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23『知井子の悩み・13』

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!


23『知井子の悩み・13』 





 人があわてふためくってのは、見ていて気分のいいもんだ。


 16人の合格者を、いきなり48人全員の合格にしちまったんからHIKARIプロのスタッフは慌てやがったぜ。


 とりあえず、合格者全員を控え室で待機ということにしやがった。


「でも、さすが光ミツル。決め方もすごいけど、アイデアもすごいわ!」


 矢頭絵萌ってのが興奮気味に言いやがる。高校二年ぐれえに見えるけど、まだ中二だ。発育がいいんだろーけどよ、自信てのは人を飛躍させるって見本みてえなガキだ。


「ハァァァァ……これから大変な競争が始まるわけよね!」


 服部八重って二十代の最年長が、闘志の混ざったため息をつきやがる。こいつ、最年長ってだけで歳が読めねえ。

 なんかの呪いかと思ったら、自分の意思で実年齢を意識の底に沈めてやがる。最年長ってことも溜息を吐いた心の隙間から覗けただけだぜ。


「そりゃあ、48人だもん、厳しいよね」


 知井子が、かわいく鼻を膨らませながら言う。


 こんなに自信を持って戦闘的になった知井子を見るのは初めてだ。学校でピョンピョン跳ねながら黒板を消して、ルリ子たちに冷やかされてる知井子とは別人のみてえだ。


「知井子、鼻がふくらんでるぞぉ」


 冷やかしてみる。


「や、やだあ、それじゃルリ子といっしょじゃんよ(;'∀')!」


 知井子は、慌てて鼻を隠しやがる。


「ルリ子は人をせせら笑ったときに鼻がふくらむけど、知井子はガンバローって思ったときにそうなるんだ。ぜんぜんちげーよ」


「そ、そう……」


 自分のことを言われる時は、いつも冷やかしだったので、多少褒めても素直にはうけとめねえで口を尖らせやがる。


「ああ、その表情好きだなあ! それっていいわよ。チャーミングファイターって感じ!」


 大石クララが自然にフォロー。こいつなかなかの人物みてえだ……と思ったら、服部八重やら矢藤絵萌にも自然に声をかけて、早くもサブリーダーの片鱗を見せ始めていやがる。



 一方、リーダーの拓美は暗れえ。



 覚悟は決めていやがる。マユに頼んで一回だけ皆の前で唄わせて欲しい。マユの魔法で叶えてやった。


 もう思い残すことはねえ。


 でも、選抜メンバーのリーダーに選ばれちまった。


「マユさん、ちょっと」


 拓美は、マユの腕を掴むと、廊下に出て非常口を開けた。


 拓美と屋上に出たぜ。


「もう耐えられない。今すぐに消して! あの世に送って!」


「拓美……」


 マユには、拓美の気持ちが痛いほどに分かった。だから、とても可愛そうで、なかなか拓美を消すことができねえ。拓美の目から涙が止めどなく流れていくのを見てるばかりだ……。


 ザワワ


 屋上から見下ろせる公園の色づいた木々が、近づいた木枯らしを予感させるように震えた。


 一瞬、風が強く吹き、朽ち葉たちが風に流され、屋上の二人を促すように舞っていった。その朽ち葉の一枚が拓美の目元をかすめやがって、溢れた涙が血に染まって拓美の頬に一筋の赤い線が伝う。


 痛々しくて、マユは黙ってハンカチを差し出すしかなかった。


「いいの、このままで……」


「そうか……」


 マユは唇を噛みしめ、ゆっくりと、両の手を円を描くように回し、右手で天を、左手で地を指した。


「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……」


 マユは、渾身の力で呪文をとなえた……。



 階段を降りて、控え室に戻ってきたのはマユ一人だ。



「どこへ、いってたのよ。今から、また全員集合だよ♪」


 知井子は、楽しげにたしなめやがる。


 知井子の悩みは、どうやら克服されたみてえだ。


 しかし、新しい問題が待ち受けていた。


 たったいま、皆の記憶から完全に消された浅野拓美の問題がよ……。



☆彡 主な登場人物


マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院

里依紗      マユの同級生

沙耶       マユの同級生

知井子      マユの同級生

指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー

雅部 利恵    落ちこぼれ天使 

デーモン     マユの先生

ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある

黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー

光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー

浅野 拓美    オーディションの受験生

大石 クララ   オーディションの受験生

服部 八重    オーディションの受験生

矢藤 絵萌    オーディションの受験生

片岡先生     マユたちの英語の先生  

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