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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
二章:足跡の読み取り方と砂塵舞う採掘遠征
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討伐ごっこ



 ポンポコポコンは結局、アンニアちゃん陣営と第三勢力が負けました。


 アンニアちゃん陣営に所属し、木枝に腰掛けて足をプラプラしつつ、戦況を見守っていたロリ巨乳ちゃんがセタンタ君とマーリンちゃん、それとついでにアンニアちゃん以外を瞬殺するとこまではいったのです。


 が、セタンタ君が大人気なく敷設していた転移魔術・鮭飛びでロリ巨乳ちゃんから逃げつつ、カウンター気味に交差しつつ超短距離転移でロリ巨乳ちゃんの蹴りを躱してポンポコポコンと紙風船を割ったのです。


 敗軍の将たるアンニアちゃんは「ふぇぇ」とセタンタ君陣営の子達に捕虜にされ、縛られてみこしに乗せられ、市中を引き回されて「あんにゃたちはまけちゃったよ……でも、ちゅぎは勝つよ、きりっ」と言っていました。



「勝ったはいいけど、まずい事になってる……」


 セタンタ君がゲッソリとした様子で呟きました。


 木枝の上に逃れて休憩中のセタンタ君の足元には子供達が尻尾を振ってつめかけ、「ぼくもぴょんぴょんしてー」「だっこちてー」と言いにきています。


 どうもセタンタ君の転移魔術を見て、「すごーい」「たのしそー」と思った子供たちが自分達を抱っこして短距離転移してほしいようですね。


「転移魔術ぐらい、王様の補助でいくらか出来るだろ……」


「独力で短距離転移出来るのは別腹なんだよ」


 隣をふよふよ浮いてたマーリンちゃんがニヤニヤと笑いました。


「あっ、リンちゃんも皆をフワフワさせてあげてねっ」


「ギェェェ……二人揃って魔力枯渇しそうな事に巻き込まれてない?」


「マジでそれな。お前はともかく、俺の鮭飛びはそんな燃費良くねえぞ。どうしてもやりたいなら師匠のところにでも行けよー」


「スカサハ様に預けたら九割がた廃人になって帰ってきちゃうよ。それか、セタンタみたいに組み伏せられて童」


「その話はやめろ……」


 さらにゲッソリとしたセタンタ君は子供達に「転移は後でやってやるからー」と散ってもらい、休憩する事にしました。


「この調子で、セタンタも孤児院に遊びに帰りなよ。転移けんぱとか出来たら皆の人気者になれるよ。孤児院長ママにも元気な顔を見せたげなよ」


「めんどくさいからイヤだ」


「んもぅ……。てか、子供抱っこしながら転移出来るの?」


「まあ小さい子ぐらいなら何とか。マーリンぐらいの大きさで何とかギリギリかなぁ……短距離でも数人まとめて転移させれりゃ便利だから、色々と試行錯誤と練習はしてんだけど、こんぐらいが限界かも」


 転移距離は限られるとはいえ、希少な転移魔術は戦闘面で中々に役に立ちます。セタンタ君の切り札です。


 敷設の手間はありますが、相手を待ち構える防衛戦ではその辺の隙も考えなくて済むでしょう。瞬時に相手の背後に周り、攻撃しかけて離脱出来るという技能は対魔物だけではなく対人でも大いに役立ちます。


