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異説・東方紅魔郷  作者: 小湊拓也
3/9

第3話 捕食者の館

原作 上海アリス幻樂団


改変、独自設定その他諸々 小湊拓也

 紅魔館の、先兵と言うか門番のような役目を担っているのであろう。

 人間の若い娘に見えるが、妖怪であるのは間違いない。頭にナイフが刺さったまま、見えない足場を蹴るようにして空中を元気に走っている。時には跳躍し、踏み込み、拳や蹴りを霊夢に叩き込んでゆく。

 それらをことごとく回避しながら、霊夢はしかし反撃を繰り出す事は出来ずにいる。

 別方向から、もう1人の娘が斬りかかっているからだ。

 こちらは、紅魔館のメイドであろう。優美な五指でナイフを高速回転させ、冷たい斬撃の光輪を発生させている。

 襲い来る光輪を、霊夢は左右の陰陽玉で迎撃した。

 博麗の巫女を防護する形に旋回しながら、2つの陰陽玉が光弾を速射する。

 その弾幕をかわしながら、紅魔館のメイドは人数を増やしていった。1秒前、0.8秒前、0.62秒前、0.5秒前、0.3秒前、0.04秒前……様々な時間における自身の姿を、同時に出現させているように見えた。

 何人ものメイドが、一斉にナイフを投げた。

 様々な方向から、刃の豪雨が霊夢に向かって降り注ぐ。

 暴風のような蹴りを、お祓い棒で受け流しながら、霊夢は身を翻した。豊かな黒髪が、白い付け袖が、ふわりと弧を描く。

 無数の呪符が、全方向に投射されていた。

 それらがナイフの豪雨と激突し、霊夢の周囲を火花で満たす。

 火花の嵐から、霊夢がふわりと脱出した。

 門番とメイド。紅魔館の女妖怪2匹と間合いを隔てて睨み合いながら、霊夢は呼吸を整えている。かなり息が上がっているように見えた。

 ここまで消耗している霊夢を見たのは久しぶりかも知れない、と魔理沙は思う。

 加勢すべき、なのであろう。

 しかし魔理沙も今、睨み合っている最中であった。この場にいない、3人目の敵と。

 紅魔館所属の、3体目の妖怪。

 その眼光を、魔理沙は確かに感じていた。紅魔館内部のどこかから、こちらを睨んでいる。

「ごめん……もしかしたらさ、入り口が崩れたりとかで出られなくなった?」

 箒にまたがり滞空したまま、魔理沙は詫びてみた。

 空中に浮かぶ、5冊の魔導書が、その返事の如く弾幕を放射する。

 5色の光弾の嵐が、霧の湖の上空で吹き荒れる。

 回避する気を失くしてしまいそうなほど美しい色彩に、魔理沙は思わず見入った。

 辛うじて自我を取り戻し、箒を駆る。

 魔理沙は全身で風圧を押しのけながら、凄まじい魔力の結晶が全身をかすめて行くのを感じていた。

 5色の光弾、その1つ1つが、妖精の弾幕とは比べ物にならない破壊力を有しているのだ。

 全てを辛うじてかわしながら、魔理沙は箒の速度を上げていった。紅魔館へと向かってだ。

「出られなくなった……なら、出してやろうか」

 八卦炉が、ふわりと眼前に浮かぶ。

「瓦礫も何もかも、マスタースパークで吹っ飛ばしてやるぜ……っと!?」

 横合いから、弾幕が襲いかかって来た。吹き付ける突風のように。

 魔理沙は斜め上方へと箒を駆り、それを回避した。

 5色の光弾、ではない。

 紅魔館に潜む魔法使い、とは別の襲撃者であった。

「残念、かわされたー」

 1人の少女が空中で、十字架のように両腕を広げている。黒い服、赤いリボン、そして頭に刺さったナイフ。

 魔理沙を湖に叩き落としてくれた妖精が、声を上げた。

「ルーミア!」

「やっほー、チルノ」

 ルーミアと呼ばれた少女が、暢気に手を振っている。

 どうやらチルノというらしい妖精は、吹き荒れる5色の弾幕から大妖精を庇うようにしていた。

 妖精は再生する、とは言っても、この魔法使いの光弾は危険だ。直撃を喰らえば、肉体のみならず自我までも消し飛んでしまいかねない。再生したところで、それはもう現在のチルノとは全く別の存在ではないのか。

