表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/118

15『知井子の悩み・5』

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!


15『知井子の悩み・5』 





「いつまで、親を待たせるつもりなんだ(`Д´)!」

 


 黒羽Dは三十分遅れて応接室に入ってきやがった。


「怒鳴っちゃいけませんよぉ。また心臓がぁ……キャ」


 知井子が心配そうにジイサンの腕をひくけど、ジイサンは意外に力があって、瞬間、知井子をぶら下げる感じになって笑いそうになったぜ。


「なんだよ、この子たちは?」


 事情を呑み込んでねえ黒羽Dは機嫌が悪い。仕事を中断してきたせいか、ジイサンにムカついてんのか、元々そういう親子関係なのか。


 ククク、こういう棘を孕んだ関係ってのは、ちょっと好きだぜ( ´艸`)。


「おまえからも礼を言え。俺が地下鉄の駅で発作をおこして、死にかけているところを助けてくれたんだぞ」


「え、大丈夫かよ、オヤジ( ゜Д゜)!?」


 瞬間でマジな顔になりやがる。ちょっと波乱を予感したのに、つまらん。


「礼を言うのが先だ」


「あ、そうだな、どうもありがとう。ボクも地下鉄の入り口でオヤジのこと待っていたんだけどね、急用で呼び戻されて。ほんとうに迷惑をかけたね、ありがとう」


「呼び戻されたなんて、白々しいことを。下手な言い訳をするんじゃない」


「ほんとうだよ、オヤジ……」


 黒羽は、言い淀んでしまった。ウソをついてやがるからじゃねえ、親父の発作に間に合わなかったことが後ろめたいんだ。マユは、ジイサンが思いこんでいるほど悪いジジイじゃねえと感じたぞ。


「あ、ほんとうです。地下鉄の入り口でずっとお爺さん待ってらっしゃいました!」


「ほんとうかね……」


「は、はい(#'∀'#)」


 自分のことではなんにも言えねえ知井子が真剣に弁明する。並の人間が言うとムカつくんだけどよ、知井子のは微笑ましくて、ついほっぺたが緩んじまうぜ。


「……あ、思い出した。店の前で、シャメ撮ってたよね。そのゴスロリに見覚えがある!」


「この子たちはな、駅の階段で苦しんでいる俺を……そっちの子は、階段の下まで行って、腹這いになって転んだ薬瓶を探してくれて、こっちの子は、薬を口移しで飲ませてくれたんだぞ」


「口移しで!?」


「あ、とっさのことだったのでぇ(#^○^#)」


 マユも思わず猫を被っちまったぜ。


「そ、そうか済まなかった。あ、その服は、買ったばかりだろう」


「あ……いえ」


「ロ-ザンヌって店が、今朝、店先に出していたのを知っているよ。すまん、汚しちまったね」


「なんとかしてやれ( ㆆ△ㆆ) 」


 おじいさんが、息子を睨んだ。


「あ、そうだな」


 黒羽Dは、すぐに部屋の電話をとった。


「あ、マダム。HIKARIの黒羽です。今朝店先に出してたブリティッシュのゴスロリ、まだある……そう、よかった。ええと……7号サイズ。だよね?」


「え、ええ……いえ、でも、うちに帰ったら洗濯しますし……」


「いや、そうはいかないよ」


「そうじゃそうじゃ」


「親父は言うな!」


「口ごたえするな!」


「ムグ……あ、そうそう7号、よろしく」


 知井子がうつむきながら遠慮するのを制してテキパキ対処する黒羽D。そんな黒羽父子のやりとりも爽やかで、マユは微笑んでしまったぞ。



「ははは……というぐあいに、オヤジには叱られっぱなしだったよ」



 あれから、ローザンヌのマダムがきて、知井子は新品に着替えた。そして、近所の肩の張らない洋食屋さんで、お昼をごちそうになった。


「五年も、お家に帰ってらっしゃらないんですか?」


「ボクも、オヤジに言われて、初めて気がついたんだけどね。つい仕事が忙しくて……」


「楽しくて……なんじゃないですか?」


「し、失礼だよマユ」


「はは、マユちゃんの言うとおりだよ。夢を創る仕事だからね、楽しい夢からは、なかなか覚めない」


「で、お父さんが持ってこられたお見合いは……するんですか」


「それは、この業界の秘密。うちの所属の子たちも、恋愛禁止にしてるしね」


「そう、なんですか」


「で、お父さんは?」


「病院、念のためにね。ローザンヌのマダムが口説いてくれた。どうだい、よかったらカラオケでも」


「よろこんで!」



 知井子がのってしまったので、カラオケになってしまった(^_^;)。



 場所も最高級。なんとHIKARIプロのスタジオだぞ!


 まるで、普段のおとなしさを取り返すかのように知井子ははじけやがった。


 しまいには、研究生の子たちまで、いっしょになって、歌って踊り始めた。マユは、あぶない展開だと思ったが、こんなに楽しげな知井子は初めてなので、魔法で邪魔することもはばかられ、ヤケクソで知井子といっしょにはじけてやったぞ。


 ミキサーのブースで、黒羽Dがスタッフとなにやら話していることも気づいていたが、なんだか、このままの自然の流れでいいような気になった。


 これは、悪魔も神さまも、むろんコニクッタラシイおちこぼれ天使の雅部利恵も関わってはいない。これが運命。自然な流れなんだと思ってな。



 案の定、二日後には、知井子のところにHIKARIプロからオーディションのお誘いがきた。これはマユには想定内だ。



 ただし、家に帰ってみると、自分にも学校で見せられたのと同じお誘いが来ていたのは、想定外だった(;'∀')。



 

☆彡 主な登場人物


マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院

里依紗      マユの同級生

沙耶       マユの同級生

知井子      マユの同級生

指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー

雅部 利恵    落ちこぼれ天使 

黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー

片岡先生     マユたちの英語の先生  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