57『ムクれてないもん!』
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
57『ムクれてないもん!』
キーンコーンカーンコーン……♪
授業開始の予鈴がのどかに鳴って、お行儀のいい聖城学院の生徒は昼休みの中庭やキャフェテリアから、ゆっくりと教室に向かい始めたぞ。
トイレットペーパーの山に埋もれたルリ子たちを残していくのは気がひけたけど、授業に遅れるわけにはいかねえ。魔法で片づけるのは簡単だけど、超常現象を起こすわけにもいかねえしな。ルリ子のグループが教室に戻って、トイレが空になるのを待って直すことにしたぜ。
教室に入ると、微妙な変化を感じたぞ。
一つは、午後だというのに日差しが心地よく、いつのまにか秋の気配が忍び寄ってきてること。
「クュン!」
豚草アレルギーの沙耶が品よくクシャミをしたことでも、秋の気配は確実だ。
もう一つは、知井子とマユに注がれる好奇心……少しウラヤマシイ気持ちもそこには混じっていやがる。
そうだ、今日の昼「笑ってイイトモ」にAKRが初めてテレビに出たんだった。
むろん週末アイドルであることが売りだから、直接出演したのはリーダーの大石クララだけだったけどよ。レッスンのビデオが流れてる。当然浅野拓美に体を貸したマユも出てるし、選抜メンバーの知井子も映っているはずだ。
昼休みにスマホで観たやつもいて、その真新しい記憶がマユの頭にも飛び込んできたっちゅうわけだ。
知井子観てたやつが多いなぁ……ウラヤマ好奇心が、あちこちから湧いてきてやがる。
みんなお行儀がいいから、直接見たり、こそこそ話すやつはいねえけど、意識はしてやがる。
おやあ?
その中で、一番強いウラヤマ好奇心を持ってやがったのは……オチコボレ天使の雅部利恵だ。視線を感じて視界の端でとらえると、慌てて首を黒板に戻しやがる。
――アイドルになってしまうなんて……魔法使ったでしょ!?――
――んなことねえよ。知井子は自分の力でアイドルになったんだぞ。それも不可抗力だしな――
――ウソよ! だったらなんで、あんたまでいっしょになってアイドルやってんのよ――
――落第天使には分からねえ事情があんだよ――
――落第は余計でしょうが!――
――ああ、悪りぃ。マユも落第だから、親近感からだよ、親近感――
――小悪魔の親近感なんかいらないわよ!――
――なんだ、ムクレんなよ――
――ムクれてないもん!――
――ムクれてる――
――ムクれてない!――
――ムクれてる!――
本鈴が鳴って授業が始まってもこんな調子だった。
まあ、かってにヘソ曲げてりゃいい。
マユはその程度に思っていたけど、利恵の対抗心は収まらなかったぜ。先生が赤いチョークで、板書にアンダーラインを勢いよくひくと、マッチをすったように火が点いてしまった。
ボ!
「せ、先生の情熱ってスゴイっすね(^_^;)!」
すかさず、マユは賞賛してごまかした。化学の内田先生だったので、なんとかごまかせた。
「ど、どうだ、これが化学の力だ!」
マッチチョークもすぐに消えたんで、内田先生を得意にさせて事なきを得た。
――あんまし熱くなんなよ――
注意したけど、利恵はなんにも応えねえ。バリアーを張って、なにか対抗手段を考えていやがる。
――おい、なに考えてんだよ?――
――フン!――
それっきり利恵はバリアーを開かなくなっちまった。
やれやれ……。
☆彡 主な登場人物
マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗 マユの同級生
沙耶 マユの同級生
知井子 マユの同級生
指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵 落ちこぼれ天使
デーモン マユの先生
ルシファー 魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ エルフの王女
ミファ レミの次の依頼人 他に、ジョルジュ(友だち) ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ 異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女 ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)
その他のファンタジーキャラ 狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー
光 ミツル ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美 オーディションの受験生
大石 クララ オーディションの受験生
服部 八重 オーディションの受験生
矢藤 絵萌 オーディションの受験生
片岡先生 マユたちの英語の先生