 早く逃げろ、と魔理沙は叫びそうになったが、この弾幕嵐の中で迂闊に動くのは逆に危険だ。

 紅魔館のメイドが、ルーミアに声を投げた。

「雇われ妖怪のルーミア、お前の仕事は済んだのかしら?」

「うん。お屋敷の妖精メイドにね、全部渡してきたよー」

「そう。では、もう1つ仕事をあげます。その白黒の魔法使いを斃しなさい。食べていいから」

「わーい!」

 無邪気に喜ぶルーミアに、魔理沙は問いかけてみた。

「……とりあえず頭にナイフ刺してみるのが、この辺の妖怪どもの間で流行ってるのか? 人里の子供とかが真似したら、どうするんだよ」

「その血を、お嬢様に献上する。それだけよ」

 紅魔館のメイドが言った。

「この幻想郷は、紅魔館の牧場・農場になるのよ。お前たちを、お嬢様のために収穫してあげる。光栄に思いなさい」

「外の世界でやってよね! そういうのは!」

 霊夢が怒鳴る。

「それとも……そういう事をやり過ぎて、外の世界に居られなくなった口? だからって幻想郷に来られても迷惑なだけ」

「すぐに慣れるわ」

 紅魔館のメイドが、微笑んだ。

「この紅い霧の中で、紅魔館の支配を受け、お嬢様に血を捧げる……その日々に、お前たちはいずれ慣れてしまう。それが統治というもの、何も心配する事はないのよ」

「お前……妖怪みたいな事を言うが妖怪じゃない、人間だな」

 魔理沙は言った。

「その心のぶっ壊れ方は、人間……おおっと!?」

「いただきまーす!」

 十字架のように両腕を広げながら、ルーミアが弾幕をばらまいた。

 直後、ルーミア自身も突っ込んで来た。可愛らしい口が凶悪に開き、白く鋭い牙が剥き出しになる。

 光弾の嵐と、牙の突撃。襲い来るそれらの進行方向から、魔理沙は離脱した。箒を駆り、高速で上空へと向かう。

 ルーミアが追って来た。両腕を広げ、くるくると楽しげに飛行しながらだ。

 その回転が、闇を生んだ。魔理沙は、そう感じた。

 直後、何も見えなくなった。突然、夜になったかのように。

 飛行に慣れない頃は、空中で速度を上げる度に視界が暗転し、気絶しかけていたものだが、それとも違う。

 魔理沙自身の体調に問題はない。なのに真っ暗で何も見えない。

 周囲が、闇に包まれていた。

「私の闇に囚われたら、もう絶対に逃げられなーい」

 ルーミアの声が、近づいて来る。

「さて食べるぞー……あれ、どこかなー」

「自分の作った闇の中で、自分だけ目が見える……ってわけじゃあないのか、潔い奴だぜ」

 箒に跨ったまま、魔理沙は指を鳴らした。火花が散り、星の形の光となった。

「けど私には、お前の位置がわかるんだぜ!」

 星型の光弾を、魔理沙は闇の中へと投げつけた。

 見えない相手に、それは命中した。

 闇が消え失せ、目を回しながら墜落して行くルーミアの姿が見える。

 箒の上から、魔理沙は声を投げた。

「私、鼻がいいんだぜ。キノコの煮加減を、匂いで判断しなきゃいけない場合もあるからな……お前、血生臭いぞ。人間を喰い殺してきたばっかりだろ。5、6人くらい」

「わかるのかー……」

 湖に落下し、沈んでゆくルーミアを、チルノと大妖精が空中へと救い上げている。

 そこへ、5色の光弾が襲いかかる。

「お前……!」

 息を呑みながら、魔理沙は箒を駆った。

 身体が、勝手に動いていた。



「ちょっと魔理沙、何やってんのよ!」

 博麗の巫女が叫ぶ。

 どうやら魔理沙というらしい白黒の魔女は、しかしそれで止まるような分別者ではなかった。

 チルノと大妖精、それに雇われ妖怪のルーミア。

 これら3名の眼前で、魔理沙は5色の光弾の直撃を喰らっていた。

 盾になったのだ。人間の魔法使いが、妖精や妖怪の盾に。

 紅美鈴は、まずは感心した。

「ほう……原形を、とどめているとはね」

 鮮血の飛沫を吐き散らしながら、魔理沙は霧の湖へと落下してゆく。

 内臓が何箇所か破裂しているようだが、まだ死んではいない。

 魔法使いらしくと言うべきか、魔力による防御を常時、己に施しているようであった。

 そうでなければ今頃、人間の肉体など跡形もなくなっている。

 博麗の巫女が、美鈴も咲夜もいないかの如く離脱飛行を敢行し、魔理沙の方へと向かう。そして、湖面に激突する寸前だった白黒の魔女を抱き止める。

 美鈴は紅魔館の方を向き、呟いた。

「さすが……容赦ないですね、パチュリー様」

 白黒の魔女が、このような行動に出る事を、パチュリー・ノーレッジは予測していたのか。

 予測していた、わけではないだろうと美鈴は思う。

 魔理沙が、妖精たちを見殺しにするようであれば、それはそれで一向に構わない。チルノも大妖精もルーミアも、無駄に砕け散ってそれで終わり。魔法使い同士の弾幕戦は、その後も何事もなく続く。

