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神に祝福された平民の彼女は、仇敵の王子の求婚から早く逃げたい  作者: 三羽高明


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和平交渉は難航中(1/2)

「解放軍の皆、来てくれてありがとう。第二王子のユベロだ」


 この国で最も神聖とされる場所、聖都。


 かつて王都だったこの場所は今では誰も住んでおらず、ただ巨石でできた柱や建物の一部などの遺跡だけが残る土地となっていた。


 その聖都の中の野外議場として使われていた広場で、僕は解放軍のメンバーと向き合っていた。先頭にいるのはリーダー……ナディアさんのお兄さんだ。妹と同じく栗色の髪と目の小柄な少年だった。


「何だか険悪な表情をしていらっしゃいますな」


 配下の一人がこっそりと耳打ちしてくる。「そうだね」と僕も返した。


 話し合いに応じてくれたんだから、もう少し友好的な態度で接してくれるのかと思っていたんだけど、その考えは甘かったみたいだ。解放軍のメンバーは、誰も彼もが胡散臭そうな顔でこっちを見ていた。


 きっと、まだ完全に僕のことを信じてはいないんだろう。話し合いを円滑に進めるためには、彼らの気分を解しておくのがよさそうだった。


「まずは捕虜を解放するよ」


 配下に命じて、僕が離宮で保護していた人たちを連れてきてもらう。彼らの姿が見えると、解放軍にどよめきが走った。


「お前たち、無事か!?」

「兄貴、俺だよ! 生きてたんだな!」


 捕虜たちが仲間のところへ走り寄り、心温まるような再会のシーンが繰り広げられた。皆喜んでいるみたいだ。


 ただ一人を除いては。


「ナディアはどこだ?」


 解放軍のリーダーだった。彼から発せられた冷たい声に、仲間の無事に沸いていた解放軍のメンバーがしんと黙る。


「手紙にはナディアも来ると書いてあった。ボクの妹はどこだ?」


 痛い所を突かれた、と僕は焦る。でも、そんな動揺を押し殺して、「手違いがあったんだ」と彼の追求をかわした。


「残念だけど、今ここにはいない。彼女と会うのはまたの機会になると思う」


 そう言いながらも、僕はあることに気が付いた。


 リーダーは、ナディアさんのいる場所を知らないらしい。もちろん、知っていてわざととぼけてるって可能性もあるけど、そうじゃないなら、ナディアさんは解放軍へ帰っていないってことになる。


 やっぱりナディアさんは僕を裏切ってなんかなかったのかもしれない。そう思うと、何だかほっとした。


 だけど、それなら彼女はどこへ消えてしまったんだろう?


「ふざけたことを言うな!」


 じっと考え込みそうになっていた僕は、リーダーの怒声に我に返った。歯を剥き出しにしたリーダーは、こっちを強く睨んでいる。


「何が、『手違いがあったんだ』だ! ボクが何も知らないとでも思ってるのか!? お前たちはナディアを地下牢に監禁してるんだろう!」


「えっ、地下牢?」


 予想外の言葉に僕は唖然とした。


「何の話? 監禁なんてそんなこと……」

「黙れ! 王族め! よくもボクの妹をひどい目に……!」


 リーダーはこっちに魔法を放とうとした。僕はぎょっとなる。


「ダメだよ! ここでの争いは御法度だって、君たちも知ってるでしょう!?」

「うるさい! さっさとその口を閉じないと後悔することに……」

「悔やむのはそちらだ、獣ども」


 冷淡な声と共に、近くの柱の陰から風のように誰かが飛び出してきた。その人がリーダーの腕をひねり上げる。リーダーが放った魔法は僕をそれて、遠くの地面を粉々に砕いた。


「あ、兄上……!?」


 助けてくれた人の正体が分かり、僕は呆然となった。そして、いつの間にか会場が兄上の配下の兵士たちに囲まれていることに気が付く。


「兄上、これはどういうことですか!」


 解放軍のリーダーを膝で地面に押さえつけている兄上に、僕は非難の声を飛ばした。


「何でここに……? 一体どこでこのことを知ったんですか!」

「ユベロ、それはあなたが知る必要のないことだ」


 兄上は暴れるリーダーの抵抗なんかどこ吹く風といった顔で僕を見つめた。解放軍のメンバーたちはリーダーを助けようか迷っているらしい。だって下手に騒ぎを起こしたら、神様の怒りを買ってしまうから。

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元になった作品です。(ネタバレ注意)
神は青で平和を望む少女を祝う(短編版)
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