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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
一章:採油遠征と酒保商人
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雪の油



 採油遠征四日目。


 四日目は探し求めていた巨大な六本腕の魔物、モールリーゼ達との決戦となりました。正面切って戦うなら雪虎ヒウンバーグが可愛く見えるぐらいの強敵です。


 上半身に対して下半身が貧弱極まりない事もあり、移動速度は大した事はないのですが、巨腕の手のひらに雪を握り込むとそこからにじみ出た体液が雪を一瞬で石のように固めていき、投擲しています。


 大岩が大砲並みの速度でぶっ飛んで来るので、当たれば大抵ミンチです。たまに近隣の都市に向けて飛んで来る大変迷惑な雪玉です。


 近づくと六本腕を駄々っ子のように振り下ろしてきます。


 駄々っ子と言うと可愛らしいですが、実際は鉄骨すらへし折るプレス機並みの振り下ろしです。繊細な仕分け作業出来れば解体現場で活躍出来そうですが、人を見るとドスドス襲ってくる魔物なので人間社会に馴染むのは難しそうです。


 それが八匹います。


 通常の巨袁は夜の雪山を一匹でうろつき、昼間は雪を被っているのですが、繁殖期に入ると群れで行動する事が多くなるのです。もれなく気性も荒くなります。


 魔物は神様がポンポコ生み出しているので繁殖せずとも雑草のように増えるのですが、繁殖によっても数を増やす事もあるのです。人間を苗床にして増える魔物も存在しています。


 冒険者達は散開し、全速力で移動しながら火山弾の如く飛んでくるカチカチの雪玉を回避していき、弓矢等を扱う後衛が気を散らし、その隙にフェルグスさんとセタンタ君を含む主攻を担う部隊が巨袁に近接し、斬りつけ、弱らせていきます。


 チャンスがあれば手癖の悪い巨腕を斬り落とします。


 並大抵の腕では一足に切り落とせませんが、フェルグスさんは大剣でスパーンと切り落とし、たじろいた巨袁の胴体を駆け上がっていったセタンタ君が頭を直接攻撃しにいっています。


 巨大な魔物ですが、頭をやられればさすがに死にます。


 人間と比べると大変堅いのですが、目潰しも有効です。


 魔物同士で密集させ、巨体同士で上手く腕を振るえないようにしつつ、主攻部隊が少しずつ数を減らしていきました。


 途中、後衛に向けて雪玉が飛んできて、お兄ちゃんの蛮勇を叱ってた妹ちゃんをミンチに――しかけましたが、血相変えて飛び込んできたお兄ちゃんが斜めに構えた盾で投擲を逸し、間一髪で救う場面もありました。


 勝利は目前。


 されど、相手は強敵だけに油断すると大怪我では済みません。


 最後の一匹が、どう、と音を立てて雪中に倒れたのを見て、ようやく小さく歓声が上がり、ガッツポーズを取る冒険者、肩で息をしつつも隣の子とハイタッチして笑い合う冒険者の姿がちらほらと見えています。


 セタンタ君も緊張の糸を切り、しかし念のため警戒しながら大事な槍を支えに立っていると、フェルグスさんに肩を叩かれました。


「よくやった」


 褒められましたね。


 少年は「へへっ」と嬉し恥ずかしといった様子で鼻をこすりました。ショタ!



 さて、巨袁は討ち果たしましたが遠征はまだ終わりません。


 フェルグスさんは巨袁を討ち果たした雪原を野営地とすべく、冒険者と拠点設営部隊に指示を飛ばし始めました。


 数日ほど、皆でここに滞在するのです。


 設営部隊は雪に薬剤や薬液を混ぜ、魔術で仮設用の建材を作り、それで建物を作り始めました。かまくらみたいなものですね。ただ、出来上がったのは雪の壁に覆われたちょっとした砦となりました。


 皆さん慣れたもので、あっという間に100人以上を収容出来る雪の建物が雪原に出来上がり、雪原に接続する道にも見張り小屋が作られました。魔物相手にも戦いやすいよう、堀や土塁ならぬ雪塁を作ったりもしています。


