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【 ババア無双 】  作者: W.A.M
第参章 『ババア、誰が為に戦う』
17/24

『バ番外編』

【 ババア無双 】


『バ番外編』





 番外編①

 ~その日の朝のこと~




「ブニャー、ゴロゴロゴロ」

「フフフ、何だい、構ってほしいのかぇ?」


 おばあちゃんが、ヘルパンサーと戯れている。

 こないだ、お母さんを供養してあげたこと、わかってるのかな。

 仕留めた獲物、持ってきたし。


「ゴロゴロゴロ……」

「おお、よしよしよし。いい子だねぇ」

 おばあちゃんの膝元で、でんぐり返ったり。喉とか鳴らしちゃったり。

 おばあちゃんも、頭を撫でてる。

 すっかり、懐いてるね。


 でもさ、

 もう一度、言うけどさ。おばあちゃんが、

 “ ヘ ル パ ン サ ー ”と戯れている。


 言い換えようか?地獄の殺し屋と戯れている。

 私の、隣で。

 おばあちゃんさ、

 自分と同じくらいの大きさの魔獣に抱きつかれてて、怖くないの?

 正直私は膝ガックガクだし泣きそうだ。


 でも逃げられない。

 本に書いてあった。獣には背中を見せたら終わりだ、って。

 精神的にも、物理的にも。

 だから精一杯笑顔を絶やさないでいるんだ。


 頭の中で絶賛放映中してる、

 ピエロの仮面を被った私が綱渡りしながら熱湯でお茶を淹れる生中継!


 …

 きょうもぽかぽかと、いいてんきだ。


 あ。

 そうだ。なかよくなってしまえばいいんじゃない?

 ねこちゃん、わたしだいすき!

 おばあちゃん、かわいいねこちゃんねこねこちゃんだね!!

 わたしもにゃんにゃんなかまいれて?

 これ、えさ?はい、おたべ?


「ガァウッッッ!!!グルル……」



 ~

 18年と10か月前、町民の父母の第二子として生を受ける。

 ステラと名付けられる。

 真面目な父と郷土愛溢れる母、能天気な気象の地元で成長。

 結果、真面目で地元大好きな能天気女子が育ちあがる。

 少女時代を、明るく健やかに過ごす。

 学業も運動も家事もごく普通だが、活動的でマイペース。

 ボディラインには自信があるが、胸部の武装はやや不足気味。

 17歳のとき同級男子に上記をからかわれて以来、異性と距離を置く。

 別に男が苦手というわけではない。

 溢れる地元愛とスマートな制服姿に憧れ、18歳で役場を受験。合格。

 春から入社し、一人暮らしを始める。入社当時は総務課勤務。

 うっかり上司に悪気の無い暴言を吐き、“ギルド”へ転属。

 ~



「こぉら、シャーしちゃだめだよぉ」

 わたし、きらわれちゃったみたい。


 ひさびさに、おとうさんとおかあさんにもあえたなぁ。


 じゅみょうと、ことばが、くちから、こぼれる。

「うふふ、もういいや、いいなぁ、おばあちゃん」



 番外編① 終




 ◇◇◇◇




 番外編②

 ~勇者が、胃部に発勁掌底を食らった理由~




 “魔族”を蹴散らしたあーし

 確かに手練れとはいえ、7体程度で俺に敵うはずない。

 早く町をの救助に行かなければ。

 だが……介抱しなきゃならんヤツがいる。


「うへへぇ、あげはたん、へあえあ」

 コイツだ……!


 床に転がっている重症勇者を起こす。

 死の調合を食らったとはいえ、勇者を名乗るならしゃんとせんか。

 とりあえずは胃洗浄だ。口内へ強引に、水をアホほど流し込んだ。


 未だぐったりとしている勇者に、肩を貸し支える。

 そして床に置いた、店員に用意してもらったタライに顔を突っ込む。

 悪いが、トイレに連れていく暇はない。

 顔面がタライに入り込むように下がった。



「あげはたん、しろ」

 あーはいはい。わかったわかった。

 とりあえず胃の中の物全部戻そうな、ほら指を喉に突っ込め。


「しろぉ」

 あー何言ってるかわからんが、さっさと戻……


 やっと意味がわかった俺の、顔面がぁっと熱くなり。

 気付けば俺は、抱える男の鳩尾下あたりに発勁掌底していた。

 胃の内容物が周囲に飛び散った。

 手加減は出来ているといいな。自信は無い。


「ゴメン。

 コイツに5分に一度くらい、叩き起こして水飲ませてあげてね。

 どれだけ苦しもうとも、ね。

 あと、掃除費用はコイツに請求していいから」


 近くの店員さんらしき人間に、にこやかに伝える俺。

 震えながらただ頷くだけの店員さん。ドウシテダロウナー。



 そして店の外へ駆け出す俺。

 何故だろう、涙もちょちょぎれる。

 ああくそ、やっぱりスカートはだめだ。

 可及的速やかに、ズボンに穿き替えなきゃ。


 それにしても、

 どうして俺、慣れないスカートなんか穿いてんだよ……



 番外編② 終

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