その瞬間は、青と白で飾られた(1/2)
「貴様らは……自分が何をしているのか分かっているのか?」
ルシウス王子の顔が歪む。途方もない怒りが今にも溢れそうになっているのを感じて、私は思わず体をこわばらせた。ユベロがすかさず前に出る。
「兄上、聞いてください」
ユベロは冷静な口調で語りかけた。
「第一王子である兄上から王位を奪う結果になってしまったこと、僕は申し訳なく思っています。けれどこれは神が認めたことなんです。この国を正しい方向に導くには、そうするのが最も良いのだと……」
「おのれ……!」
ユベロは必死でルシウス王子を説得しようとしていたけど、彼はまったく話を聞いていないみたいだった。鋭い目つきでユベロを睨んでいる。
……いや、ユベロじゃない。彼の視線の先にいたのは解放軍だ。
「よくも……よくもこんなことを……! 何故貴様らは私から何もかも奪おうとするんだ! 母にリリーに……最後は弟までっ……! どうして私の大切な人を……!」
ルシウス王子の周囲に暴風が吹き荒れ始めた。彼の長い金の髪が狂ったように空中で波打つ。
「殺してやる、獣どもめ! 一人残らず、今この場で……!」
ルシウス王子は私に向けて魔法を放とうとした。私もユベロも呆然となっていて、身を守るための行動を取るのが一瞬遅れてしまう。
痛みを覚悟して私は歯を食いしばった。けれど、その瞬間に上空から一筋の光線がほとばしる。稲妻だ。
「……っ!」
晴れた空から降ってきた雷に打たれたのはルシウス王子だった。ルシウス王子は顔を引きつらせながらその場に膝をつく。
「殿下っ!」
駆け寄ろうとした兵士たちをルシウス王子は制止させ、ヨロヨロとした動作で立ち上がった。
相変わらず怖い顔だけど命に別状はないようで、どこかに怪我をしているようにも見えない。
「所詮、神の寵愛もこの程度か」
ルシウス王子は鼻を鳴らしながら、私の方に手のひらを向けた。
「殺しておけばよかったものを。……自らが選んだ愛娘が塵になる前に」
言い終わるやいなや、ルシウス王子が私に魔法を放った。
……少なくとも私にはそう見えた。
「……何だ?」
ルシウス王子は目を見開いた。魔法が不発に終わったことに驚いているんだろう。
「一体何が……? くっ! これで……!」
ルシウス王子は苦悶の表情を浮かべながら腕を振って、なおもこっちに攻撃を仕掛けようとする。
けれど、一向に魔法が飛んでくる気配はない。さっきまで身の危険を感じて警戒していた私は、まさかと思う。
「ルシウス王子……もしかして魔法が……?」
「黙れ、魔女!」
王子は怒声を飛ばしながら、魔法を使おうと必死になっていた。でも、それは成功しそうにない試みだと私は直感する。
「……もうやめなよ」
私は静かに首を振った。
「それが神様の答えだよ。ルシウス王子は神様を怒らせちゃった。だから罰を受けたんだよ。……魔法を取られちゃったんだ」
ルシウス王子の動きが止まる。自分の手のひらを見つめながら、彼は震えていた。
「天罰……」
ルシウス王子は掠れた声で呟いて、後ろを向いた。控えていた兵士たちが動揺したように後ずさりする。
「で、殿下が神の怒りを買ってしまわれたなんて……!」
「つ、つまり、殿下に従った我々も……?」
「ああっ、そんな、そんな……! どうかご慈悲を!」
兵たちは恐れおののき、少しでもルシウス王子から遠ざかろうと必死になった。あまりのことに泣き出す人や、腰を抜かしてその場から動けなくなってしまう人も出てくる。
ルシウス王子は自分の元から去っていく人々を、遠いところの光景を見つめるような目で眺めていた。
「なるほどな」
ルシウス王子が小さな声で言った。
「これも罰というわけだ」