 セタンタ君は仕上げをお手伝いします。


 孤児院時代に習得したルーン魔術で雪の建材を頑強に強化し、魔物を早期発見出来るよう、拠点から離れたところにも索敵用のルーン魔術の仕掛けを細工しています。単に戦士として才能あるだけではなく、工兵にもなれる子なのです。


 セタンタ君が一仕事終えて野営地に帰ってくると、フェルグスさん達が巨袁の死体を切り分けていました。


 部位ごとに切り分けられた魔物の死体は5人の製油職人が都市から持ってきた釜にドンドコ入れられていき、煮込まれ始めました。


 魔物の死体で油を取るのです。魔物油です。


 鯨油みたいなものですね。


 巨袁は大きく脂分豊富で、加熱する事で脂肪をトロリと溶かし出す事が出来ます。融出法ですね。特に皮下脂肪からたっぷりと油を絞り出す事ができ、この油は燃料や武器防具の手入れに使ったり、合成樹脂の材料にする事も出来ます。


 魔物や部位によって油の質と用途は変わってきますが、大型の魔物はこうして人間が使うための油を取り出すために殺され、鍋にかけられたりします。


 魔物にとってはたまったもんじゃありませんが、人にとって営みと経済を回していくための大事なものです。敬意を払いつつ、しっかり出来るだけ無駄なく使わせていただきましょう。


 都市に帰るまでが遠征ですが、フェルグスさんは想定以上に多くの巨袁を狩る事ができ、ホッコリ顔です。ただ多すぎて自分達だけでは持ち帰り切れない量になりそうなので、冒険者を3名ほど呼び、手紙を託しました。


 クアルンゲ商会に伝令を飛ばし、運搬役の人夫と護衛を増員してもらうのです。商会も喜んで人を寄越すでしょう。


 巨袁から取るのは主に油ですが、毛皮も剥ぎます。


 セタンタ君も解体作業の応援に入る事にしました。今回は護衛の冒険者も多くいるので、ゆっくり丁寧に解体作業に集中する事が出来ます。


 肉は筋肉質すぎて脂肪分乏しく油も取れず、あんまり美味しくもないので大体ポイポイ捨てられます。中には魔物の腹の中に魔物がいたりもしましたが、それも息の根を止めました。人にとっては必要な事ですが、残酷をしています。


 脳みそは珍味なので一部食べます。


 セタンタ君は遠慮しましたが、フェルグスさん達は「酒の肴に良い」とか言いつつ、せっせと塩漬けにしていっています。塩辛みたいなものです。漬けておいて都市に持って帰って自分達で食べたり、売るのです。生でも食べれます。


 直ぐに処理出来ないものは雪に埋めておきます。こういう時、雪山というのは便利です。温暖なとこだと微生物が一気に繁殖してしまいますからね。


 雪が無い場合は池や川などの水場を使いましょう。


 魔物はずんずん人間を追いかけてくる種が多いので、遭遇したらその場で狩らず、死体を冷やせる水場に誘導してから殺すのも肉目当ての時などに有効な手段です。単に討伐目的ならサクーッと殺せばいいんですけどね。


 フェルグスさん達は脳の塩漬けが完成するのにホッコリ顔で見守り、完成品に思いを馳せています。セタンタ君は「くったらなんか変な寄生虫入ってそう」と言いましたが、オッサン連中は「そんなもの魔術で何とかすればいい」と返しました。


