第七話 『ババア、大地の懐に人の子の喜びを感謝す』
「勝負だ、マダム!負けたらパーティー入りしてもらう」
「あらやだよぉ、ご婦人扱いされたのなんていつ振りかねぇ」
薬草採集に来たら、勇者パーティーが勝負を挑んできた。
おばあちゃんも、なんか喜んじゃってる。
「あ、あなた達何考えてんの勝負とか。ていうか魔物討伐に行ったんじゃかったの?」
「えー、討伐クエストなら午前に終わらせたし~」
「朝の涼しいうちに宿題を終わらせてから遊びに行けと、母上から躾けられていてな!」
くっ、有能……!
「でもねぇ、アタシゃ野草を採りに来ただけなんだけどねぇ」
「おばあちゃん、野草じゃなくて薬草!夕飯の支度じゃないんだから」
「そうそう薬草薬草。今晩は魚と一緒に煮物にでもしようかねぇ」
「……おばあちゃん、薬草を大根みたいに考えてない?」
「ねぇ、だったら勝負を薬草採りにしたらぁ~?
審判も、丁度居ることだし~」
え、審判?私?
【 ババア無双 】
第七話
『ババア、大地の懐より出ずる人の子の喜びに感謝す』
「ゴメンねーおばあちゃんアイツに付き合わせちゃって~」
「いいのよいいのよ」
「そのへんの草テキトーに抜いてたら、十分だから~。
あとはあーしがアイツに言っとくし?」
「それじゃあ、クエスト達成にならないよぉ。そこに“審判”も居るしねぇ」
「ホントだぁウケるー」
「オイ!敵チームになったとはいえ真剣にやらんか!」
「……」メガネクイッ
というわけで、何故かチーム戦となったこの薬草クエスト。どうしてこうなった。
人数の不公平を無くすぞ!とか提案で、ギャル&おばあちゃんチームVsリーダー眼鏡チームになった。ていうか約一名、そろそろ喋れ。
で、私は審判。薬草の鑑定できるの私しかいないから、って……
もう一度言う。どうしてこうなった。
あーもういいや。どうにでもなれ。
「はーい、じゃあ始めー」
「うおおおお!この勝負!我が家の誇りにかけて!絶対にぃぃぃ!!」
「……」メガネクイッ
「あ、おばあちゃん、この花かわいー。」
「若いもんが、あんまり足を開いて座るもんじゃないよぉ」
「いっけね☆」
「ぐわあああ、野生の薬草とはこんなにも苦いものなのか!糖衣、糖衣を!」
「……」メガネフキフキ
「あら、この辺に何か埋まってるわねぇ」
「お?掘るべ掘るべ、任されたぁ~」
そして数十分、経過。
「はーい、結果発表ね。サクサクいきましようか」
「審判!なぜそんなやる気無いんだ!?真面目にやってくれ!!」
ギルド受付を何だと思ってんの……業務外もいいとこでしょ、こんな仕事。
それにしても、まぁよく採ったわ両チームとも、どっさりと。
「まず勇者チームから。はい、よくとれました。次」
「雑ぅー!」
「次、おばあちゃんチーム。
ってこれ野菜じゃないの!もう“や”しか合ってないし!」
「あらあらうっかり」
「てへぺろー☆」
……ん?これって。
「フハハハハ、ということはこの勝負、我がチームの勝利……」
「おばあちゃんチームの勝ちー」
「何でだよ!」
「この土まみれの地下茎、超レア薬の原料っぽい。
確かにこのクエストの対象じゃないけど、無視できないレベル」
「すご~いおばあちゃん!あーし達最強のコンビじゃね?」
「ふふふ、アタシゃ地中に生えてるタケノコも土踏めばわかるのよぉ」
「卑怯だぞ!採点外にしろ!!」
「価値は1万倍くらいの代物ですけど?」
「ぐぬぬぅぅう……!」
「お、覚えていたまえよっ!」
「じゃねぇ~、おばあちゃん温かくして寝なよぉ」
「……」メガネキラッ
薬草と捨て台詞を残し、去っていった。何だったんだろ、あの人たち。
ま、いいか。これら全部おばあちゃんの手柄に……
って、こんなに運べないよ!
ていうか、おばあちゃんの野菜と合わせたら荷車が必要なレベルな量。さすがにこんなに採って、放置してダメにしたら……また始末書だ……。
どうしよう、とりあえず、この地下茎は私が大事に持ち帰るとして……
とか思ってる間に。
気づけば、草と野菜の山が半分消えていた。え?
目を疑う私の横で、
おばあちゃんが、手押し車の物入れに次々と収納していた。
「ね、見た目よりもたくさん、モノが入るでょぉ?」
いやその収納力はおかしい。
ふた山の野菜と薬草が、何で鞄サイズの物入れに、そんなに入ってるの?
……ああ、
おばあちゃんだからか。
すっかり全部しまい終わった私たちは、
「今夜は野菜パーティーだねぇ」
「やっぱりおばあちゃん、夕ご飯のことばかり考えてたでしょ」
日が暮れかかり、空とともに赤く染まる高原を後にするのだった。
ふふっ。この量を見たら、ギルドのみんなびっくりするね。
<余談>
~帰り道。高原の中ほど~
おば
「あら、あの家空き家かしら。住んじゃダメかしらねぇ」
ステラ
「いいと思うけど、一応上司に聞いてみるね」
~~神界~~
地域神
「ホントはそこに転生してあげる予定だったんだよぉ……
雑な仕事しちゃって、ゴメンよ、おばあちゃん……」