35『七人の小人と赤ずきん』
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
35『七人の小人と赤ずきん』
鉱山から戻ってきた小人たちは、自分たちの家が見えてきたところでビックリしやがった!
無理もねえ、白雪の歌声が聞こえてきたんだからな!
「てっきり白雪姫が生き返ったと思ったじゃないか( ' ^ ' #) !」
おこりんぼのグランピーが鼻息荒く言った。
「でも、そのバラ色のくちびると声は白雪姫だ。ま、いいじゃないか(^_^;)」
照れ屋のパッシュフルが、頬を染めてため息をついた。
「でも、これって、どういうこと(´^`) ?」
おとぼけのドービーは、まだ分かっていねえ。
「だから、今言ったろ、これはだなぁ……ハーックション( >ω<) !」
知ったかぶりのスニージーがテキトウに解説を加えようとして大きなクシャミ。
「つまりだな、ここにいる魔女のマユが、魔法でなんとかしてくれるってことだ……ってぐらいは、なんとなく分かった(''◇'')」
リーダー格のドックが、とりあえずまとめやがった。
「だーからぁ、明日の朝、アニマ王子がやってきて、白雪のくちびるをした赤ずきんにキスして……それで、うまくいくってことなんだ! 文句ねえだろが(>▢<)!」
マユはキレかかったぜ。
「ま、どうにかなるんだから、どうにかなるんだろ。ハッピーじゃないか(^▽^)!」
ポジティブなハッピーが素直に喜んで、やっとドワーフたちは納得しやがった。めんどくさいやつらだ!
「山から帰ったばかりで、お腹空いてるでしょう。今夜は、わたしが晩ご飯を作ってあげるから」
レミが、とりなしやがる。
「ああ、お腹空きすぎて、眠いのも忘れちまったよ」
ねぼすけのスリーピーがうなづくと、七人のドアーフたちのお腹が、いっせいにグー……と鳴りだし、みんなで大笑いになったぜ。
「でも、今日は、山で働きすぎて、燃料の薪を集め損なったな!」
おこりんぼのグランピーが腕を組んで、右足で地面をドンドンした。
すると、さっきから、三人娘たちが盛大にまき散らした『!』や『?』や……が、ピョンピョン跳ねだした。
「これは、いい薪になるよ。純粋な『!』や『?』だ、グランピーのは不完全燃焼になるんで使えたもんじゃないけど、これなら、今夜のぶんの薪には十分だ」
「どれも、よく乾いていて、いい種火になりそうだ」
ドックとハッピーが『!』や『?』を集めはじめた。
「アチチ、この『!!』は熱すぎるぞ!」
グランピーが拾ったのは、白雪姫が最初に言ったやつ。「ああ、もう、やってらんないわよ!!」の『!!』でだったぜ。
にぎやかな晩ご飯が終わって、マユは赤ずきんを庭に連れだしたぞ。
庭は、月のやつも満腹になったのか、まん丸の満月で、ひっそり話すのにはぴったりだったぞ。
「なにか、お話でもあるの?」
赤ずきんが白雪姫の声で訊いた。
「最初に現れたとき、なんだか顔色が冴えないって感じて……でも、こちらのお願いは喜んで引き受けてくれて……なんか、あるんじゃねえかって思ってよ」
マユは、切り株のベンチに、赤ずきんをさそった。
月の光に縁取られた赤ずきんの姿は、マユがびっくりするほど美しかったぞ。
「わたし、思ったより大人だったでしょ……」
「おお。十歳くらいのガキンチョかと思ってたぞ」
「わたし……時間の流れが、他の物語の登場人物と違うの」
「え……?」
「お婆ちゃんを、オオカミさんから助けて、それで、わたしの物語は終わるはずなんだけど、終わりにならなくって……気がついたら、こんな……多分十八歳ぐらいの女の子になってしまって。なんだか、芝居が終わったのに、まだ幕が下りない役者さんみたいに戸惑ってるの」
赤ずきんは、足もとの松ぼっくりを、そっとけ飛ばした……松ぼっくりは、コロコロ転がって、白雪姫の棺の下まで転がっていった。
自然に二人の目は、白雪に向けられたぞ。
「同じファンタジーの、それも同じグリム童話の仲間。その役にたてたら、それで、わたしはいいの……」
バランスが悪かったのだろ、いったん停まった松ぼっくりは、コトリと音を立ててこけた。
「アイデンティティーのない主人公って、なんだかね……」
「アイデンティティーとか、レーゾンデートルの問題だけじゃねえように思えるぞ」
マユも足もとの松ぼっくりをけ飛ばした。松ぼっくりは、見事に赤ずきんの松ぼっくりに当たった。
「ビンゴ……?」
「明日……白雪さんのことがうまくいったら……ああ、やっぱりダメだ」
赤ずきんは、うつむいてため息をついた。
「ねえ、あの松ぼっくりたち、なんだかお話してるみたいだよ」
「ほんとだ……」
そう言いながらも話がまとまらねえ今日一番の功労者。
「明日、その気になったら話してよ。赤どぅきんちゃん」
優しい気持ちになってきたんで、きちんと「ちゃん」付けで言ってやったぞ。
「いま、赤ドキンちゃんって言った?」
「え、そう聞こえたかぁ?」
「わたし、アンパンマンのキャラじゃないんだからね」
「アハハ、そうだよな。赤どぅきんちゃん」
「ほら、また!」
「そうかぁ?」
「もう……」
赤ずきんがふくれた。
マユは、手を伸ばして、赤ずきんのホッペをつついた。
「プ」と音がした。
「アハハハ」
「やっと笑った。赤どぅきんの負け。この件が終わったら話してくれよな」
「はいはい。さすが小悪魔ですね」
「おちこぼれだけどな」
「「アハハ……」」
二人を照らすお月さまの光が柔らかくなったような気がしたぜ……。
人の気配に気づいて振り向くと、七人のドワーフたちが、白雪姫の棺の周りにあつまり、口々に「お休み」とささやいていきやがる。
ドワーフたちは、白雪姫への「お休み」が終わると、小屋へと帰っていく。
小窓から、レミがドワーフたちの優しい「お休み」のあいさつを見守っていたぞ。
――明日は、たのむよ――
リーダー格のドックが、メガネをずらして、マユの方を向いた。
――まかしとけ――
想いをこめてうなずくと、ドックは、ニッコリ笑って、小屋の中にもどっていった。
あいかわらず、お月さまは星どもを従えて、柔らかく微笑んでいやがった……。
☆彡 主な登場人物
マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗 マユの同級生
沙耶 マユの同級生
知井子 マユの同級生
指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵 落ちこぼれ天使
デーモン マユの先生
ルシファー 魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ エルフの王女
アニマ 異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー
光 ミツル ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美 オーディションの受験生
大石 クララ オーディションの受験生
服部 八重 オーディションの受験生
矢藤 絵萌 オーディションの受験生
片岡先生 マユたちの英語の先生




