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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
二章:足跡の読み取り方と砂塵舞う採掘遠征
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太母の呼び声



「アアア――!」


 セタンタ君はオークさんの大口に布を突っ込み、黙らせました。


 都市上空を自由落下中とあっては叫ぶ気持ちもわかりますが、黙らせました。


 五人――いえ四人は事前の手はず通りに動き出しました。


「レムス! 彼を!」


「おう!」


 双子の獣人が全裸に外套だけ着け人狼化! 落下しつつスタイリッシュに変生していったので魔法少女っぽさがありましたが、残念ながらどっちも男です。


 その後、ロムルスさんがセタンタ君を肩に捕まらせつつ大弓を構え、レムスさんはゲート技師のオークさんをお姫様抱っこしました。


 マーリンちゃんは自分で飛べるので問題ありません――が、ロムルスさんとレムスさんを掴みつつ、浮遊魔術を起動しました。


 マーリンちゃんの限界超えてるので、全員は浮かせられません。


 それでも降下地点を都市中央に修正していく事は出来ました。


 しかし、都市中央にはまだ魔物が残っています!


「セタンタ、防護。マーリン嬢、弟の方の消音を頼む」


 風を切り、都市中央の広場に落ちていく中、ロムルスさんが矢を放ちました。


 放たれた魔術の矢は空中で10本の矢に分裂し、落下予定地点付近をうろついていた魔物達の脳天をほぼ同時に射抜き、断末魔もあげさせず殺しました。


 落下地点は確保。


 ロムルスさんはレムスさんと共に、全力で防護と身体強化の魔術を起動。


 マーリンちゃんは地面直前でフワッと一人で降り立つ事に成功し、他の四人はロムルスさんとレムスさんが人狼能力・魔術・気合の三点セットで着地です。


 と言っても人狼二人は着地の衝撃で脚以外にも色々砕けましたけどね。


「いてて、これ多分、肺とか心臓に何か刺さった」


「ツバでもつけておけ」


「うん」


 二人とも人狼の再生能力で瞬時に再生しました。


 全員そこそこに訓練積んだ人達なので良い子は真似しないでください。


「急げ。腰抜かしている場合ではないぞ」


「ちくしょう、人使いが荒い……! 後で奢れよっ」


「ああ。打ち上げの予算は既に計上済みだが一人ぐらいなら」


 オークさんが悪態つきつつ、都市中央広場の石畳の一部を剥がし、操作盤を触るとさらに大きな装置が広場の中央に現れました。


 いまは稼働していませんが、都市間転移ゲートの制御装置です。


 オークさんはそれに取り付き、鞄から必要な部品を取り出し、一見乱雑ながらも正確に処置を施し始めました。


「さっきも言ったが5分、10分ほどはかかるからな……!」


「了解。終わるまでは一匹たりとも抜かさん――ように努力する」


「そこは確約してくれよぅ」


「あー、来た来たよ皆さん、まだ数はそんな多くないけど」


 マーリンちゃんが索敵・観測魔術を行使しながら告げ、それを聞いたロムルスさんがセタンタ君に呼びかけました。


「セタンタ、遊撃に出てくれ。私とレムスも広場の防備を固めた後に続く」


「了解。マーリン、交信で位置情報頼む!」


「おまかせあれー。ちょっと視界に割り込みますよー」


 セタンタ君の姿が掻き消えました。


 転移魔術・鮭飛びを行使したのです。


 都市から一時撤収する前にマーリンちゃんの協力も得ながら敷設し、戻ったら直ぐに都市内を転移で回れるようにしていたのです。


 マーリンちゃんが仲間の死臭に気づき、都市中央に小走りに近づきつつあった魔物の位置を交信魔術の応用により、セタンタ君の網膜に投映。


 後はセタンタ君が暗殺者の如く都市内の影から影へと転移し続け、魔物に気づかれる前に一瞬で首を断ち切り、抹殺。数体いるなら後ろから順に、あるいは小石を投げて注意を分散し、一体ずつ消していきました。


