表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

直美のファーストネームで呼び合おう作戦

シーン0 交渉人 〜大塚家、絵美の部屋〜 9月17日(水)


直美がドアを形だけノックして、絵美の部屋に入ってくる。


「【おねぇちゃん】。入るわよ」


単行本を読んでいた絵美が顔を上げて不機嫌そうな声音で返答する。


「なによ」


直美は絵美の不機嫌そうな顔をまったく気にしない。


「あらま!怖い顔。うなり声だし」


「あんたが、猫なで声で【おねぇちゃん】って言うときは、大抵厄介ごとだもの」


直美は絵美の指摘をまったく気にしない。


「あらま!探偵の先生に対するときとはずいぶん態度がちがうのね。まるで二重人格みたい」


キレるのはいつも絵美が先である。


「うるさい!!、用件はなんなのよ?」


直美は絵美がキレてもまったく気にしない。


「お姉ちゃん。探偵の先生とコンサートに行きたくない?」


チケットを取り出しヒラヒラと振る。


「探偵の先生が好きなエアロスミスの、アリーナ最前列、関係者向けの舞台正面の席があるんだけど・・・」


絵美の目の色が変わった。

直美はチケットをヒラヒラヒラヒラ振りながら、


「これで誘えば、絶対に断られないと思うわよ。これ、欲しい?」


絵美はチケットを奪おうとするが、上背に勝る直美が、手を絵美の手の届かない位置まで上げてしまう。

どんなに背伸びしても、ジャンプしても届かない。


あきらめた絵美は息を切らして言う。


「条件は何なの?」


直美は悪代官か、ギャングの情婦のような不敵な笑みを見せて、


「話が早くて助かるわ。条件は四つよ」


指を一本立てて言う。


「まず一つ。当日の私の行動の理由を詮索しないこと」


立てた指を二つにする。


「二つ。当日は私に逆らわないこと」


立てた指を三つにする。


「三つ。当日は私の邪魔をしないこと」


立てた指を四つにして、手招きする。

近寄ってきた絵美に小さく耳打ちする。


「最後の四つ目はね・・・」



シーン1 集合場所 〜横浜アリーナ近くの道路〜 9月27日(土)


絵美と、江戸川と、直美と、なぜか大山の姿が見える。

直美が出した四つ目の条件は、

自分と大山を含めた4人でコンサートに向かうというものだったのだ。


江戸川は、シャツ、ズボン、靴、靴下に到るまで、

一分のすきもないほど、黒で統一している。

中山駅の近くでは浮いていたその格好も、

会場の近くまで来ると、似たような格好、仮装をした人々が、三三五五集まりだし、

今、横浜アリーナの回りには一種異様な雰囲気が漂い始めているのであった。


そんな江戸川から目を離さない絵美は、

普段とあまり変わらないブラウスとパンツルック。


そういう、絵美をじっと見つめる大山はスーツ姿で、

会場近くまで来ると逆に浮いている。


大山と絵美を結ぶ線上にはいつも直美が陣取り、

邪魔をしているように見えなくもない。

直美は、スリムのジーパンに白いTシャツ姿で、

つまり江戸川以外は普段の格好とあまり違わない。


こんな状態で彼らは、最終目的地である横浜アリーナへ歩き出した。



シーン2 状況開始 〜横浜アリーナ〜


直美が、大山のそばまできて、呼びかける。


「ねーねー小山さん?」


大山が訂正をする。


「大山だよ」


直美が呼びなおす。


「えーと、小島さん?」


大山はちょっと強い調子で


「お、お、や、ま。だってば」


直美が繰り返し呼びかける。


「小林さん?」


「俺の名前は、大山治だ!!」


「じゃあさ、治さんって呼んでいい?、あたしのことは、直美って呼んでいいからさ」

直美はしてやったりという表情。


「ちょっ、ちょっと待て、どうしてそんな話になるんだよ」


「名前、治さんなんでしょ?(ニンマリ)」


「間違ってはいないが…」


「ならいいじゃん。それにさ、こっちも大塚って呼ばれたらお姉ちゃんと紛らわしいし」


「………」


笑顔の直美に対して、大山は渋い顔。


「直美って呼んでね?、治さん☆」


「………」


ハメられたと思っても遅い。


「ほら、呼んで?。な・お・み☆」


「ぅぅ。直美ちゃん・・・」


「ふふっ。ホントは呼び捨てにしてもらいたいけど、今はこれくらいで勘弁しといてあげるわ!!」


余裕ぶって譲歩してやったという態度だが、内心は喜びで小躍りしていた。

(やったー、ファーストネームで呼び合おう作戦成功!)