 パチュリーは、そう思っていたに違いない。だから、とりあえず妖精2人とルーミアに狙いを定めて見た。

「ああ本当……あの人すごく頭いいけど、ちょっとついて行けない所あります。私がバカだからでしょうけど」

「そうね。こんなもの刺してみても、その頭は良くならないわね」

 言いつつ咲夜が、美鈴の頭からナイフを引き抜いた。

 突き刺さった時と同じ快感が一瞬、美鈴の脳を揺るがしたが、それはすぐに消えた。

「そ、そんな事言わないで……また刺して下さいよう」

「愚かな事を言っていないで、博麗の巫女を取り押さえなさい」

 咲夜が、その綺麗な片足で、美鈴の大きな尻を蹴りつけた。

 快感に身を震わせながら美鈴はゆらりと飛行高度を下げ、偉そうに腕組みなどして見せながら、博麗の巫女を見下ろした。

「ここまでだよ博麗霊夢。最初に言った通り、お前を美味しく喰い殺してやりたいとこだけど。咲夜さんが、お前の事を気に入ったみたいだからね……私も、お前らの事は嫌いになれない。食べてもいいけど仲良くもしたい。だから」

「何度でも言うわよ。紅魔館に、忠誠を誓いなさい」

 咲夜も言った。

「その白黒の魔女も、長くは保たないでしょうけど心配御無用。お嬢様が、眷属として甦らせて下さるわ」

「魔理沙を……吸血鬼にでも、しようっての……」

 その細腕で瀕死の魔女を抱き上げ、抱き締めながら、博麗霊夢は声を震わせた。

 こちらを睨む瞳の中で、怒りの炎が燃え猛っている。

 燃える眼差しだけが、そこに残った。美鈴はそう感じた。

 残留思念のような怒りに美鈴が気圧されている、その一瞬の間に、霊夢はその場を高速離脱していた。

 魔理沙を抱き上げたまま、逃げて行く。人間1人を運んでいるにしては、かなりの飛行速度である。

「逃がしはしない……」

 空中を駆け出そうとした美鈴の眼前で、妖精たちが舞った。キラキラと、鱗粉のような弾幕をぶちまけながら。

「おっと……お前ら?」

「……私、あの人たちに言ったんです。紅魔館の方々を、刺激しないで欲しいって」

 乱れ舞う妖精たちの中心で、大妖精が空中に佇んでいる。

「でも、もう遅いですよね……貴女たち紅魔館の方々、大いに刺激されてしまいましたよね」

「刺激された! 私たちは、もう誰にも止められない。この幻想郷を征服する」

 美鈴は、左掌に右拳を打ち込んだ。良い音がした。

「私たちに逆らわなければ、酷い事にはならないよ。ただ、あの紅白と白黒だけは叩き潰す。全力でね」

「全力で貴女たちが暴れ出したら、結果的に幻想郷は酷い事になります。私たち妖精が、その片棒を担ぐわけにはいきません。そして博麗の巫女には……貴女たちを刺激してしまった責任を取って、この異変を解決してもらいます」

