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一茜の歌集(にのまえあかねのうたノート)

一茜の歌集(にのまえあかねのうたノート) 蓬生(よもぎう) 【春の詩企画】

作者: 一 茜

それではいってみよー



夜火(やか)()

()えぬ(はな)

麝香(ざこう)より

(くら)べて(まさ)

らうたし色香(いろか)



《私の真面目訳》


夜の光がないので

見ることができない花(の匂い)は

強い(かお)りの麝香の香料よりも

比べると勝っている

可愛らしい匂い、そこから可愛らしい花の色が想像される



《脚色した現代語訳(語り口調)》


夜なのに炎はないので、花の姿は見えません。でも、麝香にも勝っているその匂いから、私はしっかりとその存在を感じていますよ。「や・え・ざ・く・ら」さん。



《一応の解説》


夜火(やか)

夜の火のこと。


え〜(否定の語句)

今回は「ぬ」が否定の助動詞「ず」が活用した形で、「え」と対応して不可能の意味になっている。


麝香(ざこう)

「ざこう」と書いて、読み方は「じゃこう」。

オスの鹿から作られる香料の一種で、強い匂いが特徴。


らうたし

古語で、「可愛らしい」という意味。


色香(いろか)

字のままの意味で、色と香り。


(にのまえ)解説》


さて、今回こんなにも単語の解説が長いのは理由があります。はじめてなのですが、「折句(おりく)」という修辞をいれてみました。《脚色した現代語訳》のところで最後に意味深に書いてある最後の文は、折句によって付与されている文です。まずはもう一回、和歌を見てください。意味あって、平仮名だけにして括弧(かっこ)もつけます。


「や」かをなみ

「え」みえぬはなは

「ざ」こうより

「く」らべてまさる

「ら」うたしいろか


一目瞭然ですね。というわけで、「折句(おりく)」とは、それぞれの句の最初の文字を集めると何かの単語になっているという修辞です。隠している単語は、和歌の内容に関係していてもしていなくてもよいです。よくある古典の人たちのノリとしては、


目の前に風情のある植物を発見

「和歌を作ろう!」と誰かが提案

「ついでにその植物の名前を折句にしてみよう!」となる


なので、その場にいる人としては

「すごいねー。」

となるけれど、後で和歌だけを見た人にとっては

「たまたまでしょ。」

と思われてしまうかもしれませんね。


よって今回の茜の和歌では、意味に関係させるようにして作ってみました。つまり、

「夜で花は見えないけれど、ちゃんとその存在は分かっているよ!」

という和歌の各句の頭の文字をとると、

「やえざくら」

となり、しっかりとその名前も分かるという和歌にしました。


かなり作業は難航し、普段は使わない単語をたくさん使いました。とくに「夜火」は茜の手元にあった辞書にはあったのですが、一部では見つからない……。


時間をかけて作った和歌だけに解説もかなり長くなりましたね。


では最後に、全てを加味した上で、私の一番味わってほしい本文をもう一回のせます。


夜火(やか)()

()えぬ(はな)

麝香(ざこう)より

(くら)べて(まさ)

らうたし色香(いろか)


最後までお付き合いいただきありがとうございました。



古典の人の花のイメージは、「美しいけれど真実味の少ないもの」


なんとなく言ってみただけです。



本作は「春の詩企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2230859/(志茂塚ゆり様活動報告)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 企画ご参加ありがとうございます。 この歌、以前一通り読ませて頂いた中でも特に好きな歌でした。 視覚が奪われた状態で、嗅覚から想像するしかない花の美しさというのが見事に描かれていると感じます…
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