表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【 ババア無双 】  作者: W.A.M
第肆章 『ババア、再び……』
23/24

最終話

「今年は、本当にいろいろとあったねぇ」

「おばあちゃんと巡り会えたことだけどね!」

「一応、あーしも今年に来たんだけど」



 12月31日。


 私とアゲハさんは、おばあちゃんの家に来ている。

 年越しを一緒に過ごそう!ってことで。

 これって、“女子会”てやつなんだってね。

 おじさんが一人混じってる?のは気にしない。




 お掃除も手伝い。

 相変わらずおばあちゃんが凄すぎ。


 餅つきって、初めてやった。

 アゲハさんが、武芸十八般より餅つきの方が得意なのが笑った。


 食べるものも食べて。

 居候のヘルパンサーちゃん、またも獲物を捕まえてきてびっくり。




 ああそうだ、こないだの件の顛末なんだけど。


 あの後。

 町のはずれに、胴をぶった斬られて虫の息のメガネと、眼鏡が落ちてた。魔王の息子も魔王の眼鏡も、丈夫なことを感心したなぁ。

 ので。ふん縛って、もうしないようにじっくり脅して、今回の経緯書付けて魔王に返した。400体斬りを見事果たしたアゲハさんがメガネに眼鏡をかけてあげた後、宣言通りペタペタ指紋付けてから「次は15cm奥な」って。あれに一番ビビってたんだっけ。


 町も。奇跡的に死者はゼロ!ホントすごい。

 怪我人は多いけど、“七英雄”のおかげで大事にならなかった。

 課長も、包帯は取れないけど生活に支障なし。

 復興はやり直しだけど、誰一人として気落ちしてないのが嬉しい。




 そんなこんなで、今年についても語り合って。

 もう日もとっぷり暮れて。もう深夜。



「あ、ねぇねぇ。

 みんなで、年越しの瞬間にジャンプしない?

 “その時、私達はこの世にいなかった”みたいな」

「それ、前世でやってる奴いたなぁ」

「ソッチでも流行ってたんですね!じゃ決定。ほら、そろそろだよ」

「はいはい、どっこいしょ」

「やれやれ、しゃぁないね」


「ほらそこの二人、腰が重い!

 じゃあカウントダウン!5、4、3、2、1、とぉ!」






【 ババア無双 】


 最終話

『ババア、年越しの瞬間に他界す』






 …


 ……


 ………



 ……ちゃん、

 おばあちゃん!


「おばあちゃん!お久しぶり!起きて!!」


「むにゃむにゃ……ん?

 おやおや、お地蔵さまじゃあないですか。南無南無……

 いつぞやは、ネコちゃんの供養ありがとうございまして南無南無」


「ん、いいっていいって。それが仕事だからね」


「それより、あの数日後はびっくりしたよ!

 まっさか、おばあちゃんの力が無くなっちゃうとは!

 “若返りの術で神の加護を抑え込もう”その発想には脱帽だったよ」


「実はね、あのメガネさんには感謝してるんですよ、ちょっとだけ」


「……今のは、ここだけの話にしとこうね」



「ああそうだ、本題。

 おばあちゃんが、元の世界でずーっと、僕ことお地蔵さんを大事にしてくれてたよね?それが地域で根付いててさ、相変わらず地元のみんながキレイにしてくれたり、拝んだりしてくれるんだよ。

 おかげで僕の“神様ポイント”は溜まりっぱなしなのさ。本当に、おばあちゃんには感謝しかないよ!」


「それはそれは。

 でも、アタシのおかげじゃないよぉ。若いモンに言ってあげて」


「いやいやご謙遜を。

 それでね。おばあちゃん、元の世界に行ってみない?

 まぁタマシイだけなんだけど。溜まったポイントで御招待するよ」


「あらま、本当かね。じゃぁ……行ってみようかね」


「よしきた!それでは、ご招待~!」




 ◇ ◇ ◇ ◇




 ~元の家~


「家族団欒してるねぇ」

「お、ひ孫ちゃんが立った!?」

「あらあら、正月なのにお飾りもしないで」

「喪中だからねー」

「いやだわ、誰が亡くなったんだい?」

「あのさぁおばあちゃん……」

「あらそうだった、アタシだったわぁ」


「……みんな、仲良く健やかに過ごしてるねぇ」

「元気で過ごしてるよ、みんな僕に南無南無してくれるし」

「そうかぇ。よかったよぉ」

「うん」


「……おばあちゃん、元に戻りたい?」

「はぇ?」

「こっちの世界に、戻りたい?」

「んんー、結構ですよぉ」

「あれれ」


「アタシはコッチで、長く生かしていただきました。

 たくさん、色んなことをやりました。

 苦しいことも悲しいことも、皆大切な経験。

 その経験……向こうの世界で、役立てられるんです。

 アタシの昔が、向こうで味わい深くなってると、感じられるんです」

「そっかぁ……」


「……」

「……」


「ハハハ。異世界転生に、2回も断られちゃった。

 こんなことって、めったにないよ」

「申し訳ないですねぇ」

「いやいやおばあちゃん、僕、おばあちゃんには感謝しかないさ。

 僕だって、貴女との出会いが自分を変えたのだから」

「勿体ないお言葉ですよぉ」


「人生って、出会いだね。人も、出来事も。まぁ僕神様だけど」

「そうよぉ」

「あのひ孫ちゃんも、これからたくさんのことがあるんだろうね」

「そうやって、成長していくのよぉ」

「……そろそろ、時間切れだよ」

「名残惜しいねぇ、最後にちょっといいかぇ?」

「?おばあちゃん、ひ孫ちゃんのところに行って、何するの?」


「いないいないばぁ、たかいたかい」

「おばあちゃーん……ちょっとそれは無いなー」




 ◇ ◇ ◇ ◇




 ……めでとー!」

「今年も、よろしく☆」

「……はぇ?」


「やだーおばあちゃん、どうしたの?ぼーっとして」

「ボケちゃったとかいうブラックジョークは無しだからね?」


「……ああ、いやねぇ、

 ちょっと、昔のこと思い出してたのよぉ」


 そう言うおばあちゃんの目が、少しだけ寂しそうだったけど。

 でもすぐに戻って。いつものように、笑顔で。




「ゴロロロロ、ガァウ」

「明けまして!ここにアゲハも居ると聞いてたので」

「昨年はうちの部下がお世話になりました、今年もご迷惑を……」


 みんなが、なだれ込んできた。

 本当に、モテモテだね。

 ま、おばあちゃんだから。当然か。



「んーじゃ、みんなでお雑煮でも食べよっか!」

「そんなに食べて、アゲハさん、よく太らないよね」

「僕は太っていても……!」

「はいはい、その前に神様に詣でに行きましょうかねぇ」

「あーしに祈る神はいないよー……」

「お天道様に、今年も頑張ることを誓うんです!」




 それに。

 ずっと変わらない、私の願いも。どうかお天道様。



 今年も、みんなが、みんなで。

 いい一年でありますように。







【 ババア無双 】 完

本文は以上です!


オマケの、次のページもどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