 でも、あくまで油優先です。


 脳の塩漬け瓶に頬ずりしていたフェルグスさん達は「真面目にやれ!」と商会の製油職人さん達に尻を乱打されてしまいました。


「オッサン達、大丈夫か?」


『尻が割れた』


「そっかー。おーい、治癒得意な誰かー! このオッサン達のケツを溶接してやってくれー! 最優先でー!」


 フェルグスさん達が「ワァ!」と雪を蹴っ飛ばして逃げ回るのを呆れ顔で見守っていたセタンタ君は、オッサン連中以外にも仕事してない人を見つけました。


 と、いってもオッサン連中と比べたら可愛いものです。


 二人の男女がちょっと言い合いしてるだけです。


「どしたの、二人とも」


「セタンタ、お前も言ってやってくれ! 冒険者向いてねえんだって!」


「はあ?」


「…………」


 セタンタ君がおせっかい心を刺激され、話しかけた男女は一時は雪虎に腕を折られたオークさんと、その妹さんでした。


 オークのお兄さんはちょっぴりおこです。


 怒られている妹さんは俯き気味で、キュッと下唇を噛んだりしつつ、「お兄ちゃんに言われたくないもん」と返してます。明らかに涙声です。


 どうも先程の戦闘で女の子が危ない目にあっていた事に対し、それを庇ったオークのお兄ちゃんが「迂闊すぎる!」と怒っているようです。


 怒って、冒険者を辞めろと言っているようです。


 妹さんに危ない事をしてほしくないあまりに。



「まあ、100人中60人ぐらいはこっちにつくわなー」


「あ、くそっ、セタンタてめぇ」


「怒ってる男と泣いてる女の子なら、俺は大体女の子側につくぜ。男側についても対して得しなさそうだし……」


「このスケベショタめ……!」


 セタンタ君は妹さんの方を擁護しました。


 戦いつつ、妹さんが危険な目にあっているところも一応は見ていたので、「まあアレは仕方ないだろ」と弁護しています。


 妹さんの友達である女性陣も「そうよそうよ」と加わってきました。オークのお兄ちゃんの言ってる事もわかるのですが、他の男性陣も「だってかわいいし!」と下心で女の子の方についていってるので孤立無援です。


