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リモートのち雨。

作者: 良い色
掲載日:2021/04/04

今日も朝から雨。梅雨に入ってからはずっと雨が続いている。


今までだったら、「雨だから歩いて駅まで行くから、早く出ないと」だとか、「革靴が濡れて嫌だな」と思って憂鬱だったけど、今は仕事がリモートなので、出勤する事は考えなくて良い。


開けた窓から雨が吹き込んできたので、僕は窓を閉めた。リモートワークが始まり、はや10ヶ月が過ぎた。最初は慣れなかった業務も不思議な事に形が出来てくる。今では会社にほとんど行く事はない。慣れてくると今までの慣習が無駄だったと気づく。出勤もそうだし、業務の合間の雑談。1番不要になったのは課長への相談で、チームでのオンラインミーティングで仕事の段取りが決まるため、課長の声を永らく聞いていない。たぶん、テレワークが始まって1番焦っているのは課長だと思う。はっきり言って気の毒だ。そして、僕も残業が無くなり収入が減ったのは痛い。


雨の日の出勤が無くなると助かる反面、家の中で仕事が完結すれため、外出をするきっかけが無くなった。転勤してこの街に来た途端、外出制限。解除後もそのままあまり外出しなくなった。


同僚とも「はじめまして」のあとはリモートの関係。仲良くなれる訳ない。もちろん仕事は順調だが、飲みに行く事がなくなったから、関係が希薄だ。


誰も知る人のいない街の、誰もいない部屋の中、箱に向かい、ひたすらとひとりで働く。

山奥でひとり暮らしている人にフォーカスしたテレビ番組があるけれど、「いやいや、都会でも同じだよ」と言いたくなる。今、この部屋で倒れたら間違いなく行き倒れだ。「ひとりぼっち」だ。

僕は孤高の人にはなれない…


その日は久々の会社への出勤なのに雨。とはいえ時間差で課長との面談なので、相変わらず「ひとりぼっち」は変わらない。リモートでの連絡で面談を伝える課長の顔は、久々に自分の仕事を得たからか、画面越しでも興奮が伝わった。


課長にとっては重要任務だが、僕の面談はこれといった事も無く、つつがなく終わり、雨の中、また帰路につく。

少し時間があるから、いつもと違う道で帰ろう。

ふと、そんな事を思う。最寄りの駅からハイツまでの道のりで、いつもと違う、ひとつ東の筋を歩いてみようと。忙しく出勤していた頃の僕は、帰宅時に寄り道をする事は無かったが、リモートワークのせいか、今日はそんな気になった。


いつもと違う街なみ、お店。こんな店があったんだと新たな発見がある。今日の晩御飯もいつものハイツの向かいにあるコンビニでと考えた途端、目に飛び込んできたのは一軒の惣菜屋さんだった。中を覗くと、他に客は無く、おばちゃがひとり、店番をしていた。

「丁度良い。ここで買ってみよう」そう思って店に入る。

『いらっしゃい。』

お店の中は狭かったが、所狭しと色々な惣菜が置いていた。

基本、茶色系の色合いだか、カボチャの煮付けやポテトサラダの色合いが華やかに映る。

迷った僕はど定番の唐揚げ弁当にした。

『今、時間ありますか?せっかくだから、温かい、から揚げをあげますね』とおばちゃんは僕に話しかけた。

『お客さん、うち、初めてですよね。』から揚げを揚げながら僕に話しかける。

『はい。近くに住んでるんですが、初めてこの前の道を通って…入ってみました。』

『近くならまたきてくださいよ。』おばちゃんが言う。

『そうですね。』来るかわからないけど…と思いながら僕も答える。

『はい。出来たよ。』

お金を払って弁当を受け取ると、中に紙袋が入っていた。

『あ、それ、オマケのコロッケ。名刺代わりに。お兄さん、コロッケ嫌い⁉︎』とおばちゃんが話かけてきた。

『いえ、好きです。ありがとう。』


いつものように、ひとりで食べるご飯。テレビからまたネガティブなニュースが流れ、思わずテレビを切る。雨足が強くなったのが、雨音が部屋まで響く。世間からもリモートな僕の部屋。でも、今日はコロッケの温かさがなんだか懐かしく、嬉しい気持ちになる。


『明日もあのお弁当屋さんに行くか。』

誰もいない空間に話かける。でも、気持ちはおばちゃんと繋がってる感じがする。


天気予報は明日も雨。でも大丈夫。

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