少しはなれたところから見ていた江戸川と、絵美は顔を見合わせた。


「絵美ちゃん。直美ちゃんってもしかして・・・」


「ええ、そうなのかもしれませんね・・・」


二人ともほぼ同じことを考えたという。

(これで、大山さんも、落ち着くかも・・・)

(これで、直美も、落ち着くかも・・・)



シーン3 状況終了 〜横浜アリーナ〜


ライブの後、感想を言い合いながら、帰っていく一行。


「よかったなぁ、Last ChildもChip Away the Stoneも演ってくれたし」


江戸川がうれしそうに言い、そんな江戸川を見る絵美もまんざらでなかったようだ。


「そうですね、Dream OnとかAngelとか結構ロマンチックな曲もあって」


この二人はホントにライブを楽しんだ【だけ】のようだ


「私も大満足。収穫しっかりあったし」


直美も満足そうだ。


大して興味ないバンドのライブへ引っ張り出され、

直美に付きまとわれた大山だけが微妙な顔をしていた。



シーン4 戦闘後のブリーフィング 〜大塚家、絵美の部屋〜


直美は、帰宅後、着替えも後回しにし、絵美の部屋に押しかけてこう言った。


「さて、戦果を確認しましょうか」.


絵美はセンカと聞いて、戦果という字をイメージできなかったようだ


「え?、センカって?」


直美は言葉を変えた。


「いや、だから、何か収穫はあったか?って」


今度は会話になった。


「エアロスミスも意外とロマンチックな曲があっていいなあって」


「ライブの事だけ?、呑気ねぇ」


直美はちょっとあきれたようだ。


「私は治さんを【治さん】って呼べるようになったわよ」


両手を腰に当てて胸を張って言う。


「いずれは、私のことを【直美】って呼び捨てにしてもらうけど、今日はとりあえずここまでね」


絵美は愕然とした顔をした。


「お姉ちゃんはどうだった?。いや、聞くまでもないか」


直美はクスクスと笑いながら。


「ホントに呑気よねぇ」

「多分私が先になるから、約束しといてあげる。私がブーケ投げるときは、必ずお姉ちゃんに取らせてあげるからね」


直美にとっては、めでたしめでたし。




10年ぶりの【ABO】の新作です。

とはいっても、

直美が大山を【小山】【小島】【小林】と呼ぶ部分は、

10年前にできていました。やーっと日の目を見ました。


今回のBGMは日本語の曲ならば山本リンダの「狙いうち」

英語の曲ならば「Chip Away the Stone」ですね。

「Chip Away the Stone」は自分の周りに障壁を作る標的を、

標的との間にある障壁を少しずつ壊していって、

いつか必ずモノにするっていう歌詞だったハズ。


文中に出てくる「Chip Away the Stone」等のエアロスミスの曲は、

Youtube等で結構見つかります。

興味ある方は探してみてください。


「Chip Away the Stone」どなたか、ボーカロイドで作ってくれないかなぁ。

テンポをゆっくりにして、ブルージーな感じにすると、カッコイイと思う。


「・・・・・」


おや?【ストレートへア】の娘がジトっした目でこちらを見ている。


いや、きみはこのシリーズ関係ないでしょ。


「・・・・・」


うう、なんか、すごくニラまれている。

あ〜そうか。自分たちも名前で呼び合いたいと。


「・・・・・(コクリ)」


だから、名前を考えろと。


「・・・・・(コクリ)」


うむ。善処します。でも、君はどうせ呼ばないだろ?


「!!・・・・・(ポカポカ)」


こら、無言で叩くな。叩くなって。

わかったから。わ〜かったから。考えるから。


ということで、【アイス】ものもよろしく。

次回は【ツインテール】娘が看病される話になる予定です。




【ABO式殺人事件】はこちら。

http://ncode.syosetu.com/n3295e/novel.html


シリーズ【アイス】ものはこちら。

http://ncode.syosetu.com/n7345e/novel.html

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