56-60
56恋の片道切符
駅員さんに
恋の片道切符くださいと言ったら
そんなものはありません
と断られて
カードの購入をすすめられた
しかたがないので
この交通カードで隣駅まで行って
ボールペンと消しゴムとのりを買った
どれもじぶんの家の近くのコンビニで
購入できるものばかりだ
人通りの多い帰り道
テクテクというリズムと
歩道を踏みしめる重みと
少しの疲労感が
ぼくの心のノートに書き込まれていく
そのときぼくは
自分が何を考えているか
わからないで
わからないじぶんのことを
考えながら歩いている
57左
左には
何かあると思っている
左利きとか
かっこいいし
空想のトカゲは
左腕にしか歩かないし
疑似科学だと
右脳は左を支配してるとか
なんとか
右目で見たときと
左目で見たとき
左目が主体となって
物が見えている
右耳で聴いた音楽と
左耳で聴いた音楽は
印象がどこか違っている
同じ音楽なのに
左には
何かあると思う
右にはないものが
左にはある
気がしてる
左と右には
エロが隠れている
けっこうみんな
知らないよね
58チョコ
チョコが美味しい季節になりました
チョコが美味しいときがきました
チョコに季節は関係ないって
チョコはいつでも美味しいって
それでも
どれでも
チョコが美味しい季節になりました
チョコが美味しいときがやってまいりました
59右
右には
何かあると思う
右利きだし
右でお箸を使うし
右で人には教えられないことも
いろいろするし
疑似科学では左脳が
右を支配するとかなんとか
まず人は
右向け右
たとえ左向いても右を向け
それくらい強引さがある
世の中右の人が多いと聞いてる
右左には左右にはない
言葉のぎこちなさがある
知らない人が多いけど
右左にはうさうさが隠れてる
ぴょんぴょん
60ヒーロー
ヒーローがいないと知ったのは
生まれて初めていじめられたときだった
ヒーローがいると知ったのは
じぶんがヒーロー気分のときだった
ヒーロー
ローヒー
気軽に呼べないヒーロー
どこにいるかわからないヒーロー
ヒーローになりたい
ヒーローになりたい
ヒーローになれない
ヒーローはなりたくてなるもんじゃない
なりたくなくてなってるものなんだ
と思ってる
ヒーローは誰だかわからない
どこの誰だかわからないやつ
そんなやつ必要?
必要ないねヒーロー
必要なときには必ずいないヒーロー
ヒーローは誰にも必要とされてない
だってその代わりをやるのはぼくだから
とみんなが思って生きているといいね