第五話 『ババア、災厄の終焉にて世の理を破壊する』
クエストを受けるために。収入を得るために。
まずはギルドに登録することになったおばあちゃん。
じゃあまずは、ステータス測定をば。
これで、ようやくおばあちゃんの事を色々わかりそう。
……そういえば異世界人って、レベルとかステータスとかやけに詳しくない?
あの3人組とかも、何故か知ってたし。
だから聞いてみたんだけど。
「ねぇおばあちゃん。自分のレベルってわかる?」
「れべる?何ですかぇそれは」
うん。そうだね。おばあちゃんだからね。
【 ババア無双 】
第五話
『ババア、災厄の終焉にて世の理を破壊する』
「はぇー、この世界はタブレットが普及してるんねぇ~」
「違う違う。これは“ステータスウィンドウ”っていうんだよ」
手渡された、片面にガラスが貼ってある石板を見て。おばあちゃんがなにやらしきりに感心していた。
これはね、ギルドにメンバー登録した方の、ステータスを確認する道具なの。あ、ギルドの備品だから貸し出しはできませんよ。高価いし。
「じゃ、ここ触りながら『ステータス・オープン』って言ってみて」
「はいはい、『すてーたす・おーぷん』これでええかね?」
ヴン…。
ガラス面に光が灯り、文字列を写しはじめた。どれどれ。
ひッ。な何、この文字列?暗号?は……
「あらまぁ、文字化けしてるわねぇ。ばーじょんが古いのかしら」
何やら、情報と画面表示が嚙み合わないと起こる事らしい。っておばあちゃん詳しいね。
って、嚙み合わないってどういう事それ。入れ歯の話?
んー、ま、いいか。
それにしても、あーびっくり。私、てっきり呪いか何かかと思っちゃった。
でもねぇ……
うーん、結局おばあちゃんのステータスが解らないなぁ。
「ところで“すてーたす”って何かぇ?」
「ああうん、強さの数値とか、自分のレベルとかの事だよ。
それの一覧表が、これに表示されるの」
「あら、“すぺっく”のことかぇ。
ならアタシ達の言葉なら、こう言うんだよぉ。
『ひだりくりっく・ぷろぱてい』、って」
その言葉に反応し、ステータスウィンドウが、
ずどーん、という着地音とともに、腰くらいまである高さの巨大な箱に変形した。
片一面に、ガラス板が貼ってある。……まさか。
「あら懐かしいねぇ、ブラウン管は久々にみるよ」
そう言うと、ガラス板の下に付いていたボタンをいじり始めた。あーやっぱりそうだ、画面だ。
そしておばあちゃんが、ボタンのひとつを触ると。
画面の中に稲妻が走り、続いて文字が出てきた。
……ものすごくゆっくり。
まるで一文字一文字、カタ、カタと音を立てるように。
職、業、;、バ、バ……
ザザザザザアアアアアアア
ひッ。今度は何?砂嵐!?
「あらま、画面が調子が悪いのかねぇ、困った子だよぉ……」
画像の不調らしい。詳しいねおばあちゃん。
それにしても、あーびっくり。私、今度こそ呪いかと思っちゃった。
でもねぇ……
うーん、結局おばあちゃんのステータスが解らないなぁ。
すると、おばあちゃんは。
「こういう時は。こうするのが一番だよぉ。
アタシがおばあちゃんになる前から、伝わってきたやり方なんよ」
そう言うと、立ち上がり、腕まくりをし……
「斜め、四十五度!」
おばあちゃんの てんがうなり ちがさけぶ チョップ!
ステータスウィンドウの のうてんをちょくげき!
ドゴォ!
ガガッ、ボゥン!
火を噴いた。
あー。
私、初めて見た。ステータスウインドゥが爆発するの。
けっこう綺麗な形の煙を上げるんだね。知りたくなかった。
「……」
「……」
「おばあちゃん、もう一回、『ステータス、オープン』って言ってみて」
「す、『すてーたす、おーぷん』……」
しーん。
その日。
冷たくなった“石板”とともに、
私は、始末書を提出した。