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13『知井子の悩み・3』

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!


13『知井子の悩み・3』 






 マユはホッとした。



 この近くで眉をひそめてるオーラを感じたんだ。


 地下鉄の入り口あたりで人待ちをしているオッサンだ。小悪魔のマユには、そのオッサンがHIKARIプロの偉い奴であることも分かっていたぞ。


 マユの魔法が、もうちょっと遅ければ……「きみ、ちょっとしつこいよ」と、オッサンが声をかけてイケメンくずれをいなすことになる。そして、知井子の可愛さと才能を一発で見抜いてプロダクションの名刺を渡しやがってよ、「よかったら、一度電話ください」ということになりやがる。


 知井子はオッサンの人柄の良さに心を許して電話しちまって、あっと言う間にシンデレラストーリー、アイドルの階段を上ることになりやがる。


 このベタな展開は、おそらく利恵のしわざだ!

 

 オッサンは、ひとまずイケメンくずれの口がチャックをかけたように静かになったんで、安心してマユたちから興味を失った。


――よしよし――


 マユは、落第天使の利恵が開いた運命の道を閉ざせたと思えたぞ。


 気楽になったマユは、知井子の注文通り、シャメをバシバシ撮ってやった。


「これくらいで、いいんじゃね?」


「うん、でも、この街角ステキだから、あと、もうちょっと」


「へいへい」


――おっと、またオッサンが見てやがる。ちょっちヤバイ――

 

 そのときオッサンは、コールがあったらしくスマホに出た。


「……分かった、すぐに戻る」


 どうやら、事務所からの電話のようで、オッサンは地下鉄の入り口をちょっと覗いて、数十メートル先、プロダクションの入っているビルに、足早に戻っていった。


――やりー! これで運命の扉は完全に閉じられたぜ!――


 安直なシンデレラストーリーなんて、ロクな展開にならねえからな。


「よし、じゃ次は原宿にいこうか!」


「おお!」


 スキップしながら地下鉄へ。入り口から入って、階段の踊り場で、ちょっと人だかりがしてやがる。


 たいていのやつは、ちょっと見るだけで通り過ぎていく。


「なんだろ?」


 踊り場を曲がったとこなんで、すぐ側に降りてみるまで分からなかったぞ。


「「……あ!」」


 知井子とマユは、同時に声を上げちまった。


 踊り場の壁を背にして、ジジイが荒い息してうずくまってやがった!


 階段を上り下りするやつらは、気には留めやがるけど、群集心理「誰かが助けるだろう」と思って通り過ぎていきやがる。


「おじいさん、どうしたんですか!?」


 知井子が駆け寄った。


 重度の心臓発作だ。マユには、すぐに分かったぜ。


「……鞄に薬が……」


「わ、分かった、これですね!?」


 知井子は素早くカバンを開けて薬の小瓶をとりだした。


「そ、それ、二錠……」


 知井子は、素早く小瓶を開けようとしたけど、パニくって蓋を逆に回してやがる。


「うーん、開かないよ……!」


「こっち寄こせ!」


 マユが手を伸ばして、小瓶を受け取ろうとしたとき、ちょうど階段を駆け下りてきた女の足が当たっちまった。


「あ、ごめ~ん」


 女は、言葉だけ残して駆け下りていきやがった。


「「薬ぃ!」」


 マユと知井子は同時に叫んだ。


 小瓶はプラスチックなので、割れることはなかったけど、コロンコロンと階段を落ちていき、たちまち人混みの中に見えなくなっちまった。


「あ、ああ……」


 ジジイが、絶望の声をあげやがる!


 マユは、通り過ぎるやつらが、できそこないの天使のように思えたぞ。


「探してくる!」


 知井子が階段を駆け下りた。


 ジジイの唇から血の気が失せていきやがる。


 グヌヌ……(-_-;)


 マユは、静かに呪文を唱えたぜ。


「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……」


 マユは小悪魔には許されていない蘇生魔法レイズの呪文を唱えた!


 むろん初めて。おまけに修行中。戒めのカチューシャがキリキリと頭を締め付けてきやがった……!!



☆彡 主な登場人物


マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院

里依紗      マユの同級生

沙耶       マユの同級生

知井子      マユの同級生

指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー

雅部 利恵    落ちこぼれ天使 

片岡先生     マユたちの英語の先生  

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