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【 ババア無双 】  作者: W.A.M
第肆章 『ババア、再び……』
18/24

第17話 『ババア、素敵な殿方と往た踊場で電信体操を舞う』

 今日もいい天気。

 我が町は朗らかながら、復興に商売にと賑やかだ。


 先日の件を報告し、町役場はちょっとしたさわぎになったけど、

 町にはあまり荒立てないような報告をする、に留めた。

『魔物がまた来るかもしれない、慌てず戸締りしましょう』程度。

 それで、本当に焦らないから。この町はある意味すごいと思う。


 隣町では。あの台所の勇者が復興に陣頭指揮を取っているらしい。

 それにしてもまさか、あそこの有力貴族のタカユズル家とはねぇ。


 私は、おばあちゃんとアゲハさんと一緒に買い物をしている。

 おばあちゃんも備えは必要だと思ったようだ。愛用の手押し車持参とは、大量購入の心構えだね。

 あと。アゲハさんが『もうスカートやだ!ジャージ買う!』と騒いでた。

 何かあったのかな?


 そして町中を歩く最中。


 どんっ。

 おばあちゃんが、すれ違う男の人とぶつかって倒された。


「これは大変失礼しました、ご婦人よ」

 その人は、すぐさま手を取り立ち上がるのを手伝い去っていった。

 あらイケメン。

 じゃない、まったく気を付けてよね……


「……」

 起こされたおばあちゃんの様子が変だ。どうしたの?

 と、顔を覗き込んだら。


 20代前半くらいの、若い女性。

 わ、若返ってるぅぅーーー!!!?






【 ババア無双 】


 第17話

『ババア、素敵な“殿方ひと”と行った“踊場でぃすこ”で“電信体操らじおたいそう”を“おど”る』






「えっ、おばあちゃんどったの?恋でもした?」

 その横顔を見てアゲハさんが、呑気なことを口走った。そういう次元の問題じゃない。

「あら、あらまぁ!」

 おばあちゃんはおばあちゃんで、手や顔の様子を確かめてるし。


「いやおかしいでしょ!変わりすぎだから!」

「やだなぁステラちゃん、恋すればみんなキレイになるってもんよ」

「ラブストーリーは突然に訪れるもんだよぉ」

 いくら何でも呑気すぎるでしょ、転生あっち組。それともソレが普通なの?


「ってことは、おば……おねえさんは、さっきのイケメンに?

 この面食いめ、隅に置けないねぇ」

「あらやだわ!ウチの旦那も若い頃は……」


 キャーキャー言っとる場合か!

 動機は何でもいいから、さっきのイケメン追いかけないと!

 ……て、あれ?もう居ないし。


「うーん、仕方ないから買い物続けよ?」

 アゲハさん、おば……おねえさんと買い物したいだけなんじゃ?

 でも私には咎められなかった。

 ……だってさ。


「困ったわねぇ!どうしようねぇ!」


 その横で、左一本軸足に、愛用の手押し車をクルクルとジャイアントスイングしてる笑顔を見たら、ねぇ。

 ああ、はしゃいじゃってるなぁ。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 ショッピングの予定は変更されて。まずはおばあちゃんの服から。

 いつまで若いかはわからないけど、せっかくなら堪能しなきゃね。


 で、婦人服売り場でもう、びっくり。


「おば……おねえさん、きれいすぎるよ……」

「ホントだ、あーし 達 が、逆立ちしても敵わない……」

 さりげなく私を含めたアゲハさんの脇腹に肘を叩きこんだけど、本当にきれい。


「アタシも……こんな格好できるなんて……」

 おねえさんも凄く嬉しそう。


「さ!次はウインドウショッピング!あーしに着いてきてよ!!」

「あ、アゲハさんジャージは?」

「後回し後回し!ジャージで町は歩けないよー」

 んもう……

 アゲハさん、こんな時は女の子しちゃってるんだから、ずるい。



 その後、私達は。


「お、ステラちゃんにアゲハちゃん……と誰だいその別嬪さん?

 ひゃー!あのおばあちゃん!?」

 再建に勤しむ大工のおじさん達から声かけられたり、


「ここのお菓子屋さん、襲撃されなくてよかった!

 歯ごたえあるけど美味しいんだよ!」

「嬉しいねぇ、まさか入れ歯じゃなくなるとはねぇ」

 お茶したり、


「はい、おじさん達。差し入れ!ステラ特製、焼菓子!」

「おっ!ありがとよ!美女三人から貰えばそれが一番ってもんよ!!」

 やっぱり再建を何もしないのが気が引けたから、お菓子作って差し入れたり。



 一日が過ぎていった。




「本当に、こんな日が迎えられるなんて。

 人生、死んでも生き返ってみるもんだねぇ。アタシゃ胸が一杯だよぉ」

「ちょ!おねぇさんブラックジョーク!

 ま、今日だけはあーしも、女として楽しかったかな!」


 なんかでも、はしゃぎすぎな感があるよね。

「でもさ、若い頃はモテたり、こういうこと沢山してたんじゃないの?

 これだけ美人なら、男どもも放っておかないでしょ」


「……アタシがこれくらいの頃、生きるのに必死だったからねぇ」


 アゲハさんが、ハッとした表情を見せ、

「あ……そっか、“大戦”があったんだ」

 その問いかけに黙って頷くおねぇさん。


「ホントにさ、あの頃は、耐えて、耐えて、耐えての日々だったよぉ。

 瓦礫ばかりの町中を、家族たちと生き延びることばかり考えてねぇ」


 あ……

 だからか。

 あの時、町が襲撃された時の「わかるよ」が、あんなにも辛そうだったの……


 私もあの時辛かったけど、おばあちゃんもっと辛い思いをしてきたんだ……

 なんか、悪いこと聞いちゃった。



「でもいいんだよぉ、そこから立ち上がってこれたのがアタシの強さだし、

 何より今日、ふたりと楽しかったからねぇ。ありがとうよぉ」


 うん……うん!こちらこそありがとう!!



「さてと。そろそろ本来の目的に戻ろうかねぇ。

 備えの買い出しと、アゲハちゃんのズボンを……ありゃ?」


「ん?どったのおねぇさん」

「いやねぇ、いつもあるはずのアメちゃんが、無いのよぉ」

 え。みんなに配っちゃったんじゃ?


「んんにゃ。あのアメちゃんはねぇ、必ず人数分はあるんだよぉ。

 おかしいねぇ……カゴの中かぇ?」

 そう言うと、手押し車のバッグを漁り始めたけど……


「ありゃま。カゴも壊れとるわい」



 ……!?


 ううん、待って。

 今言ってた、ふたつって。

 私がおばあちゃんと一緒に行動して、驚いたふたつだよね。

 

 ……まさか。



「おばあちゃん!箒持ってる!?」

「何だいステラちゃん、いきなり」

「いいから!持ってる?!?」


「はいはい、ありますよぉ。いつも手押し車につけてるから……」


 無い。



 ……そんな、そんなことが。





「やはり、効果があったようですねぇ」



 いつの間にか、さっきのイケメンが目の前に立っていた。

 どういうこと!?貴方、何かしたとでも言うの!?





 イケメンは、勝ち誇った表情で言った。


「そのご婦人を、老婆でなくしてしまえば。

 きっと不思議な力も使えなくなると信じてましたよ」



 そう言いながら、顔に手を当て、表面を引きちぎると。

 その下から覗かせた素顔は……


 あの、メガネだった。




(続く)

うわあああああああああ!!!!


投稿時間よ、1分戻れぇぇぇぇえええええ!!!泣


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