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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
三章:血汐の円卓
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単騎討伐試験



 日光が燦々と降り注ぐある日の事。


 セタンタ君とマーリンちゃんとパリス少年は事前の約束通り、単騎討伐の見学のために首都から別の都市へやってきました。


 ポカポカ通り越してジワジワ暑くなってきているので、三人共揃って道端に出ていた屋台でよく冷えた飲み物を買い求めています。


「大分暑くなってきたなぁ」


「なに、都市間転移ゲート使えば六月とはいえ、極寒の地に行けるぞ」


「ゲート使って暑いとこと寒いところ行ったり来たりして遊べるよ」


 はた迷惑なので止めましょう。


 他愛のない話をしつつ歩く三人はやがて、巨大な円柱型の建物にやってきました。横が三キロ、縦が一キロメートルほどの建物です。


 外は漆を塗ったように真っ黒ツルツルで、排気口らしきものはあっても窓の類は無く、中の様子はうかがい知る事は出来ませんでしたが、建物出入り口の前では多くの冒険者さん達がたむろしていました。


「でけー建物!」


「単騎討伐はこの中でやってるんだよ。正確には単騎討伐試験ね」


「いくつかの部屋に別れてて、そこで試験の予約してる奴らが戦ってるんだよ」


「セタンタも予約したんだっけ――うおっ! なんだあれ!?」


「「ん?」」


 パリス少年が指差す先には戸建てより大きな飛竜の姿がありました。


 建物上空を飛び、建物の屋上に向けて滑空しています。


「試験の相手だね」


「王様の使い魔が魔物役務めてるんだっけか?」


「そだよ。試験ごとに魔物を捕まえてくるのは手間だし、魔王様の使い魔が試験ごとに姿形を変えて戦ってるの」


「屋上は飛行種の魔物に似せた使い魔と戦えるんだ。あそこでしか出来ないから飛行種との単騎討伐試験は予約してから一ヶ月以上かかる時もある」


「試験受ける費用もちょっと高めだよー」


「落ちた時つらそうだなー」


 空飛ぶ人間は少なくても、空飛ぶ魔物は探せばそれなりにいます。


 戦うだけなら都市郊外に行けばいいのですが、そうして飛竜あたりの首を持ち帰っても都市郊外の事では一人で倒した証明はし辛いのです。


 公式の場なら不正が入り込む隙が無いため、冒険者クランなどに入るための箔付けだけではなく、「俺は強いんだぜ~」と自慢するのにも使えるため腕に覚えのある冒険者達が今日も多くやってきているようです。


 試験で戦う疑似魔物も様々。


 種類によって試験を受けるための費用も異なり、戦う相手は全て王様の使い魔であるため試験料はそっくりそのまま国庫に入っていく事になります。



「セタンタの試験の相手はどんな魔物?」


「秘密」


「ケチー!」


「飛行種じゃ無さそうだな!」


「おう。予約外れるのが相次いで、運良く直ぐに滑り込めたとこでな」


 飛行種相手の試験が一番混みますが、他の試験も数日は待たないといけない事が多々あります。そういう意味ではセタンタ君はラッキーだったようですね。


 三人はセタンタ君の順番待ちついでにセタンタ君が試験受ける試験場へと移動し、先客の冒険者達が戦う様子を見学し始めました。


 各試験場は闘技場のような作りになっていますが、観覧席は部屋をぐるりと囲い、横に並んで見れるほどのものでしかありません。


 昔は試験ついでに闘技場として運用し、官営賭博でウハウハだったのですが、試験にやってきた冒険者さん達が勝っても負けても観客になじられ貶され、「見世物じゃねえんだぞ、コラ!」と怒り、場外乱闘に発展したため、廃止されました。