 大妖精のたおやかな手が、ふわりと舞った。

 それを合図に、弾幕が来た。上下左右前方、あらゆる方向から押し寄せて来る。

 妖精たちが一斉に、光弾の嵐を放出していた。

「こいつら……!?」

 美鈴としては、後方へ避けるしかない。空中を蹴って、飛び退る。

 煌めく弾幕が、眼前を吹き荒れて行く。

 霧の湖の上空を飛び交いながら、妖精たちは弾幕の嵐を放射し続けた。

 妖精とは、何と楽しそうに弾幕をばらまく生き物であるのか。美鈴は、そんな事を思った。

 思っている間に、全てが消え失せた。色とりどりの光弾の煌めきも、それらを発しながら空中を舞い踊る妖精たちの姿も。

 紅白と白黒、2人の少女もだ。

 霧の湖に、静寂が戻った。

 キラキラと逃げ去って行く妖精たちの姿が、遥か遠くに見える。

 美鈴はもう1度、左掌に右拳を打ち込んだ。

「……やられた。こんな見事に、目くらましを喰らうとは」

「逃げられてしまったわね。もっとも逃げた先は間違いなく博麗神社」

 咲夜が言った。

「紅魔館に、堂々と牙を剥いた者たちを」

「ええ、放置しておくわけにはいきません。私、追撃します。ひとっ走り博麗神社へ殴り込んできますよ」

 空中を駆け出そうとして、美鈴は立ち止まった。

 妖精が1人だけ、そこにいた。小さな身体で空中に立ち塞がり、美鈴の行く手を阻んでいる。

「チルノ……お前、何をやっているんだ」

 美鈴は、まず微笑みかけてみた。

「今は私、お仕事の時間なんだよ。あの紅白と白黒を叩き殺したら、また遊んでやるから」

「あたい、遊んでるわけじゃないよ美鈴」

 チルノは言った。

「紅白はともかく……白黒の方は、あたいたちを守ってくれた。だから」

「お前は……妖精の分際で、随分と強い自我を持っているのね」

 咲夜が微笑んだ。

「知っているかしら? お前たち妖精が、たとえ粉々に砕け散っても即座に再生する……そんな事が出来る理由を」

 あたいたちが最強だからだ、と普段のチルノであれば即答するところであろう。

 だが今のチルノは、怯えている。咲夜の冷たく美しい笑顔に、威圧されている。

「それはね、お前たち妖精が、失われてはならないものを何も持っていないから……というのは、まあ私の調査結果ではなく、ある御方からの受け売りなのだけど」

 パチュリー・ノーレッジの事である。

「チルノと言ったわね。お前は今、かけがえのないものを持っている。それは1度、命が尽きれば永遠に失われてしまうかも知れないもの……お前がここで砕け散り、いずれ再生したとしても、それは失われたままかも知れないのよ。だから大切にしなさい。紅魔館に刃向かっては駄目」

「あ……あの白黒の奴を、こっ……殺さないで、くれるのか……」

 チルノが、勇気を振り絞っている。

「それなら、あたい逆らわないよ……でも、あいつを……こ、殺そうって言うんなら」

「……見て見ぬ振りをしな、チルノ」

 美鈴は言った。

「それは恥ずかしい事じゃない。生きていく上で、とても大切な事なんだ」

「……それをやったら、あたいの……その、かけがえのないもの? がダメになっちゃう気がする……」

 チルノが言った。

 美鈴の頭に、かっと血が昇った。

「わからない事、言うんじゃあない! お前が、そこをどいてくれないと……私はお前を、ぶち砕かなきゃいけなくなるんだぞ。この拳で、チルノを……お前そんな事、私にさせようって言うのか」

「あたい、美鈴の味方するって約束した。だけど気がついたら……こんな、何か美鈴の敵みたいになっちゃってる」

 まっすぐに、チルノは美鈴を見つめている。

「だから……だからね、美鈴」

「……妖精のくせに、けじめでも付けようってのかぁああああッ!」

 怒声と共に、美鈴は踏み込んでいた。

 氷が、キラキラと飛び散って消えてゆく。

 チルノは、跡形も残っていない。

 打ち込んだ右の拳で美鈴は、チルノを粉砕した手応えを握り締めていた。

 その拳に、咲夜がそっと手を触れる。

「博麗神社に殴り込む……そんな気持ちも、妖精と一緒に砕け散ってしまったようね」

「……私、紅魔館の敵を逃がしてしまいました。お嬢様に怒られますよね」

「私が取りなしてあげる。今日はもう貴女、これ以上の戦いは無理でしょう」

「外の世界の人間どもなら、あと1万人だって殺せますけどね……」

 人間など、いくら殴り殺しても手応えなど感じない。

 だが、チルノを打ち砕いた感触は残っている。右の拳に、しっかりと。

 美鈴は言った。

「咲夜さん……妖精って連中、やっぱり侮れないです」

「……そうね」

 紅い霧を、咲夜は見上げた。

「パチュリー様の、おっしゃる通り……あれは幻想郷そのものと言っても過言ではない種族。妖精を御する者こそが、幻想郷を支配する。お嬢様に御理解いただければ良いのだけど」



 博麗神社に、闇が飛来した。

 はたから見れば、そのような有り様であろう。

 暗黒そのものが球形に凝り固まってフワフワと飛翔し、社務所の庭先にゆっくりと着地する。

 闇の球体が、ぼんやりと消滅した。

 4人の少女が、そこにいた。博麗霊夢と、霧雨魔理沙。それにルーミアと大妖精。

 瀕死の魔理沙を、縁側にそっと横たえながら、霊夢が言った。

「……助かったわ、ルーミアとかいうの。あんたの闇、ものを包んで運んだりも出来るのね」

「そんなの朝飯前だけど、それより魔理沙は大丈夫かなー?」

 ルーミアにとって、この霧雨魔理沙という少女は、捕食対象ではない数少ない人間の1人になったようである。

 動かぬ魔理沙を、大妖精は俯き加減に見下ろすしかなかった。

「……私たちの……せいで……」

「1度だけ言っておくわね。魔理沙はただ、自分の意思で馬鹿をやらかしただけ。あんたたちが責任感じる事じゃないから」

 霊夢が言い放つ。

「……大妖精、あんたにも助けてもらっちゃったわね」

「私、何にもしてません……皆が、妖精の皆が……」

「あの連中……この神社で、ちょっと悪戯するくらいなら見逃してあげる事にするわ」

 霊夢が苦笑する。

 妖精たちは、あのまま逃げ散って行った。紅魔館がある限り、霧の湖に帰る事は出来ない。

 そして、あの少女も。

(チルノちゃん……)

