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【 ババア無双 】  作者: W.A.M
第弐章 『ババア、異地にて隣を忘れず』
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第九話 『ババア、神の依り代たる横綱として格を示す』

 

「ええっと、じゃあおばあちゃん、ここにサインを……」

「はいはい、これでいいかねぇ?」

「ん、じゃあちょっと待っててね」


 ロビーの待合に座るおばあちゃんを残し、私は窓口奥のデスクに向かう。

 今日は書類手続きに来てもらってる。こないだの高原の家とか、その他とかの関係で。

 あ、そうそう。こないだの家掃除の件を報告したら何故か、課長から居住その他の許可が下りた。未だに基準がわからないなぁ。

 まぁいいか。これで安心だね、おばあちゃん。私も安心。



 そして座って待つおばあちゃんの元に近づく人影。

 そして、ぽとり。何かを落とした。


「あら、落とし物ですよぉ、よっこいしょ」


 !

 その人は!だめ拾っちゃ…



「フハハハハハ、手袋を拾ったな!なら決闘は受理と見なす!」


 そこに居たのは、

 何故か勝ち誇ったように高笑いする、勇者3人組のリーダー。

 またお前か。


 後方からは。

 頭を抱えながら、ダッシュで追いつくギャルの姿が見えた。





【 ババア無双 】


 第九話

『ババア、神の依り代たる横綱として格を示さんとす』






「ごめんねぇ、ウチのバカが……」

「あらあらこないだぶり、ごきげんよう」


 ギャルが顔の前で手を合わせて、頭を下げた。

 その足元には、ぼっこぼこにされ無惨な姿のリーダー。


「お、お前バトルマスターなんだから手加減を……」

「やかましいわ!お前も謝らんかい!」


 胸部を踏まれ、ぐはっ、という言葉とともにリーダーが再び沈んだ。強い。

 ていうかこのギャル、凄み方がおっさんっぽいなぁ。

 そんな様子を見ておばあちゃんは微笑んでいた。


「いいのよいいのよ、こんな老人に構ってくれるなんてアタシも嬉しいよぉ。

 決闘?ってやつ、やってあげましょうかねぇ」


「なら勝負方法は、主審の受付君に決めてもらおう!」


 床を這っていたリーダーがむくりと起き上がり、ビシィという効果音とともに私を指さした。しぶとい。

 ていうか。え、また私?

 この人本気で、“ギルド”の受付何だと思ってるのかな。ちょっと腹立ってきた。


「本当に私が決めちゃっていいんだね?じゃあ……」



「お茶くみ対決」

「うおおおお!湯呑に一度お湯を入れて、湯を適度に冷ます!!」

「湯呑もあったまって一石二鳥って感じぃ?」


「または、ロビーの床掃除対決」

「うおおおお!このフロアに!塵ひとつ残らんと思え!」

「おやおや、さっきの茶殻を使っていいのかぇ?ホコリが取れるんだよぉ」


「または、窓ふき対決」

「うおおおお!指紋ひとつ残さず!!……駆逐してやる!!」

「……」メガネフキフキ



「よし、これで午前の雑務は終わり!お疲れさま!!」

「やっぱり受付君の仕事じゃないか!ひとり得するなぁぁ!!」

「仕事終わり~?ならステラちゃんカフェ行こ行こ☆」

「隙あらばナンパするんじゃない!オッサンか!!」


 うるさいわねぇ、この勇者……


 そう思いながら殺意の波動を視線に込めて向けていると、ふとその視界に“依頼書”が入ってきた。

 そうだ、この依頼を使用すれば……




 ◇ ◇ ◇ ◇




「というわけで。

 町の復興委員会依頼!炊き出し対決~!!」



「おい!真っ当な対決をさせろ!!」

「あらぁ、これは楽しみねぇ」

 五月蠅い勇者の文句を無視し、私は解説を続けた。

 ちょっとはおばあちゃんの堂々っぷりを見習え。


「町の復興に、心も体も疲れたみんなを労いたい!そんな復興委員会が、皆さんに炊き出しを振舞いたいと、ギルドに調理を依頼してきました!」



 町役場の近くの公園。炊き出し会場。

 この特別依頼を見物しようと、作業の手を止めて町中から集まってきた。まったく本末転倒もいいところだ。

 でももういいや、私もこのビックウェーブに乗ってやることにした。



「そこで!この町のひーろー(棒読み)・勇者と、町のアイドル・おばあちゃんに炊き出しを依頼、競ってもらうことにしました!さてどちらが町の皆さんを労うことができるでしょうか!!?

 なお、この炊き出しへの材料提供は。

 肉;勇者チームの魔物討伐成果、野菜;おばあちゃんの薬草採集成果と、

 なんと参加者からになります!ありがとう!」


 ギャラリーから歓声が起こる。

 二人にはみんな、感謝しているんだね。本当にね。



「では開始!あーら、くいじーぬ!!」ごわーん

 私の開幕を告げる合図とともに、町の正午を告げる鐘の音が鳴った。

 みんなもう、お腹減ってるから。あと私も減ってるから。急いでね!





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