空き巣
もうすぐ日が変わる−…
今日もよく働いたな。帰って寝たいけど、明日〆切りのレポートやんなきゃなぁー、あーめんどくせ。
俺はそんなことを考えながら、バイト先から閑静な住宅地を通り自宅へと向かう。
めしどーすっかなぁ… なんて考えながらポケットからカギを取り出し鍵穴に挿す。
ガチャッ−…
「たっだいまー…」
誰も待ってはいないこの部屋でさえも、帰宅する度にあいさつするのは俺の癖だ。
パチッ
「…な…んだよ、これ…」
部屋の電気を付けると、尋常じゃないくらい部屋が散らかっているのが見える。
「えっ…ちょ…?!まさかの空き巣…?!」
って言っても、俺の部屋には盗られるようなものはないと思うが―…
「…まずは警察に連絡するか…」
…−15分位してから、警察の人が来た。
「…−で、帰ってきたら、部屋が荒らされていたと言うわけだね?」
「はい。」
「それで、盗られたものや壊されたものはあるかな?」
「壊されたものはないです。盗られたものも金銭的なものは特に。ただ…」
「ただ?」
「たいしたものじゃないんですが、部屋干ししてたはずの…その…パンツが…」
手帳にメモしていた手を止め、刑事さんが顔を上げた。
「パンツ?君の勘違いとかじゃないのかい?ほら、この辺とか随分と衣服とかも荒らされているし」
半笑いをしながら、疑わしげに俺を覗きこんでくる刑事さんの目が痛い…
「俺もそう思ったんすけど、昨日雨だったからいくつか下着や靴下を部屋干ししてたんすよ。んで、盗られたものとか調べてみたら、靴下はあるけどそこに干してあったパンツがないなぁって…」
はははっと頭を掻きながら苦笑いをする俺を見て、刑事さんも俺から目を逸らして続けた。
「まぁ、一応は盗難物として書いておくけど、女性の下着ってわけでもないからねー…」
「そうっすよね…ははっ…」
…―警察の人達が帰ったのは朝方の4時近くだった。 今日は朝一から授業もあるし、寝たら終わるな。
しょーがないから部屋の片付けしてからレポートでもするか−…
…−もちろん、俺は午前中の授業は全て爆睡してしまって、誰かに頭を叩かれてようやく目が覚めたのだった。
バシッ
「っっっったぁ…」
「よっ。学食行こうぜ」
「…お前、もう少し起こし方考えろよ…」
俺は起こしてくれた友人のユウタと一緒に学食へ行き、今朝方の出来事を話しながら昼食を食べた。
「…−そんで適当に片付けて、俺はレポートを部屋出るギリギリまでやってたってわけよ。ま、なんとか間に合って出せたけど、おかげで超寝不足…」
そう言って俺はユウタの真ん前で大きな欠伸をした。
「ははは、お疲れさん。で?盗られたもんとかは?」
「それがさぁ、たいしたもんじゃないんだけど。ってか、マジウケるんだよね。」
「はぁ?どーゆーこと?」
「下着ドロっているじゃん?俺もパンツ盗られた。」
と、どや顔をしながらユウタの反応を伺う。
すると、ユウタも俺に笑いかけながら言った。
「まじかよー。女の子の下着なら分かるけど、男のパンツって。しかも、あの色褪せた縦縞のだろ?マジウケるわ」
【解説】
空き巣の正体は"俺"の友人"ユウタ"です。盗られたパンツの柄なんて、被害者と加害者しか知ることができませんよね(笑)
友人にパンツ盗られたことだけでも十分怖いのですが、もう一つ意味怖要素があります。
それは、どうやって部屋に侵入したか?
パンツが盗られただけで、俺の部屋は破損などは一切ありませんでした。窓も鍵穴も
つまり、普通に玄関から鍵を使って侵入したことになりますよね。…―合鍵を使って。
いつどうやって合鍵を手にしたのか、何故空き巣に入ったのか、目的はパンツを盗ることだけだったのか―…
その辺は皆さんのご想像にお任せします。
でも多分、この友情は今まで通りにとはいかないでしょうね(笑)
今回は友情が壊れてしまう(?)怖さを意味怖として表現してみました
(できてるかどうかは微妙ですが 苦笑)