 その名を、大妖精は口には出さない。

 今ここで最も気遣うべきは、チルノの安否ではなく魔理沙の生死だ。

「一か八か……あれを使うしか、ないわね。ちょっと待ってて」

 霊夢が言い残し、社務所へと入って行く。社務所と住居を兼ねているようだ。

 屍の如く縁側に横たわる魔理沙を、ルーミアがじっと見つめる。そして言う。

「大ちゃん……紅魔館は、とっても恐い所だよー」

「そうね……この人たちにも、大人しくしていて欲しかったけど」

 この霧雨魔理沙という魔女は、運良く一命を取り留めて元気になったら、また紅魔館に戦いを挑んでしまうのだろう。博麗の巫女と共にだ。

 確かに、と思いつつ大妖精は空を見上げた。禍々しい真紅の霧に満ちた空を。

 誰かが、この異変を解決しなければならない。太陽の光を必要としているのは、人間だけではないのだ。

 草も木も花も、日の光がなければ生きてゆけない。自然の力そのものである自分たち妖精が、それで無事に過ごせるわけはない。

「うっ……ぐ……」

 こぽっ、と血を吐きながら魔理沙が呻く。

「お前……出て来いよ、そこから……」

 この場にいない何者かに、語りかけている。

 自分の命など、どうでも良いのか。大妖精は、そんな事を思った。

 人間は、妖精とは違う。砕け散って再生する事など出来ない。

「なのに、貴女は……私たちを、助けてくれた……」

 大妖精の声は、いまの魔理沙には届かない。

「私、わかりません……貴女たち、人間という方々が……」

「魔理沙で人間を判断されたら困るのよね」

 霊夢が、縁側に戻って来た。盆で、お茶を運んで来たところである。

 否。湯飲みの中身は、どうやらお茶ではない。湯気と共に、何やら怪しげな匂いを発している。

 大妖精は訊いた。

「それは……お薬、ですか?」

「もしかしたら毒かも知れない。ちょうどいいから、魔理沙で実験してみるの」

 実験台にされる運命も知らず、魔理沙が呻く。小刻みに血を吐きながら。

「出て来て、さ……私に、もっと見せろよ……お前の、綺麗な弾幕……」

「息はある、みたいね。良かった、口移しで飲ませてあげる必要はなさそう」

 霊夢が、魔理沙の血まみれの口に、湯飲みの中身をとぷとぷと流し込む。

 魔理沙の細い喉が、こくん……と起伏した。そして。

「うっぐ……ぐぶっ! げぇっ、な、何だこりゃぐぇえええええええええ!」

 腹を抱えて悲鳴を吐きながら、魔理沙はのたうち回り、縁側から庭へと転がり落ちた。

「はっ、はらわたが! 破裂した内臓がぁ、壊れた物みたく麻酔もなしに修理されてる感じがするぅ! なっ治ってく、ってより直ってく! 痛い! 痛い痛い痛いって、ぐぎゃあああああああ!」

「人里の薬屋さんで、もらったの。お試し品なんだって」

 霊夢が言った。

「その薬屋さんはね、竹林でもらったって言ってたわ。何かちょっと恐い目に遭ったみたいで、詳しい話は聞かせてもらえなかったんだけど」

「きっ、聞いたことあるぜ……竹林の奥に棲んでるっていう、怪しい連中か……」

 全身で地面を擦って転げ回り、痙攣しながら、魔理沙が呻く。

 幻想郷で竹林と言えば『迷いの竹林』である。自然というものを知り尽くした妖精ですら、迂闊に入り込んだら道に迷う、と言われている場所だ。

 現にチルノが1度、霧の湖から少し遠出をして、うっかり迷い込んで大変な目に遭った。

 チルノ曰く、その時は、とある親切な人間が助けてくれたらしい。

(その人は、今……チルノちゃんを、助けてはくれないの……?)

 心の中で、大妖精は呟いた。

 チルノは今、ここにはいない。どこにいるのか。

 1人、霧の湖に残ったのか。紅魔館の、恐ろしい妖怪たちの面前に、1人で。

(……そんなわけ、ない……湖から竹林に迷い込んじゃうような、チルノちゃんだもの……逃げる途中で、うっかりはぐれちゃっただけ……そうだ、捜しに行かなきゃ)

