第1話 オタク最後の日
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照明が乱舞しながらステージを照らし、大の大人たちが大粒の涙を流しながら、呻き声をあげ、その中でも声援と、拍手が入り混じる混沌とした場所に俺はいる。そう、今日は俺が10年間、本気で、押し続けてきたアイドルグループ、「萌え萌え天誅クラブ」解散の日。周りを見渡せば、雨の日も風の日も長い間、同じ女の子たちを好きで居続けた同志たちが、ひどい顔をしながらがら必死に最後のステージに視線を送っていた。ひどい顔だが、同志たちは覚悟を決めてこの場所にいるということだけは、いまこの現実を受け入れられていない自分でもよく分かった。呆然としながらも、時は過ぎ、最後のスポットライトが、俺の愛してやまない推しメン、石神ルナちゃんを照らした。
「クラメンのみんな、。みんなを武道館に連れていく約束、守れなくてごめね。」
ルナちゃんは言葉を詰まらせ、いまにも泣き出しそうになるのを必死にこらえている様子だった。他のメンバーは、涙を必死にこらえているメンバーもいれば、耐え切れず大粒の涙を流すメンバーもいた。でも、最後のステージが「ごめん」で終わっていいわけがない。
「ここが、俺たちの武道館だ!!」
気づくと俺はそう叫んでいた。ライブ中に大声を出すことはマナー違反だがこの時は完全に考えるより先に動いてしまっていた。すると、おれのその声につられるようにして、同志たちも心のメッセージが声になっていった。
「そうだ!!箱の大きさなんて関係ない!」
「今日まで、俺たちのためにステージに立っててくれてありがとう!」
うおおおぉぉぉ!!!!
ライブハウス中で歓声が起き、その思いに充てられ、ついにルナちゃんもこらえ切れなくなり、涙を流した。
「みんな、、。いままで、楽しい日も辛いことがあった日も、ステージに立ち続けられ来れたのは、、みんなが私たちを好きで居続けてくれたお陰です。今日までこんな不甲斐ない私たちを、、。」
ここで、彼女は泣き崩れてしまった。しかし、ライブハウス中の思いは一つだ。
がんばれ!!!ルナ。照明が乱舞しながらステージを照らし、大の大人たちが大粒の涙を流しながら、呻き声をあげ、その中でも声援と、拍手が入り混じる混沌とした場所に俺はいる。そう、今日は俺が10年間、本気で、押し続けてきたアイドルグループ、「萌え萌え天誅クラブ」解散の日。周りを見渡せば、雨の日も風の日も長い間、同じ女の子たちを好きで居続けた同志たちが、ひどい顔をしながらがら必死に最後のステージに視線を送っていた。ひどい顔だが、同志たちは覚悟を決めてこの場所にいるということだけは、いまこの現実を受け入れられていない自分でもよく分かった。呆然としながらも、時は過ぎ、最後のスポットライトが、俺の愛してやまない推しメン、石神ルナちゃんを照らした。
「クラメンのみんな、。みんなを武道館に連れていく約束、守れなくてごめね。」
ルナちゃんは言葉を詰まらせ、いまにも泣き出しそうになるのを必死にこらえている様子だった。他のメンバーは、涙を必死にこらえているメンバーもいれば、耐え切れず大粒の涙を流すメンバーもいた。でも、最後のステージが「ごめん」で終わっていいわけがない。
「ここが、俺たちの武道館だ!!」
気づくと俺はそう叫んでいた。ライブ中に大声を出すことはマナー違反だがこの時は完全に考えるより先に動いてしまっていた。すると、おれのその声につられるようにして、同志たちも心のメッセージが声になっていった。
「そうだ!!箱の大きさなんて関係ない!」
「今日まで、俺たちのためにステージに立っててくれてありがとう!」
うおおおぉぉぉ!!!!
ライブハウス中で歓声が起き、その思いに充てられ、ついにルナちゃんもこらえ切れなくなり、涙を流した。
「みんな、、。いままで、楽しい日も辛いことがあった日も、ステージに立ち続けられ来れたのは、、みんなが私たちを好きで居続けてくれたお陰です。今日までこんな不甲斐ない私たちを、、。」
ここで、彼女は泣き崩れてしまった。しかし、ライブハウス中の思いは一つだ。がんばれ、。
「「「「がんばれぇぇ!!ルナちゃぁぁぁぁんん!!」」」」
「愛してくれて…、ありがとう。」
こうして、最後のライブは幕を閉じ、明日からは、この世界から天誅クラブだけがいなくなったしまった日常が始まるはずだった。
バシュンッッ!