「こ、これは家族の問題だ。アンタらは黙っててくれ」


「まー、一応は魔物との戦闘絡みの事だしー」


「お兄さん厳しすぎ。この子がなんで冒険者やってるのかわかってないの?」


「え? うん? ……そういえば何でだ?」


 オークのお兄ちゃんは首をひねりました。


 わりと本気でわかっていません。


 セタンタ君もその辺はまったく知りません。


 知るのは妹さん本人とその友達と、尻を溶接されそうになっているオークのオッサンぐらいですが、オークのオッサンはいま遠くでコケてます。



「そういや、そうだよ。まあウチの士族は冒険者なるやつも珍しくねえけど、お前はその気立て良くてカワイ……世間一般の基準で可愛いし!」


「普通に可愛いって言ってあげればいいのに」


「クソオーク」


「ぺっ」


「何で俺が責められる流れなんだ!?」


「……お兄ちゃんが、家を出ていったから、だよ」


 理由を告げたのは、妹さん本人でした。


 驚いた様子でその顔を見返すオークのお兄ちゃんに対し、目に大粒の涙を浮かべながら手をギュッと握り、それと共に言いたい事を絞り出していきました。


「私がホントの妹じゃなくて、なのに家にいるから、嫌で逃げたの?」


「ち、違うっ」


 お兄ちゃんオークはひどく慌てた様子で即座に否定しました。


 大事な妹さんが泣くうえに、「私のこと嫌いなの?」などと聞いてくるのでビックリして「そんなわけないだろ」と否定しています。


「お前は俺の一番大事な妹だよ。嫌いになるなんて有り得ん。家族だもんよ」


「わ……わたしはっ、違うっ! お兄ちゃんの事、一番大事なお兄ちゃんなんて思ってないっ!」


「えっ」


「おっ、男の人として……異性として、一番大好きだもんっ!」


 妹さんはポロポロ涙をこぼし、自分の正直な想いを告げました。


「えっ? えっ? ちょっ、えっ? お、おれら、兄妹だろ?」


「血は繋がってないでしょ!? わたしっ、拾われっ子だもん!!」


 二人は兄妹ですが、血の繋がりはありません。


 二人のパパはオークで、だからこそオークのお兄ちゃんが生まれたのですが、妹ちゃんの方は養子で貰われてきた子なので義理の兄妹なのです。


 お兄ちゃんオークにとっては、大事な妹。


 大事な妹――と思おうとしていた相手に告白され、硬直しました。


 硬直したその頭には、走馬灯のように妹の思い出が駆け巡っています。



 元々、妹ちゃんは他所の国から難民としてやってきた子でした。


 逃げてくる道中で両親は盗賊に殺され、庇われて何とか生き残った子を保護したのがお兄ちゃんオークのパパオークでした。


 助けたのが年端の行かない子供で身寄りが無かったため、パパオークは自分のとこの養子にする事に決めました。


 お兄ちゃんオークは妹ちゃんの境遇に深く同情しつつ、「妹になったなら、守って元気にしてやらねば!」と決意し、奮起する事にしました。


 ですが保護されてきたばかりの頃の妹ちゃんは傷心で、異種族オークのお兄ちゃんを怖がり、助けられたのは納得しても泣く事すらありました。


 そんなもんだろうと思いつつ、「でも笑ってた方が可愛いよな!」と願ったお兄ちゃんは頑張って義妹の心を解きほぐそう苦心し、妹ちゃんにプレゼントを贈ったり、一緒に遊びに行ったり、泳ぎを教えてあげたりしました。


 次第に二人は打ち解け、仲の良い兄妹となっていきました。


 しかし、同時にそれ以外の心境の変化も生まれていきました。


 お兄ちゃんオークは「最初は何か可哀想でチビっこく可愛い女の子」だった妹が、年々、女性らしい身体つきになっていき、それを兄ではなく男として見てしまっている自分の心に気づいたのです。


 義妹の事を、異性として好きになってしまった事に気づいたのです。



 お兄ちゃんオークはその事に恐怖しました。


 妹ちゃんの事は大好きです。


 でも、大好きで大事なので、その妹を性的な目で見てしまっている自分を嫌悪しました。「こんなのカッコよくて頼りになる兄貴じゃない」と自分を律しようとしました。


 それでも異性として好きになってしまう気持ちは止められませんでした。


 お兄ちゃんオークは恋をしつつ、悩みました。


 悩んだ末、距離を置く事にしました。


 自分が妹ちゃんと距離を置けば異性として見てしまう事もなく、妹ちゃんが誰かとくっついてしまえば「もう諦めもつくだろう」と考えたのです。


 正直苦しかったのですが、それでも「妹のために、あくまでお兄ちゃんでいたい」と願い、自分の恋心に蓋をして距離を置いて逃げる事にしたのです。


 妹ちゃんの本心に気付かないままに。



 お兄ちゃんが家を出た事で、妹ちゃんは大いに焦りました。


 妹ちゃんもお兄ちゃんの事が異性として好きでした。


 妹ちゃんも妹ちゃんでお兄ちゃんを異性として意識し始めたものの、こっちは遠ざかる選択肢はナッシングでした。かといってストレートに言葉を告げれず、やきもきしながら逃げた兄を追って冒険者となったのです。


 二人のパパとママは「相思相愛なんだから引っ付けばいいのに」「いや、お互いに鈍いから相手の気持ちは気づいてないのよー」「マジか」などと言葉交わしつつ、超可愛がってる娘の事を心配しました。


 実の息子さんに対しては、「鈍感すぎ! 許せん!」「こんな良い子、お前に勿体無いがはよくっつけ!!」とプンプンしつつやきもきしました。


 夫妻は「媚薬飲ませて監禁すればよくね?」と思いつつ、友人のオークに「それとなくくっつけてくれないかなー」「息子はともかく、娘は嫁に出したくないし」などと相談し、そのオークが商会の遠征に乗じて影で色々画策していたのです。


