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25『デーモン先生との対話』

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!


25『デーモン先生との対話』 






『マユ、何しに戻ってきた……ガルルル』


『なにって、先生……』 



 そこはサンズの川を挟んだ魔界とこの世の境目だったぜ。


 川の向こうに、ケルベロスがいやがる。


 魔法学校に(落第する前)通っていたころ、よく鼻くそ味のチョコなんかやっていたんで、このケルベロスはマユによくなついてやがる。


 今も目を細め、お座りをしながら、ヨダレを垂らしてやがる。でもよ、その口から聞こえてくるのは、あの、おぞましいデーモン先生の声だ。


 ケルベロスは、地獄の番犬なんだけどよ、子犬や、孫犬がたくさんいて、魔界のいろんなところで番犬をやってるんだ。


 ケルベロスってのは、犬の一族の名前でよ。 一匹一匹は別なんだけどな、悪魔や小悪魔はみんなケルベロスって呼んでる。たとえばよ、スマホのことはスマホとしか呼ばねえだろ。スマホを『ジミー』とか『香里菜』とか『ハインリヒ』とか名前つけて呼ぶ奴はいねえだろ。


 で、かなたの魔法学校から駆けてきてシッポ振ってんのが、学校の移動インタホンになってるケルベロスで、ポチ……と、マユは勝手に名付けてんだけどな。

 

 この「ポチ」って名前にしたことも、マユが人間界にやられた原因の一つだとマユは思ってるぜ。


 で……人なつこい顔をしながら、ニクソいデーモン先生の声でしゃべるのがアンバランスでおかしいんだけどよ。


 笑いそうになったけど、この数か月の人間界での修行で「何食わぬ顔」というのを覚えたからな、見た目には分からねえ。でもよ、そこはデーモン先生で、ケルベロスの二番目の顔が言う。


『だいぶ、とぼけるのが上手くなったな』


「と、とぼけてんじゃねえよ」


 ケルベロスには三つの首があり、当然六つの目がある。四つの目で、マユの姿は3Dで見られてる。そして残り二つで、マユは心の中まで見られてる。悪魔の魔眼てやつだ。


 でもよ、その魔眼をしてもマユの心は読み切れねえぜ。


 なんでか……マユ自身にも、自分の気持ちがよく分かってねえからだ。


『マユ、おまえ……このケルベロスをだいぶ手なずけたな……』


 ポチは、三つの首で、互いの顔を見回した。そして、前足で、三つの頭を器用に叩いた。「ギャフン」という声が三つして、ポチの顔はケルベロスらしく、いくぶん引き締まったぜ。まあ、年寄が調子の悪いテレビとかを叩くようなもんだ。


『どうやら、迷いがあるようだな……』


「あ、まあな……」


 デーモン先生の言葉で、マユは自分の心を探ってみた。


 補習の辛さ、知井子や沙耶たち友だちとの毎日。雅部利恵への敵愾心。任務か憎しみか、友情か打算か分からなくなっちまった自分の心。


 まるで、七つに分解してこんがらがった虹みてえな心……マユは、自分の心を美しく形容してみたぜ。


『ばか、飾ってみても、おまえの心に変わりはない』


「アハハハ、バレちまったか(^_^;)」


『要は、どうしていいか分からなくなって……サボりたい気持ちでここに戻ってきたな……』


「そ、そんなことは……」


『違うというか……』


「分かんねえよ……」


『ならば、別の目でみてやろう……』


 シャキン


 三つ目の首の目が鋭くなってきやがった。他の二つの首が、なにか羨ましそうに、三番目の首を見ているぞ。


「な、なんだよ、その目は!?」


『これは、おまえを裸にして見る目だ……』


「え……?」


『バストが1センチ、ヒップが2センチ大きくなった。ウエストは……』


「ちょ、ちょっと先生!!」


 マユは慌てて、両手で体の上と下を隠したぞ。


『心は体に現れる……良くも悪くも、おまえは人間界に馴染んできたな。今回の知井子や拓美の件で、おまえのやったことは間違ってはおらん。だからカチューシャを締め上げることもしなかったであろう。ただ、お前は自信を無くし疲れておる。だから、今やっていることが、正しいのかサボりたい気持ちなのからなのか分からなくなってきた。その迷いが肌に現れておる……WWWW』


「なんで、今のとこだけWWWWなんだよ?」


『……お前の背中を押してやろう。ただちに人間界に戻るがいい』



 六つの目がいっぺんに怪しい光を放って……気が付いたら、大石クララの横顔が目の前にあった。


 え、なんで横顔?


 クララの目は、目に見えてる方のマユに向けられている。


「マユ……あんたの目は、浅野拓美の目だわ!」


 バレてしまった。デーモン先生のせいだ!


「わ、わたし……」


「そうだよ、今の今まで忘れてたけど、拓美って子がいたんだ!」


 クララは目を丸くしてマユの姿をした拓美はうろたえた。仕方なく、本物のマユは半透明な姿を現してやったぜ。


「マ、マユ……いったい……!?」


 クララは、ハッキリなのと半透明の二人のマユを交互に見て混乱したぜ!


 でもな、クララはたいしたもんで、並の女の子みてえにパニクることも気絶することもなかったぜ。ただ、目の前の不思議を一生懸命理解しようとしやがった。



「なるほどお、そういうことだったの……」



 クララは、二人のマユの話しを理解した。

 

 あの屋上で、マユは拓美の強い想いを理解したんだ。そんで自分の体を貸してやることにしたんだ。


 だからよ、屋上から降りてきて、今に至るまでのマユは拓美なんだ。


 そんでマユは、魂だけの存在になって、魔界に戻ろうとして、さっきのケルベロスとのやりとりになったわけだ。で、デーモン先生の一押しで戻って来た、目には見えねえソウルになってよ。でもよ、元来鋭いクララには真実を見抜かれちまったわけだ。


「あ、マユ、消えかかってるけど!」


――魂だけで姿を見せるって、ずっと片足でつま先立ちしてるみたいにシンドイんだ!――


「ごめんね、マユさん(-_-;)」


 マユの姿の拓美がすまなさそうに言いやがった。


――いや、マユも、少しさぼれるかなあって、ヨコシマなところが無くもねえから……あ……消え……かけ……あと……心で……伝え……――


 そこで、半透明なマユは消えちまった。あとは心で二人に伝えたぜ。


――当面、週末だけ拓美に体を貸す。その間拓美はマユの記憶も預かることになる(ただし魔法は使えねえ)――


 だから、拓美はあくまでマユであり……マユはマユで……言葉がややこしい。悪魔ではなく、あくまでマユであり、そのことを人に言っちゃあならねえ。クララは特異体質で記憶を完全には消せねえ。無理にやると、クララの命に関わるんで、クララも秘密を守ること。


 で、平日は、本物のマユに戻るけど、休日は魔界で特別補講。


 そして、いつかは拓美は、マユの体に入れなくなり、昇天しなければならねえ。


 それが、どんな状況や条件の下でそうなっちまうかは……拓美にも、マユにもわからなかったぜ。デーモン先生もなんにも言わねえしな……。




☆彡 主な登場人物


マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院

里依紗      マユの同級生

沙耶       マユの同級生

知井子      マユの同級生

指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー

雅部 利恵    落ちこぼれ天使 

デーモン     マユの先生

ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある

黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー

光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー

浅野 拓美    オーディションの受験生

大石 クララ   オーディションの受験生

服部 八重    オーディションの受験生

矢藤 絵萌    オーディションの受験生

片岡先生     マユたちの英語の先生  

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