「とにかく危険なお薬でね、普通の人間が飲んだら死んじゃうって」

 霊夢の説明は続く。

「でもまあ、普段から変なキノコとか食べてる魔理沙なら平気かなって」

「へ、平気じゃないぜ……死ぬかと思ったぜ。実際、死にかけてたけど」

 魔理沙が、弱々しく起き上がる。

「あー、でも治った……助かったぜ霊夢、ありがとうな。貴重な薬だったんだろ?」

「お礼なら、そのお薬を作った人にね。まあ誰なのかは私も知らないけど」

「竹林の奥に、妙な奴らが棲んでるって噂……どうやら本当みたいだな」

 その噂は、大妖精も聞いた事はある。

「そいつらが作った薬、か……ま、ありがたいのは確かだけど。何だか私、薬を作った奴の笑う顔が見える気がするぜ。実験動物みたく私を観察しながら、そいつは冷たく笑ってる。いつか1度は会ってみないとな」

「そうね。今のところ、あの紅魔館の連中みたいに悪さをしてるわけじゃないみたいだけど……」

「チルノちゃんが」

 何かを考える前に、大妖精は言葉を発していた。

「いないんです……はぐれちゃった、のかも……」

「自分の意思で、ね」

 大妖精の目をしっかりと見据えながら、霊夢が告げた。

「私、見たのよ。貴女たちが目くらましをしてくれてる最中、あの子は1人で抜け出して……霧の湖に残ったの。私たちを、逃がすためにね。私は、あの子を見殺しにした」

 霊夢は、動けぬ魔理沙1人を守っていた。紅魔館の妖怪たちが相手では、それが精一杯だったのだ。

 そして魔理沙が動けぬ身となったのは、大妖精たちを守ったからだ。

「恨んでくれていいわ……私はね、妖精の1人も守れない博麗の巫女よ」

「そんな事……」

 大妖精は、ふわりと飛翔した。

 こうしてはいられない。魔理沙の生存は確認した。次は、チルノだ。

 チルノを、迎えに行かなければ。

「駄目……」

 ルーミアが、大妖精にしがみついて来た。

「大ちゃん、駄目だよ……紅魔館は、恐いんだよー」

「ルーミア……」

「咲夜さんは恐い人だよ、逆らっちゃ駄目なんだよー」

 ルーミアは、ぽろぽろと泣き出していた。

「咲夜さんより、もっと恐い誰かがね……紅魔館にいるの……逆らっちゃ、駄目だよー……」

「それじゃ……チルノちゃんは? ねえルーミア……チルノちゃんは、どうなるの……?」

 大妖精は、涙を流す事すら出来なかった。

 チルノが、いなくなる。

 博麗の巫女と対峙した時も、確かに恐ろしかったが、それを遥かに上回る。涙腺も凍り付く恐怖だった。

「チルノは……チルノはねぇ……うっく、うわぁああああんチルノー!」

「チルノちゃん……」

 泣き叫ぶルーミアを、大妖精は呆然と抱き締めた。他に出来る事などなかった。

 その様を霊夢は、ただ無言で見つめている。微かに、唇を噛んでいるようである。

 魔理沙は、ぽつりと言った。

「……あいつなら、大丈夫だぜ。ほら」

 霧が生じた。

 空を埋め尽くす紅い霧とは違う。凝結した水分であるところの、純然たる霧。

 それが、さらに凝結してゆく。そして凍結してゆく。霧が水滴へ、そして氷へと変わってゆく。

 ピキピキと膨張してゆく、その氷が、声を発した。

「ふぉおおおおお、あっ! あたい、ふっかぁあああああああつ!」

「チルノちゃん!」

 氷がキラキラと砕け散った。チルノが、そこにいた。

 大妖精は、ルーミアと競い合うように抱き付いて行った。

「うわーんチルノ! チルノが帰って来たのかー!」

「馬鹿! チルノちゃんの馬鹿!」

「いやー、美鈴のパンチは効いたのだ。あたいの全部が吹っ飛んじゃった」

 紅美鈴の事を、チルノは覚えている。そして。

「だけど。大ちゃんとルーミアの声が聞こえたから、帰って来れたんだ!」

「チルノちゃん……私たちの事、覚えてるんだよね!?」

「ふっふふふ。大ちゃんもルーミアも、あたいをバカだと思ってるだろうけど」

 空中で、チルノは偉そうに腕組をしている。魔理沙を見下ろしながらだ。

「皆の事、忘れるわけがない。そして、そこの白黒! お前の事も覚えてるぞ。大ちゃんを捕まえて、やらしい事をしようとしてた奴! だけどまあ、あたいたちを助けてくれたから許してやろう。もう大ちゃんに触るなよ」

