めていた。いや、今年だけじゃない。ここ十年の間、どんなに頑張っても収穫量は落ち、生活は苦しくなる一方だった。


 何が悪いのか分からない。何を頑張ればいいのかも分からない。無力感に苛まれる日々。水は淀み、大地には力が無く、空気すら重く感じる……。

 ──それが、どうだろう。


 目の前に広がるこの光景を、なんと説明したらいいのか。誰もが言葉を失っていた。

 鼻をくすぐる新緑の香り。たわわに実る果樹。生き生きと力強く根を張る野菜。そして、黄金色に実る一面の小麦。

 そっと土に触れてみる。昨日までとは打って変わって、ふっくらと、栄養を蓄えた土。

 誰かがポツリと呟いた。

「奇跡だ……」


 その日を境に、ローレンス領では度々奇跡が起こるようになった。

 川には魚の大群が押し寄せ、家畜たちは見違えるように元気になった。澄んだ空気と綺麗な水のおかげか、持病に悩む者や病に倒れる者も減り、生き生きと仕事に精を出す領民たち。

 誰もが明るい表情を見せるようになっていた。


 ◇◇◇


 ローレンス領の奇跡は、それだけに留まらなかった。

「これは、間違いなくダイヤモンドの原石ですな」

 宝石商は色んな角度から石を観察した後、そう、結論を出した。

「これほどの大きさがありながら、不純物が驚くほど少ない。かなり良質な裸石です。もし、お売りになるおつもりなら、ぜひとも私めに……」

 揉み手をしながら商談に入る宝石商から、慌てて原石を取り返すレオン。

「いや、これは姉のもので、売るつもりは無いんだ。ただ、ちゃんと宝飾品として加工できないかと思っただけで」

「さようでございましたか。わたくしどもにお任せいただければ、家宝と呼ぶに相応しいお品に仕上げてみせますよ!」

「ああ。デザイン画ができたら、見せてくれるか?」

「承知いたしました!では後ほどお届けしますね。いやぁ、久し振りの大仕事。腕が鳴りますなぁ」


「これが、ダイヤの原石……」

 張り切って店に戻った宝石商を見送った後、

 レオンはテレサから返された石を、呆然とした顔で見つめていた。


 自分が子どもの頃渡したこの石を、粗末な紐でぐるぐる巻きにしてネックレスにしていたと知ったとき、レオンは本当に後悔したのだ。

 どうしてもっと、姉を信じてやれなかったのか。どうしてこんなにも家族想いの姉が、家族を見限ったなどと思ったのか。

 そして、幼稚にも、十年ぶりに帰ってきた姉に冷たく当たってしまったことを。


 姉の姿を見たときから、何となく察していた。擦り切れたボロボロの靴。何度繕ったのか分からないほど、ボロボロのワンピース。伸ばしっぱなしの髪はガタガタで、聖女どころか、貴族令嬢にもとても見えない。

 神殿が姉をどんな風に扱ってきたのかなんて、姉の姿を一目見ただけで、分かっていたはずなのに。

 それでも、屈託なく微笑む姉は、誰よりも美しくて。

 だからレオンは決めたのだ。十年間苦労してきた姉を、家族として、弟として、精一杯幸せにしようと。


 ローレンス領は金持ちとはほど遠い領地ではあるけれど、ここ最近の豊作で領内は活気を取り戻しつつあった。騎士団の活躍もあり、魔獣の被害もほとんどない。

 もう、領民の食糧の調達のために借金をする必要はない。それどころか、カールたちが魔獣の魔核や素材を売ったお金を、滞在費にと納めてくれたため、ある程度の余裕までできたのだ。


 仲直りの印として、この無骨な石のネックレスを加工してプレゼントしよう。そう思ったのだが……。

 予想外の事実に驚くレオン。そして、一つの疑問が浮かび上がる。この石は、領内を流れる川底で見つけたもの。ならば、この領内のどこかに、ダイヤモンドの鉱山があるのでは。

 レオンの読みは当たった。領内からダイヤモンドを含む、良質な宝石の鉱脈が次々と発見されたのだ。


 こうしてローレンス領は、豊かな自然に恵まれ、良質な宝石を産出する奇跡の土地として名を挙げることになる。


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