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【 ババア無双 】  作者: W.A.M
第弐章 『ババア、異地にて隣を忘れず』
7/24

第七話 『ババア、大地の懐に人の子の喜びを感謝す』

「勝負だ、マダム!負けたらパーティー入りしてもらう」

「あらやだよぉ、ご婦人扱いされたのなんていつ振りかねぇ」


 薬草採集に来たら、勇者パーティーが勝負を挑んできた。

 おばあちゃんも、なんか喜んじゃってる。


「あ、あなた達何考えてんの勝負とか。ていうか魔物討伐に行ったんじゃかったの?」

「えー、討伐クエストなら午前に終わらせたし~」

「朝の涼しいうちに宿題を終わらせてから遊びに行けと、母上から躾けられていてな!」


 くっ、有能……!


「でもねぇ、アタシゃ野草を採りに来ただけなんだけどねぇ」

「おばあちゃん、野草じゃなくて薬草!夕飯の支度じゃないんだから」

「そうそう薬草薬草。今晩は魚と一緒に煮物にでもしようかねぇ」

「……おばあちゃん、薬草を大根みたいに考えてない?」



「ねぇ、だったら勝負を薬草採りにしたらぁ~?

 審判も、丁度居ることだし~」


 え、審判?私?






【 ババア無双 】


 第七話

『ババア、大地の懐より出ずる人の子の喜びに感謝す』






「ゴメンねーおばあちゃんアイツに付き合わせちゃって~」

「いいのよいいのよ」

「そのへんの草テキトーに抜いてたら、十分だから~。

 あとはあーしがアイツに言っとくし?」

「それじゃあ、クエスト達成にならないよぉ。そこに“審判”も居るしねぇ」

「ホントだぁウケるー」


「オイ!敵チームになったとはいえ真剣にやらんか!」

「……」メガネクイッ



 というわけで、何故かチーム戦となったこの薬草クエスト。どうしてこうなった。

 人数の不公平を無くすぞ!とか提案で、ギャル&おばあちゃんチームVsリーダー眼鏡チームになった。ていうか約一名、そろそろ喋れ。

 で、私は審判。薬草の鑑定できるの私しかいないから、って……


 もう一度言う。どうしてこうなった。

 あーもういいや。どうにでもなれ。



「はーい、じゃあ始めー」



「うおおおお!この勝負!我が家の誇りにかけて!絶対にぃぃぃ!!」

「……」メガネクイッ


「あ、おばあちゃん、この花かわいー。」

「若いもんが、あんまり足を開いて座るもんじゃないよぉ」

「いっけね☆」



「ぐわあああ、野生の薬草とはこんなにも苦いものなのか!糖衣、糖衣を!」

「……」メガネフキフキ


「あら、この辺に何か埋まってるわねぇ」

「お?掘るべ掘るべ、任されたぁ~」




 そして数十分、経過。


「はーい、結果発表ね。サクサクいきましようか」

「審判!なぜそんなやる気無いんだ!?真面目にやってくれ!!」


 ギルド受付を何だと思ってんの……業務外もいいとこでしょ、こんな仕事。

 それにしても、まぁよく採ったわ両チームとも、どっさりと。



「まず勇者チームから。はい、よくとれました。次」

「雑ぅー!」

「次、おばあちゃんチーム。

 ってこれ野菜じゃないの!もう“や”しか合ってないし!」

「あらあらうっかり」

「てへぺろー☆」

 ……ん?これって。



「フハハハハ、ということはこの勝負、我がチームの勝利……」

「おばあちゃんチームの勝ちー」

「何でだよ!」


「この土まみれの地下茎、超レア薬の原料っぽい。

 確かにこのクエストの対象じゃないけど、無視できないレベル」

「すご~いおばあちゃん!あーし達最強のコンビじゃね?」

「ふふふ、アタシゃ地中に生えてるタケノコも土踏めばわかるのよぉ」


「卑怯だぞ!採点外にしろ!!」

「価値は1万倍くらいの代物ですけど?」

「ぐぬぬぅぅう……!」



「お、覚えていたまえよっ!」

「じゃねぇ~、おばあちゃん温かくして寝なよぉ」

「……」メガネキラッ


 薬草と捨て台詞を残し、去っていった。何だったんだろ、あの人たち。

 ま、いいか。これら全部おばあちゃんの手柄に……


 って、こんなに運べないよ!

 ていうか、おばあちゃんの野菜と合わせたら荷車が必要なレベルな量。さすがにこんなに採って、放置してダメにしたら……また始末書だ……。

 どうしよう、とりあえず、この地下茎は私が大事に持ち帰るとして……


 とか思ってる間に。

 気づけば、草と野菜の山が半分消えていた。え?


 目を疑う私の横で、

 おばあちゃんが、手押し車の物入れに次々と収納していた。

「ね、見た目よりもたくさん、モノが入るでょぉ?」


 いやその収納力はおかしい。

 ふた山の野菜と薬草が、何で鞄サイズの物入れに、そんなに入ってるの?



 ……ああ、

 おばあちゃんだからか。




 すっかり全部しまい終わった私たちは、


「今夜は野菜パーティーだねぇ」

「やっぱりおばあちゃん、夕ご飯のことばかり考えてたでしょ」


 日が暮れかかり、空とともに赤く染まる高原を後にするのだった。

 ふふっ。この量を見たら、ギルドのみんなびっくりするね。







<余談>






 ~帰り道。高原の中ほど~




 おば

「あら、あの家空き家かしら。住んじゃダメかしらねぇ」


 ステラ

「いいと思うけど、一応上司に聞いてみるね」




 ~~神界~~


 地域神

「ホントはそこに転生してあげる予定だったんだよぉ……

 雑な仕事しちゃって、ゴメンよ、おばあちゃん……」



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