一瞬訪れた静寂の後、来るはずの歓声は起こらず、無情にもやって来たのは悲鳴だった。
「「キャアアアアアァァァァァ!!!」」
ルナちゃんの胸には矢が刺さり、衣装が赤く染まりだした。その場には、悲鳴を上げる者、狼狽える者、腰を抜かす者が跋扈し、今目の前で起こったことは、到底理解が追いつくような出来事ではなかった。しかし、ルナちゃんの鮮血が俺の怒りを呼び起こしてくれた。
「誰だぁぁぁ!!」
最前列に置かれている柵によじ登り、後ろを振り向くと、フードを被った怪しい男が、こちらに向かって、ボウガンを構えていた。そして、その男を確認すると同時に、客をかき分け、その男に近づき、飛びついた。
「てめぇぇ!何してんだぁぁ!!」
俺は男に馬乗りになりフードを無理やりはがした。
「お前ぇぇ!何ッでここに居るんだ!!!!」
「へへ。あの女が悪いんだ。ぶっ殺してやったぜ。」
俺はこの男を知っている。3年ほど前に、ルナちゃんをストーカーし、度重なる迷惑行為で、逮捕され、永久追放された男だった。しかし、そんなことはどうだっていい。俺は夢中でその男を殴り続けた。
しかし、それが仇となる。この時の俺は、頭に血が上り周りが一切見えていなかった。
次の瞬間、背中に鋭い痛みが奔った。そして、背中がどんどん熱くなっていくのを感じる。この男には仲間がいたようだ。俺はその仲間に背後から刺されてしまった。
「くそ、。」
痛みがなくなり、体から力が抜けていく感覚が襲ってきた。おそらく、致命傷を受けたのだろう。もう助からないと悟った瞬間、脳裏には、ルナちゃんとの楽しかった10年の日々が浮かんできた。
「始めて握手したあの日からもう十年か。」
「おい、やべぇぞ!ルナちゃんが息してない!!早く救急車!!」
「シュウさんがピンチケに刺されたぞ!!!」
「でも、ピンチケの一人はシュウさんが命がけで取り押さえてる!!」
走馬灯の影響か、周りの音や気配が、分かるようになった。ルナちゃんは心臓に矢を受けていた。考えたくはないがきっと助からない。そして、俺も、、。
「結局、死ぬまでオタクだったな、俺。」
だが、こいつだけは絶対に許せない。道連れにしてやる!
俺は最期の力を振り絞り、背中に刺さっているナイフを引っこ抜いた。
「あの世で、一緒にオタクしようや。」
俺はそのナイフを、ルナちゃんを撃った男に突き立てた。
こうして、俺の人生は幕を閉じた。
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ガサガサッ
「い、イタタタッ!」
何かに耳を挟まれ、その痛みで目が覚めた。どうやら、外にいるようで、夜、真っただ中のようだ。耳を挟んでいる何かを払うと、それは手のひらサイズほどのカニだった。
「痛いな、この野郎!」
そのカニを指ではじくと、そそくさと草むらへ逃げていった。それにしてもここはどこだ?確か俺は、萌え天のライブで刺されて…。背中をさすってみたが傷はなかった。そして、暗さに目が慣れてきたので、あたりを見渡すと、目の前には海が広がっており、地平線の向こうに月のような大きな星が二つあるのが見える。なんだあれ?
「もしかして、異世界に転生しちゃった!?」
死んでしまった記憶が鮮明にあることが、その可能性を俺に突き付けてきた。そんなバカなことがあるのか?いや、何はともあれ、俺はいま生きている。とにかく、状況を把握しなければ。
「シュウさん?」
と思った矢先、背後から、ものすごく聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。振り返るまでもない。俺はこの声を誰よりも知っている。
「ルナちゃん!?」
振り返るとそこには、俺の永遠の推しメン、石神ルナちゃんが立っていた。