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神に祝福された平民の彼女は、仇敵の王子の求婚から早く逃げたい  作者: 三羽高明


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39/41

その瞬間は、青と白で飾られた(1/2)

「貴様らは……自分が何をしているのか分かっているのか?」


 ルシウス王子の顔が歪む。途方もない怒りが今にも溢れそうになっているのを感じて、私は思わず体をこわばらせた。ユベロがすかさず前に出る。


「兄上、聞いてください」


 ユベロは冷静な口調で語りかけた。


「第一王子である兄上から王位を奪う結果になってしまったこと、僕は申し訳なく思っています。けれどこれは神が認めたことなんです。この国を正しい方向に導くには、そうするのが最も良いのだと……」


「おのれ……!」


 ユベロは必死でルシウス王子を説得しようとしていたけど、彼はまったく話を聞いていないみたいだった。鋭い目つきでユベロを睨んでいる。


 ……いや、ユベロじゃない。彼の視線の先にいたのは解放軍だ。


「よくも……よくもこんなことを……! 何故貴様らは私から何もかも奪おうとするんだ! 母にリリーに……最後は弟までっ……! どうして私の大切な人を……!」


 ルシウス王子の周囲に暴風が吹き荒れ始めた。彼の長い金の髪が狂ったように空中で波打つ。


「殺してやる、獣どもめ! 一人残らず、今この場で……!」


 ルシウス王子は私に向けて魔法を放とうとした。私もユベロも呆然となっていて、身を守るための行動を取るのが一瞬遅れてしまう。


 痛みを覚悟して私は歯を食いしばった。けれど、その瞬間に上空から一筋の光線がほとばしる。稲妻だ。


「……っ!」


 晴れた空から降ってきた雷に打たれたのはルシウス王子だった。ルシウス王子は顔を引きつらせながらその場に膝をつく。


「殿下っ!」


 駆け寄ろうとした兵士たちをルシウス王子は制止させ、ヨロヨロとした動作で立ち上がった。


 相変わらず怖い顔だけど命に別状はないようで、どこかに怪我をしているようにも見えない。


「所詮、神の寵愛もこの程度か」


 ルシウス王子は鼻を鳴らしながら、私の方に手のひらを向けた。


「殺しておけばよかったものを。……自らが選んだ愛娘が塵になる前に」


 言い終わるやいなや、ルシウス王子が私に魔法を放った。


 ……少なくとも私にはそう見えた。


「……何だ?」


 ルシウス王子は目を見開いた。魔法が不発に終わったことに驚いているんだろう。


「一体何が……? くっ! これで……!」


 ルシウス王子は苦悶の表情を浮かべながら腕を振って、なおもこっちに攻撃を仕掛けようとする。


 けれど、一向に魔法が飛んでくる気配はない。さっきまで身の危険を感じて警戒していた私は、まさかと思う。


「ルシウス王子……もしかして魔法が……?」

「黙れ、魔女!」


 王子は怒声を飛ばしながら、魔法を使おうと必死になっていた。でも、それは成功しそうにない試みだと私は直感する。


「……もうやめなよ」


 私は静かに首を振った。


「それが神様の答えだよ。ルシウス王子は神様を怒らせちゃった。だから罰を受けたんだよ。……魔法を取られちゃったんだ」


 ルシウス王子の動きが止まる。自分の手のひらを見つめながら、彼は震えていた。


「天罰……」


 ルシウス王子は掠れた声で呟いて、後ろを向いた。控えていた兵士たちが動揺したように後ずさりする。


「で、殿下が神の怒りを買ってしまわれたなんて……!」

「つ、つまり、殿下に従った我々も……?」

「ああっ、そんな、そんな……! どうかご慈悲を!」


 兵たちは恐れおののき、少しでもルシウス王子から遠ざかろうと必死になった。あまりのことに泣き出す人や、腰を抜かしてその場から動けなくなってしまう人も出てくる。


 ルシウス王子は自分の元から去っていく人々を、遠いところの光景を見つめるような目で眺めていた。


「なるほどな」


 ルシウス王子が小さな声で言った。


「これも罰というわけだ」

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元になった作品です。(ネタバレ注意)
神は青で平和を望む少女を祝う(短編版)
― 新着の感想 ―
[一言] 王位を奪われたことより、ユベロやリリーを解放軍の仲間にされた! というのがルシウスの怒りポイントか。 そうじゃないんだけどショックすぎてわけがわからなくなってるなぁ。
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