本当の王子様
恋なんてしたことがない。
でもこの顔のせいで集まってくる女の子達に飽き飽きしている。
適当に流そうが諦めない。正直、めんどくさい。
高校生の好きなんて所詮は深くない。
中学で無駄に読み漁ったヤングノベルに書いてあった気がする。
そのノベルもその隣にあったノベルも愛を教えてくれなかった。
「はいはい、俺もう行くからまた後でな。」
愛は探すもの?
いや、探さなくても。
『はじめまして。ハンカチ落としましたよ。』
....................これは、、、、、これは。
これは浅い愛だろうか
「ありがとう、はじめまして。」
どうだっていい。
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あの子は同級生だろうか。
こんなに胸が痛くなるなんて、今まで女の子を無視してきた天罰、かもしれない。
『おはよう』
入学式で顔見知りがいない生徒たちは無言で席に座っている。
『あ、今朝の。おはよう、隣だね。』
「おはよう、今朝はありがとな。」
きっとこの子も付きまとってきて諦めずにその浅い愛を俺に呟くんだ。
別に、だからといって今までの様に流す必要はないだろう?
「みんな静かだな。」
『そうだね、ふふ、よく言われるでしょう?かっこいいねって。』
何度も言われたはずの言葉を
形の良い唇でつらつらと並べられる。
『どうしたの?言われたこと無かった?』
「ある、けど、そっちこそあるだろ。」
『あるけど、昔1回だけね。』
絶対嘘だろ。そう言って俺たちは笑い合う。
この時間がずっと続けばいいのになんて思いたくもなかった。
それは浅い、あさい、あさいから。
「こんにちは、今日からあなたたちのクラスの担任となります................」
その後のことは覚えていない。
どうやら寝てしまったらしい。
何度も怒られたが、そんなの慣れっこだった。
恋とか愛とか。深いなんてないのかもしれない。
『おはよう、急に寝たからびっくりしたよ。』
「は、お前もその後寝たって聞いたけど?w」
『だって担任の先生の話面白くないんだもーん!』
クスクスと先生を見ながら2人で笑う。
『顔、赤いよ。』
今はただ、この空間に目を背けたい。
この気持ちに名前を付けざるを得なくなる前に。