「霧雨魔理沙だ。よろしく、チルノ」

 魔理沙が、大きなとんがり帽子を片手で脱ぎ掲げた。

「お前たち妖精には、もっともっと触れてみたいんだぜ。本当に興味が尽きない。霊夢も、そう思うだろ?」

「こんな短時間で、自我を維持したまま完全再生……」

 霊夢が、苦笑気味に息をついた。

「妖精って連中、ますます手に負えない生き物になりつつあると。そういうわけね」

「博麗の巫女! お前とも、いつか決着をつけるぞ」

「……今日は、私の負けね。本当にありがとう、妖精たち。それに小妖怪」

 霊夢が微笑んだ。その笑顔が、ルーミアの方を向いた。

「で……あんたは、これからどうするの? 紅魔館に雇われ続けるなら別にいいけど、それだといずれ私にぶちのめされる事になるのよ」

「は、博麗の巫女。私はあんたも恐いけど、紅魔館のお嬢様も恐いなー。会った事ないけど、咲夜さんを見てれば、どれだけ恐い人なのか何となくわかる」

 ルーミアが正直な事を言っている。

「博麗の巫女は勝てるのかー?」

「……そう、よね。結局は私があの連中を退治しないと、あんたら妖怪どもは紅魔館の手下になるしかないわけで」

「紅魔館の、お嬢様の手下……あの魔法使いも、そうなのかな」

 紅い空を見上げる魔理沙に、霊夢が言った。

「……別に、私に付き合う事はないのよ魔理沙。死ぬほど痛い目に遭ったばっかりなんだから、無理しない方が」

「無理をしなきゃ、あいつには勝てないんだぜ」

 魔理沙が見据えているのは、空ではない。紅魔館にいる、まだ顔も見えぬ何者かだ。

「なあ霊夢、メイドだのお嬢様だのはお前に譲る……あの魔法使いは、私がもらうぜ」



 くしゅん、と可愛らしいくしゃみが聞こえた。会話もだ。

「……大丈夫ですか? パチュリー様。このような場所で、お風邪を召されては」

「平気……空気の悪さなら、図書館だって似たようなものよ」

「いやー、良かったですねえパチュリー様。図書館から出られて」

「助かったわ美鈴、お疲れ様」

「まったく、とんでもない力仕事をさせられましたよ。あーお腹空いた」

 誰かが、むしゃむしゃと何かを食らっているようだ。

「ん〜、生臭くなくて食べやすい……咲夜さんの血抜き技術は、やっぱり天下一品ですねえ。まあ肉の品質そのものは最悪ですけど。外の世界には、こんなのしかいないんですねえ」

「美鈴のくせに舌が肥えてきたとでも? あの雇われ妖怪はね、美味しい美味しいと言って平らげたわよ」

「あんなのと一緒にしないで下さいよー」

 若い娘が、どうやら3人いる。1人は、あのメイドだ。

 薄暗い場所だった。

 いや、俺の視覚が正常に働いていないだけか。目がかすんで、よく見えない。

 本庄も、西田も久我山も市原も、どうやら逆さまに吊るされているようだ。

 俺はどうなっているのか。ぼんやりと意識はある、だが手足は動かない。声も出ない。目もよく見えない。

 嗅覚は、辛うじて生きている。血生臭さを、うっすら感じる事は出来る。そして耳も聞こえる。

「ひぃ……た、たすけ……て……」

 どうやら、戸塚の声だ。腹にナイフが刺さっていたようだが、まだ死ねずにいるらしい。

「時間停止を解除した瞬間、出て来る言葉が命乞いとはね」

 メイドが、冷たく魅惑的に嘲笑う。

「私、命乞いをしている男を見ると……丁寧にね、切り刻んであげたくなるのよ」

「あっははは。咲夜さんに切り刻んでもらえるなんてぇ、この幸せ者っ!」

 何かが宙を舞い、落下して床に転がった。音が重い。

 続いて、光が飛んだ。

「こら美鈴。勝手に手刀で首を刎ねたら駄目でしょう?」

「あふンっ……さ、咲夜さんのナイフがぁ……また私の頭にいぃ……ッ」

「ああもう、無駄に血が流れ出してしまったじゃないの」

「き、汚い血液ですねえ……こんなもの、お嬢様に飲んでいただくのは……心苦しいですねえ……」

「そこが咲夜の腕の振るいどころよ美鈴。こんな脂臭い血液を、ワインのような澄んだ赤色に仕立て上げる。いつもながら見事なもの……ところで血液以外はどうするのかしら? 大量に吊るした、この肉と。そこに固めてある臓物と」

「そうですね。全て、美鈴の餌にしても良いのですが」

「勘弁して下さい。こんなの、こんなには要りませんよぉ……」

「それなら私がもらう事にするわ」

「へ? パチュリー様が、こんなものお召し上がりになる……わけないですよね。ああ、それと同じようなものを作るんですか」

 それ、というのは、どうやら俺の事だ。

 俺は今「もの」であるらしい。

「大したもんですよ、こんな状態で生きてるんですから……でもパチュリー様、こんなの2つも3つも作ってどうするんですか? ペットにするには、あまりにも可愛くなし。労働の役にも立ちそうになし」