 今では試験を受けに来た方の身内や、対魔物戦闘を学びにきた冒険者の方がチラホラいる程度。たまに戦闘に巻き込まれますが、その辺は自己責任です。


 セタンタ君達は「まあ、死んでも魔王様が蘇生してくれるしー」と呑気に構え、必死の形相で戦う冒険者さん達の様子を見ました。



「さっきの戦い方、カッコ良かったな! こう……バーン! ズバーン! って」


「槍もいいもんだろ」


「まあ大剣には劣るかな!!」


「こ、この野郎……ホントに槍は良いもんなんだぞ」


「でもセタンタ、この間は森の中で取り回ししづれ~って文句言ってたじゃん」


「まあ事実だし。でも長物は便利なんだぞ」


「槍以外にも使いなよ。この間、ガリアで良さげな出物があったよ。普段は短槍なんだけど、先端部分取り外して剣にも出来るの」


「なんだそれ、カッコイイ」


「俺はこの槍がいいんだよ、こいつが一番なんだよ!」


「お前らウルサーーーイ! こっち試験中なんだからなああああああ!」


「「「ごめんなさーい」」」


 怒った冒険者さんが疑似魔物相手に突貫し、見事勝利しました。


 セタンタ君達がそれに拍手しているうちに、疑似魔物――王様の使い魔はグネグネと再生し、形態を変質させ、次の試験用の姿に変身していきました。


 先ほどは巨体だったのですが、今度は一つ、二つ、三つ……と分裂していき、最終的に十三匹の狼を模した姿へと変化しました。



「次、森狼の群れ型だね」


「オレ様でも勝てるかな?」


「アレ結構キツいんだぞ。対策しねえと、一匹仕留めているうちに他が突っかかってくるから、熟練冒険者でも負ける事あるぐらいキツい」


「攻略法あるから難易度としては下の中ぐらいだけどね」


「むむ……いつか挑む事になるだろうから、しっかり見ねえと」


 かじりつきになったパリス少年でしたが、直ぐに「あっ」と声をあげました。


 同時にマーリンちゃんも「あれ?」と声をあげ、お互いに「どうぞどうぞ」と譲り合ってパリス少年の方が先に言葉を続けました。


「次に試験受けるの、ガラハッドだ」


「あ、ホントだ」


「誰?」


「えっとだな、この間、パリスと魔物の解体に行ったら郊外にいて――」


「オレ様と同い年の知り合い。何か冒険者になったっぽい」


「へー、そうなんだ……としか言いようがない。強いの?」


「「知らん」」


 強いかどうかは直ぐ判明する事になりました。


 緊張した様子で剣を両手で構えていたガラハッド君は開始の合図と同時に突っ込もうとして――俊敏な動きで突っ込んできた疑似魔物達に出鼻をくじかれ、混乱し、がむしゃらに剣を振り回し始めました。


 パリス少年が「行けー! そこだー! 殺せー!」とテンションマックスで応援する中、セタンタ君はマーリンちゃんがパリス少年と同時に疑問視していたのは何だったのか聞いたところ、マーリンちゃんは試験場の一角を指差しました。


「ほらあそこ、エレイン様とギネヴィアさんがいる」


「ホントだ。エレインさん、留置所から出てこれたんだな」


「だねぇ」


「しかし珍しい組み合わせで、珍しいとこでエレインさん見るな」


 セタンタ君は首を捻りました。


 エレインさんは昔は冒険者としてバリバリ活動していましたが、現在は第一線から引いているため、単騎討伐の試験会場に来る事など付き添い程度。試験内容もほぼ総ナメしている実力者なので、今更来る用事はあまりありません。


 ギネヴィアという女性は冒険者ギルドの職員として働いている方です。


 冒険者ギルドとは別機関の施設とはいえ、行われている事はギルドにも関係がある試験場には来る機会がそこそこある方です。


 セタンタ君は二人がここにいる理由はさておき、二人が親しげに話しているほどの接点があったんだな、と不思議そうな顔で見つめました。


「あぶねー! あーーー! 食いつかれたーーー!?」


「パリスはもうちょっと声小さくしよ……? まあ、珍しい組み合わせだけど、まったくもって知り合いじゃないって事は無いでしょ」


「クアルンゲ商会が冒険者ギルドとも関わりあるからか?」


「というか、クアルンゲ商会にとって取引先の奥様だからね。ギネヴィアさん」


「へー、そうだったのか。知らんかった」


「ちなみに円卓会の事ね。総長アルトリウスさんの奥さんなのだ」


 セタンタ君は嫌な事を聞いた、と言いたげな顔をして黙りました。



 二人がそんな話をしているうちに試験を受けていたガラハッド君は敗北。


 ムチャクチャに振り回した剣がたまたま疑似魔物一匹の頭を捉え、一匹だけ倒したもののそのまま身体中に食いつかれ、やられてしまいました。


 試験終了後に治癒魔術をかけてもらえたるので全快しましたが、試験場を出て行くガラハッド君はとても悔しげな――焦燥感に染まった表情をしていました。



「あ、次の試験、俺だ」


 ちょっと行ってくる、と気安い様子で試験場に降り立ったセタンタ君の視線の先に、狼に変じていた王様の使い魔が再び一つに合体していきました。


「よーし、セタンタ、やっちまえー!」


「やっちゃえー」


「…………」


 友人の声援を背に、深く息を吐いたセタンタ君は槍を構えました。


 そして、試験場をぐるりと一周出来るほど長大で、硬質な鱗を持つ蛇の疑似魔物相手に立ち回り始めました。




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