 一撃で断ち切らないと吠えられ、本格的に仲間を呼ばれかねません。


 だからこそセタンタ君は作戦が決まった後は検分用に確保していた魔物の死体を自分でいじり、最も効率的に殺せる位置、太刀筋をイメージし続けてきました。


 吹き出た毒混じりの血は転移で無理やり回避。


 今のところ、不意打ちは上手くいっています。


 ですが、それも限界が近づきつつありました。


 魔物の死体が積まれれば積まれるほど死臭は増し、まだ都市に残っている魔物達が異変に気づいていきます。


 大半が囮部隊におびき寄せられ出ていったとはいえ、全てが出ていったわけではないのです。


 三分と経たないうちに限界は訪れました。


 ついに魔物の一匹が、警戒を促す咆哮をあげたのです。


「クソッ……! わりい!」


『ドンマンドンマイ想定内。でもこっからさらに増援増えるから注意して!』


 セタンタ君は出来るだけ不意打ちに務めました。


 ですが数が増えていくと、どうしても荒くなっていきます。


 さらに消耗も厳しいらしく、次第に肩で息をし始めています。


 敷設必要とはいえ便利な転移魔術・鮭飛びですが、こう何度も連続使用していては魔力が枯渇していき、疲労していきます。


 転移可能場所も普段はやらないほど広範囲にしているため、その無理を押し通すために魔力の消費も激しくなっています。魔力回復の薬もありますが高価なので今はまだ温存中です。


「10分持たせればいいんだろ!? 楽勝じゃねえか……!」


『ところが15分かかりそうみたい! 西区画から増援、数10!』


「…………!」


 悪態を我慢したセタンタ君は西区画に急ぎました。


 都市内は奪還作戦用に魔物が動きづらいようにバリケードを備えもしていたのですが、魔物が都市に入った時点で大分壊されてしまっています。


 それでも四足歩行の魔物が走りづらいよう、邪魔な資材が転がっていたり、地面を一部掘り返したり、激しくアップダウンをつけています。


 それを壊しつつ、都市中央にゾロゾロとやってくる魔物の一団の姿がありました。セタンタ君は「もう形振り構ってられないか」と槍を握って、半ば不意打ちを捨てかけ――連絡を受けて少し立ち止まり、タイミングを合わせ飛び出しました。


「「…………!」」


 魔物達の後部に回り込んでいたセタンタ君が攻撃を仕掛け、そこに注意が引きつけられたところに建物上から飛び降りてきたレムスさんが長柄の鎚を振り下ろして一匹の頭を一撃で潰し、近場の魔物も叩き飛ばしました。


 二人の撃ち漏らしに対し、大弓を持ったロムルスさんが射掛け、仕留めましたがそれで全てを倒す事は出来ず、吠えようとした魔物が窓の中から出てきた槍に喉元を貫かれ、留めとばかりにレムスさんが魔物の首を手刀でへし折りました。


「すまん、セタンタ遅くなった」


「助かったぜ、レムスの兄ちゃん、ロムルスさん……と、誰?」


「紹介しよう。……と思ったが私も名前は知らん」


 建物の中から誰かが出てきました。


 槍を突き出した誰かです。


 人型ではありますが、それは人間ではありませんでした。


 全身が骨――それも強化・調整された魔物の骨が人型に組み上げられています。


「エルミタージュを守っていた技師の方が貸してくださったボーンゴーレムだ」


「ああ、これが」


「予め隠しておいたが何とか壊されずに済んだ。13体いる。細かい動作は厳しいが盾を持たせて要所で足止めを開始させた。私ではなく専門家ならもっと上手く扱うのだがな」


「十分だよ。それより次に行こう」


「ああ」


「おうよ!」


 本当は地下壕などに伏兵を起き、空挺で連れてきたゲート技師のオークさんを守りつつ、ロムルスさん麾下のカンピドリオの若者で防衛を行いたいところでしたが、大蛇がやってきて地下壕ごと潰されては無駄死になのでゴーレムで代用です。


 一分一秒が長く感じられる厳しい戦いが続きます。


 ですが、今のところ作戦は全て上手くいっています。


 囮部隊も殆どの魔物を引き狩りでおびき寄せてくれています。


 厳しくも、勝利への展望が見えてきた――そんな時でした。


 それはマーリンちゃんだけが気づいた「音」でした。



『maf@ims@;』


「えっ……?」


 マーリンちゃんが空を見ました。


 何か、音が聞こえたのです。


 それはとても不快な音でした。


 音の正体を確かめるより早く、マーリンちゃんは総毛立つ事になりました。


『緊急事態!』


 マーリンちゃんが叫ぶ少し前、囮部隊も異変に気づきました。


「何だ……?」


「当たりが弱くなったか?」


「よっしゃ今だ畳み掛けるぜ!」


「…………!? 違う! 索敵手! 観測結果を寄越せ!」


「船長マズい! 追撃して!」


「わ、わかった!? わかったけど、追撃? 引き撃ちじゃないのか!」


 囮部隊の方も浮足立つ中、マーリンちゃんが必死に叫び、伝えました。


『都市外の魔物が進路反転! 全部、一匹残らず都市内に戻ってきてる!!』


 決死隊の網膜に投映されている魔物の位置情報が真っ赤に染まっていきました。




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