 多分、仁義のあるヤリチンだったのです。


 あるいは闇の孕ませオジサンが珍しく善意のヤリチンになったのです。


 妹ちゃんの友達も彼女の気持ちを察していたので、黒幕のオークが裏から手を回してきたのに便乗し、大事な友達の恋を後押しする事にしました。


 そのおかげもあって、妹ちゃんは正直な想いを告げる事が出来ました。


 もうボロボロ泣いちゃって、頭の中では「好きって言っちゃった」とか「異性として見てるなんて気持ち悪がられるとか「お兄ちゃんに嫌われたくない」とか思ってパニック状態に陥っているようですね。


 対するお兄ちゃんの方は「な、泣くなよぉ」とうろたえています。


 周囲はわりと無責任に囃し立てはじめました。



「抱け! 行動で示せ!」


「ちゅーしろ! キース! キース!」


『ちゅー! ちゅー! ちゅー!』


 囃し立てた男性陣は絶対零度の視線を持つ女性陣に黙らされました。


 お兄ちゃんオークは戸惑っていましたが、それでも泣く妹さんの手前、「何とかしないと」と思いつつ、頭をかきながら困った顔で俯いていました。


 俯いていましたが、正直に自分の想いを告げました。


「オレも好きだよ……。大好きだ。お前の事、ホントのホントに正直に言うと、妹以前に一人の女の子としてみたい、と思っている」


「…………」


「でも、その……えっと、そういう目で見ている事を知られて、お前に『キモい』って言われて嫌われたら、すごく嫌でさ……」


「……私も、妹だけど好きだよ。き、キモいって思うの……?」


「思うわけないだろっ、俺も好きだもん!」


 妹ちゃんは、ようやく笑いました。


 泣きつつも照れくさそうに笑う妹の――近くて遠いと思っていた女の子に対し、オークのお兄ちゃんは胸をギュッとわしづかみされるような想いになりました。


 他の男に盗られてたまるか。


 そう思ったオークのお兄ちゃんは鼻息荒く妹ちゃんをお姫様抱っこし、「今日はもう仕事どころではないので休むっ!」と設営された拠点に入っていきました。



「じゃあこっちにどうぞ」


「ファッ!? 何で俺らだけ個室なん!?」


「そこは言わせないでほしいナァー」


「じっくり話し合ってね!」


「幸せにしてあげないと殺しにいくよー」


「キスしろ!」


 囃し立てにきた男性冒険者は女性陣に埋められました。


 さらには冒険者仲間達と遠征隊長の配慮で採油作業が完全に終わるまで「サボっててよし」とも言われました。


 二人は上手く乗せられたかも、と悟ったものの、自分達の都合の良い形で事がコロコロ運んでいるので黙って乗せられる事にしました。


 やけに色々揃っている個室に案内された二人は、お互いの想いを知ってるものの、恥ずかしげにモジモジしていましたが、やがてポツポツ話はじめました。


「あ、改めて聞くけど……」


「う、うんっ……」


「ええっと、ホントにオレでいいのか? しょ、正直に言うけど、いまもお前にメッチャクチャ欲情してて、絶対これ、一日じゃ終わんねえからな……?」


「…………」


 妹ちゃんは黙ってコクコクと頷きました。


 顔はりんごみたいに真っ赤!


 恥ずかしくて、まともに喋るだけの余裕は無いのです。


 恥ずかしすぎて嬉しすぎて、瞳を涙でうるうるさせてもいます。


 ただ、お兄ちゃんの衣服をくいくい引っ張って、耳元で恥ずかしげに「私もコーフンしてるから……」と小声で告げました。お兄ちゃんもコーフンしました。


 こうして二人は結ばれるに至りました!


 兄妹だった二人は皆で遠征の帰路についた際、周囲が色々察する雰囲気も持ちつつ、それでいて初々しく、甘酸っぱい空気を醸し出しつつも慎ましくイチャイチャ帰っていきました。


 そして実家に帰ってご両親に結婚を正式に報告し、二人で冒険者稼業ではなく家業を手伝っていく事を決め、結婚式を挙げ、その後は三人もの子宝にも恵まれつつ、家族仲良く幸せに暮らしましたとさ。


 めでたしめでたし。セタンタ君どこ行った!

 



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