「弾幕の盾、程度の役には立てて見せるわ」

 弾幕。またしても、その言葉が出た。

 あの巫女も、そこのメイドも、雇われ妖怪も、同じ単語を口にしていたものだ。一体何であるのか、俺にはわからない。

 弾幕。何と不吉で剣呑で、禍々しく恐ろしい単語であろうか。

「いくらかでも紅魔館の戦力になれば、レミィも文句は言わないでしょう」

「パチュリー様は本当、あんな綺麗な弾幕を撃てる一方で、こんな醜いおぞましいものを作るのもお上手なんですよねえ」

「……私の本領はね、どちらかと言うと弾幕よりもこちらの方よ。外の世界では、随分と忌み嫌われたもの」

「はい……だから、外の世界は早急に滅ぼすべきだと思います……」

 若い娘がもう1人、場に入って来たようだ。

「それはそれとして……あのう、皆様」

「どうしたの、小悪魔」

「はい、パチュリー様……あのですね、あの……お……おじ……」

「おい、しっかりしろ小悪魔。この世に王子様なんていないんだよ。男なんて、この連中と同じようなのばっかりなんだから。女はね、自力で幸せをふん捕まえないと……わっ私は、咲夜さんと一緒にいられて……咲夜さんが時々、ぶちのめしたりナイフ刺してくれたりしたら幸せかなぁ、なんて……」

「誰が聞いたそんな事!」

「落ち着きなさい咲夜……ふふん、小悪魔の言いたい事はわかったわ」

 小さな羽音が聞こえた、ような気がした。あまり大きくない鳥、であろうか。

 それが、群れを成している。

「お嬢様が、お目覚めになられた……と。そういう事ね」

「は、はい! もう……すでに、こちらにお見えですぅ……」

 否、鳥ではない。

 蝙蝠の群れ、であった。

 不吉な羽音がピタリと止み、やがて声が聞こえた。

「太陽の光が失われれば、この世も少しは静かになる……そう思っていたのだけど」

 幼い、女の子の声。俺には、そう聞こえた。

「実に騒がしい事。目が覚めてしまったわ」

「……申し訳ございません、お嬢様」

「ふふっ、咲夜が謝る事ではなくてよ。この幻想郷は、随分と賑やかな場所のようね」

 違う、と俺は即座に思い直した。

 今、目の前にいるのは、幼い女の子などではない。

 人間ですらない。

 この場にいる、得体の知れぬ女どもの誰よりも、人間から遠い存在だ。

「賑やかなのは、嫌いではないわ。もちろん限度はあるけれど……度を過ぎていると感じたら、まあ私が静かにさせれば良いだけの事」

 もう1つ、俺は思った。

 人間は、万物の霊長などでは絶対にないと。

「それは私どもの役目でございます。お嬢様の御手を煩わせるなど……」

「ふふっ、ねえ咲夜……それに美鈴もパチェも、怒らないから正直に言ってご覧なさいな」

 食物連鎖において、人間よりも上位に立つ生物が、この世にはすでに存在していたのだ。

 それが、人間にもわかるように言葉を発している。

「賑やかで騒がしい、招かれざる客を……貴女たちが総出で迎えて、いくらか不覚を取ったのでしょう?」

「……申し訳、ございません」

「お嬢様には、お見通しですか。でも一応は撃退したんですよ? 私じゃなくてパチュリー様が、ですけど」

「私は、小手調べをしただけよ」

 人間よりも上位に立つ何者かが、ころころと愉しげに笑った。笑い声だけ聞くと、無邪気な少女でしかない。

「動かない大図書館が、図書館に閉じ込められてしまったのねえ」

「レミィ、貴女……随分と早くから目覚めていて、戦いを見物していたのね?」

「怒らないでパチェ。貴女には感謝しているのよ? 小手調べで済ませてくれて……貴女が本気で弾幕戦をやったら、この紅魔館が地上から消えて無くなるわ」

「……お褒めにあずかった、という事にしておきましょうか」

「さあ、さあさあ。この私が目覚めたという事は、紅魔館においては今が朝よ。咲夜、朝餉の支度をなさい……と、命ずる前から私のための血を用意してくれたのね。さすがだわ」

「お嬢様、本当に申し訳ございません。あちらの世界では相変わらず、このようなものしか手に入らず」

「……仕方がないわね。人間の、心も魂も血も腐らせてしまう世界だもの」

 無邪気な、幼い少女の形をした何者かが、どうやら俺を見つめている。

「貴女たちを手こずらせた、あの巫女と魔女の血を飲んでみたいわ……いつか、ね。それまでは仕方がない、ここにあるもので我慢する事にしましょう」

 金を返せない連中を、縛り上げて地に這わせたり、穴に埋めたりした。

 そいつらを、俺はきっと、こんなふうに見下ろしていたのだろう。

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