表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/118

10『ダークサイドストーリー・6』

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!


10『ダークサイドストーリー・6』 





 え……各駅停車……?



 片岡先生は、先週からダイヤが変わっていることを忘れてやがる。先週までは、この時間は特急の通過だったんだぜ。


 各駅停車でも目的を果たせねえわけじゃねえけど、ホームに着く寸前なんで速度が遅い。


 片岡先生は、特急列車で景気よく跳ね飛ばしてもらい、きれいに即死したかったんだ。



 それほど、メリッサ先生を見た衝撃は大きかったんだぜ。



 片岡先生は気づかなかったけど、メリッサ先生とシンディーは双子の姉妹なんだ。それも、幼い頃、母親が亡くなって、別々の里親に育てられ、双子の姉妹がいることを二人とも知らなかったんだ。


 だからよ、メリッサ先生が片岡先生を初めて見たときは――変なやつ――と思っただけだったぜ。


 片岡先生も、中庭の池の鯉を見ているうちに、よく似た他人なんだろう……と理解したぜ。


 ネトゲでキャラクリして、オキニのアバター作ったやつがバトルで負けて、アバターを売るとか取られるやつがいるだろ。ログインして、そいつに声かけたらまるっきりの別人でよ。よく見たらIDが違って、ガックリしたとか、そんな感じ。他のプレイヤーに聞いたら「あ、元の持ち主はリアルの事故で亡くなったってよ」と言われた感じ。


 しかし、理解と納得は違う。


 それまで封印していたシンディーへの思い出が、血を流しながら蘇ってきやがった。


 シンディーに会いたい……切なく、理不尽な願望で心が一杯になって、それは心の表面張力の限界を超えて、ドバドバ溢れてきちまった。


 そんで、理不尽な願望は、飛躍した行動を先生に思いつかせやがった。


――死ねば、心乱されることもなくシンディーに会える!――


 で、片岡先生は、ホームのベンチで特急列車を待っていやがるんだ。


 マユはよ、改札に入ったとこで先生の思念に気づいたんだ。


――なんとかしなくっちゃ(''◇'')――


 ビビッちまった! デーモン先生に「おまえ、落第な」って宣告された時みたいにワタワタしたぜ!


 悪魔の立場から言えば、人間の不幸は願ってもないことのように思えるかもしれねえけど、実際は違う。


 悪魔の役割は人を不幸にすることじゃねえ。人が正しい選択をするために、試練を与えるのが役目なんだ。


 たとえば、敵に追われて川辺にたどり着いた人間がいるとする。天使とか神はよ、その時の人間の心の清らかさや信仰心次第で、橋を架けたり川を割って道を造って、ダイレクトに人間を助けてやる。調子に乗った時は海を真っ二つにするなんて反則技を使ったこともあった。


 悪魔は違うぞ!


 ひとまず隠れる場所を与え、あとはホッタラカシにする。人間が苦しみ悩んだ末に自分で結論を出し、行動をおこすのを待つんだ。


 ときにヒントとして、川の側に小さな木を植えたり、ゴロゴロの岩を用意しておく。人がそれに気づき、木を大きく育て橋を造ったり、岩を川に投げ入れ足場を作って、自分の力で解決するのを待つんだ。時に、それは人間の時間で何世代もかかることもあるんだぜ。


 この試練と救済をめぐって、大昔、サタンという天使は神と争った。そして天界を追われ、悪魔の烙印を押されちまった。オチコボレ小悪魔のマユはよ、そのへんの機微が分かってないらしいんで、人間界に落とされて修行中の身なんだ。


 オチコボレ天使の雅部利恵(みやびりえ 天使名・ガブリエ)も、救済のなんたるかや、タイミングが分かっていねえんで、この人間界に落とされ、偶然……実は、神さまと悪魔、それぞれの名誉をかけて同じ学校の女子高生として送られてきたってわけよ。


 で、無気力教師の片岡先生の閉ざされた心の奥を、互いに覗き込んじまって、利恵の早とちりで、今回の不幸が起こっちまった。


 なんとかしなきゃ……このままでは、片岡先生は次の電車に飛び込んじまう!


「先生、横に座っていい?」


 マユは、なんの思惑もなく、声をかけちまったぜ。


「あ、ああ……」


 片岡先生は、力無く答えた。取りあえず先生の飛び込みは阻止……けどよ、後が続かねえ(-_-;)。


――先生の記憶を無くしちゃえばいいのよ――


 閉まった各停のドアから、利恵の思念が、お気楽に飛び込んできやがった。


――んなの解決にならねえ(◎▢◎)!――


 思い切りガンと思念をとばしてやった!


 ……と言って、簡単に道は見つからねえ。

 

 堪えねえ落ちこぼれ天使の薄ら笑いとともに各停は出発し、マユのこめかみから、一筋の汗が流れ落ちてきやがったぜ……。



☆彡 主な登場人物


マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院

里依紗      マユの同級生

沙耶       マユの同級生

知井子      マユの同級生

指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー

雅部 利恵    落ちこぼれ天使 

片岡先生     マユたちの英語の先生  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