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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
三章:血汐の円卓
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武器選び


 フェルグス家に連れてこられたセタンタ君は、程々に説教されました。


 話の比重は説教より、セタンタ君の近況を聞きつつ、「一人で郊外をうろついてはなりませんよ」と危険行為は避けるようにたしなめるものが多かったのですが、セタンタ君は説教の方でヘロヘロになりました。。


 叱ってくれていることに少しだけ居心地悪そうに「わかってる、大丈夫だって」と返しつつ、「ちゃんと気をつけてるから安心して」と告げました。


「最近はマーリンとよく組んで仕事してるから、大丈夫だよ」


「それならまだ少しは安心できますが、二人だけというのも危ないので……せめて六人ぐらいで行動なさい。索敵手二人、前衛三人、後衛一人といった感じですね」


「大勢でつるむの面倒くさいんだよなー」


「死ぬよりはマシですよ」


 そんな話をしつつ、セタンタ君はフェルグス家で一夜を明かしました。


 仕事に向かう大人や学び舎に向かう子供達より少し遅めに起きたセタンタ君は朝食を食べ、しばしフェルグス家の庭先でノンビリとしていました。


 フェルグスさんの家は家長からして一夫多妻で、子供らも一夫多妻であるため大家族。別の邸宅で暮らしている子達もいますが、本宅に住んでいる人達だけでも結構な人数がいるので家も相応に大きなものです。


 殆どの人が出かけていって静かになったので、セタンタ君が「ひなたぼっこでもしつつ寝るかな」と思っているところ、庭が少しだけ騒がしくなりました。


 誰かが――エレインさんが帰ってきたようです。


 どうも身体強化魔術も用いた全力疾走から帰ってきたところのようです。


 エレインさんの後ろには何やら不平不満を述べる少年――フェルグス家に居候しつつ、クアルンゲ商会で働いている少年――の姿もありました。



「パリスじゃねーか。オッス」


「おいセタンタ、お前からもエレインさんに言ってくれよぅ」


「何だ何だ、暴力でも振るわれたのか?」


「いえ、むしろ暴力を振るいたいと言っているのです」


 訓練の話です。


 パリス少年は住み込みで働きつつ、冒険者として立派にやっていくための訓練も積んでおり、主にエレインさんが面倒を見ているようでした。


 ただ訓練が基礎的な魔術の練習や走り込みが多いので、焦れたパリス少年が「もっと派手なのがいいい!」と師であるエレインさんに抗議しているのです。


「フェルグスの旦那も昔はエレインさんに稽古つけてもらってたって聞いたけど、旦那は最初から剣の稽古だったって聞いたぞ! 他の人もそうだったって!」


「フェルグスも他の子も、基礎は自発的に習得していましたからね……。パリス君の場合、そこまで至ってないので、初めからコツコツやっているのです」


 エレインさんはそう言いつつ、「ただコツコツしすぎるのも飽きが来たようですし、少しずつ戦闘訓練混ぜていきましょうか」と譲歩しました。


 パリス少年は大喜び。


 一足先に訓練用の武器が納められている武器庫に駆けていき、エレインさんが微笑みながら続き、セタンタ君も「面白そう」とついていきました。



「どれ使っていいの?」


「ここのは全て訓練用のものなので、どれでもいいですよ。好きな武器を選んで実際に使ってみなさい。しっくり来なければ他のに変えればいいでしょう」


 パリス少年は嬉しげに武器を眺め、エレインさんは「打ち込み用の道具を取ってきます」と言い、セタンタ君にこの場を預けました。


「セタンタ、これとか良いと思わないかッ!?」


「わぁ、立派な大剣……潰れるぞー」


「へーきだ!」


 パリス少年は自分の背丈より高い大剣を手に取りました。


 鉄塊の如き代物で、重量挙げのバーベルよりも重い代物ですがパリス少年は「ふぬっ」と踏ん張りつつも、ちゃんと持ち上げてみせました。


 身体強化魔術を使っているようです。素の身体能力はごく普通の彼ですが、魔術を使えばある程度は重い物を振るう事が出来るのです。


「テメー、フェルグスのオッサンが大剣使いだから、憧れて手に取ったな?」


「何でわかった……!?」


「俺も経験がある……。お前がそれでもいいならそれでいいと思うけど、初心者は身体強化魔術無くても持てるぐらいの得物に留めておいた方がいいぞ」


「ほー」


「俺はこれを勧めておこう」


 セタンタ君が手に取ったのは槍でした。


 穂先は金属製で、柄は軽い木製の槍です。


「そこらの魔物相手なら間合いの外から先手を取れる。間合いが広いっていうのは初心者向けで、熟練者になっても有り難いもんだ」


「ふーむ」


「取り回しは気をつけないといけないけどな。例えば森の中だと木で振るえる範囲が限定されるから、そういう時だと剣や斧の方が扱いやすい。まあ、その辺の問題は狩場を選べばいい問題ではある」


「槍はやだなー」


「何でだよ、槍人口増やそうぜ」


「お前と被るのが嫌だ!」


「こ、この野郎……オッサンと被るのはいいのに、俺はダメなんかい……」


「うん」


 パリス少年はチラチラと大剣を気にしています。


 カッコイイものを振るいたいと思いつつ――セタンタ君が言う事も最もだとも思っているので、ちょっと迷っているようです。


「弓矢とかダメか? クロスボウも結構いいぞ」


「その手のはキライだ! 武器強化の魔術は剣や槍みたいな手元に持つものの方が遥かに込めやすくて、弓矢で十発ほど使ってやっと倒すような敵を近接武器ならズバッと一発で殺せるってエレインさんも言ってたぞ」


「その分、離れて戦うより危険は高まるけどな」


「うーん……あと、カッコイイって基準で決めちゃ、ダメなのか?」


「ダメ――と言いたいが、魔術は気分で良し悪し変わってくるから、そういうので決めるのもアリって時も結構あるんだよなー」


 どうしても大剣がいいなら、どっちにしろ訓練だからとりあえず使ってみたらどうだ、とセタンタ君が告げ、パリス君も頷いて「そうする」と言いました。


 言いつつも、まだ迷った様子で唸り、最終的に「これにしてみる」と呟きながら倉庫にある軽めの剣を手に取りました。


 大剣よりずっと軽いため、身体強化魔術無しでも手にとる事が出来そうです。



「お前がさっき、身体強化魔術無くても持てるぐらいの物にしたらいいって言ったのは……あれだろ? 魔力の節約とか、振るいやすさの問題だろ?」


「ああ、そうだ」


 身体強化魔術を使えば、小さな子供でも大剣を持ち上げる事が出来ます。


 ただ、持ち上げれる事と振るえるかどうかは別問題で、パリス少年ぐらいの身体強化魔術と地力で大剣を振るうと剣の方に振り回される事になるかもしれません。


 その点、大剣よりずっと軽い剣なら魔術併用で素早く振る事が出来ます。


 大剣を一度振っているうちに、三度、四度と素早く振るう事が出来るでしょう。


「大剣も当たればグチャッ、と一撃で魔物殺してくれたりするんだけどな」


「外したらこっちがグチャッ、と一撃なのか?」


「そうなる。それにお前はひとまず駆け出し冒険者として戦っていく事になるだろうから、戦う事になる魔物も相応の大きさだ。わざわざ大剣使わなくても一撃で殺せる魔物はゴロゴロいるぞ」


「なるほどなー」


 パリス少年は剣を軽く振ってみました。


 しっくり来ているのかどうかは、本人もセタンタ君もわかりませんでした。


 ただ、これはあくまで訓練用のものです。


 しっくり来ず、失敗しても実戦ではないので死ぬ事はないでしょう。仮にうっかり手が滑ってざっくりと刺さって死んでも、周りに人がいてくれれば治癒や蘇生の魔術で取り返しはつきます。


「とりあえず、今日はこの剣だ。身体強化魔術とかをもっと上手く使えるようになったら……大剣みたいな重い武器を試すとかしてみよっかな!」


「ああ、色々試してみたらいい」


 パリス少年は頷き、道具を持って戻ってきたエレインさんの方へ駆け足で移動しつつ、いよいよ始まる戦闘訓練に期待で胸を膨らませました。



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