「せめて、師匠の転移突きみたいのが出来りゃいいんだけど」


「転移突き?」


「穂先だけ転移させて、心臓だけを刺して壊す業」


「えげつないこと鬼のごとし」


「やろうと思っても、自分が何度もやられた事を思い出すと……こう、ビクッとなるから躊躇っちまうんだよなぁ……」


「鱗なり装甲硬い魔物相手に出来ると便利そうだけどねぇ」


「そうそう、そうなんだよ」


「ああいう魔物とかね」


「そうそう――」



 マーリンちゃんが指差した先に、化け物がいました。


 全身をゴム質の鎧で包まれている二足歩行のカメレオンのような化け物で、鳴き声をあげながらドスドスと歩きながら子供達を追い回しています。


 子供達は遊び場に乱入してきた化け物に対し、「ふぇぇ!」「こわいっ!」「た、たべられる~!」と右往左往しています。


 アンニアちゃんは「あっ、れむにーたん」と嬉しげに化け物に向けて駆けていき、サクッと捕まってリボンで縛られてしまいました。


「にゃ、にゃーん……」


「ギャアギャア!」


「あ、あんにゃちゃんが、またちゅかまってる!」


「こわいっ!」


「た、たすけなきゃぁ……! で、でも、こあいよぉ……!」


「ふぇぇぇん」


 将来的には「ギャハハ!」と人狼になって魔物ぶっ殺して回る屈強なカンピドリオ士族の戦士になるかもしれませんが、いまはまだ幼子です。


 こわいこわい、と毛玉のようにコロコロ転がり、獣の尻尾を縮こまらせて逃げたり、お尻と尻尾だけ出して隠れて「はうぅぅぅ……!」と震えていたりします。


 ロリ巨乳の子は自分だけで挑もうかと思ったようですが……空気を読んで「みんな、カンピドリオの戦士でしょう。戦いなさい」と幼子達を鼓舞しました。


「勝ったらお菓子ですよ、お菓子」


「お菓子いるーーー!」


「ぼ、ぼくも、にーちゃんたちみたいに、たたかうんだー!」


「わううぅぅ!」


「でもこあい!」


「みんなでタコ殴りにするのです」


『そっかー!』


 毛玉達が「わああ」と玩具の武器を持ち、化け物に立ち向かっていきました。


 周りからぺこんぺこんとゴム質の鎧を叩きつつ、別働隊が縛られたアンニアちゃんを「わっせわっせ!」と助けています。


 化け物の方も「ギャアギャア!」と叫んで抵抗し、子供をつまみ上げて「ふぇ~ん」と泣かせたり頭をなでたり、ガジガジと食べるような真似をしています。


 しかしそれでも多勢に無勢。二足歩行のカメレオンっぽい化け物は脚を叩かれ、膝を曲げ、頭を差し出すように突き出し、沢山の子供達に「ポンポコポコン! ポンポコポコン!」とポカポカ叩かれ、「ギャア~!」と絶命したフリをしました。


「や、やったぁ、たおしたぁ~!」


「こあいっ!」


「ぼくらも、カンピドリオのしぇんしだ!」


『しぇんしだー!』


 勝どきをあげた幼い戦士達。


 これがいずれ、笑いながら魔物をぶっ殺してまわる毛深くムサい人狼になると思うと時の流れは残酷な気がします。


 ちゃっかり勝どきに混じっていたアンニアちゃんは倒れ伏した化け物に駆け寄って揺さぶり、「れむにーたん、いつまでねてんの?」と不思議そうにしています。


 そんな事をしていると、倒したと思われた化け物が「ギャア!」と立ち上がり、アンニアちゃんが頭をかじられ、「あにゃああああ!?」と悲鳴をあげ、周りの子供達も「ひゃあああ!」と逃げていきました。


 そしてまたタコ殴りが始まり、ようやく化け物を討伐し終わりました。


 倒したと油断せず、キッチリとトドメを刺しなさい、という教訓を与えたかったのかもしれませんね。レム……もとい、化け物さんは。



「おおい、お前らで化け物退治してくれたのか?」


 子供達が化け物から離れ、健闘を称え合っているとと、木陰からひょっこり現れたレムスさんが、中の人がいなくなっている化け物の皮を指差しました。


 皆が歓声をあげつつ、「わかしゃまだ!」「ばかだ!」「みんなでたおしたんだよぉ」「ほめてほめてー!」と言って駆け寄っていきます。


 レムスさんは子供達を抱っこしつつ、「おうおう、よくがんばったな」と相好崩して褒め、皆を抱っこしてあやしはじめました。


「でも、まだ終わりじゃないだろ? みんなでキッチリと解体までするんだ」


『わかった~!』


 レムスさんに促され、子供達がワラワラと中の人がコッソリ逃げた化け物の皮に駆け寄っていきました。


 そして、ベリベリと剥がれるように作られたゴム質の鎧を剥がして解体していき、その中に手を突っ込んで何かを取り出していっています。


 お菓子です。


 化け物の中にお菓子が入っていたようです。


 これは「討伐ごっこ」と呼ばれる遊びなのです。



 討伐ごっこは化け物役の人に子供達が群がり、協力しながら化け物役をやっつける遊びです。要は冒険者の魔物討伐をごっこ遊びにしたものですね。


 化け物役は大人が政府の販売している着ぐるみや魔物に扮するための玩具の鎧をまとったり、子供達が交代で化け物役と冒険者役を務めてやっています。


 前者はともかく、後者はイジメにも繋がりかねないので注意しましょう。


 討伐ごっこもまた、政府が魔物討伐に親しませるために流行らせた遊びです。


 今回はレムスさんが「討伐の報酬」としてお菓子を仕込み、魔物を倒したら解体もしちゃおう、と遊びを通じて教育をしているようです。


 もうお昼ごはんの時間が近づいているので、お菓子は子供達で山分けされ、午前中の遊びはひとまず解散、となったようです。


 皆帰っちゃったのでセタンタ君とマーリンちゃんは転移と浮遊で遊んであげずに済んだのですが、それはそれでちょっと肩透かしが寂しい様子でした。


 アンニアちゃんが「またあそんでねっ」と誘っているあたり、そのあたりの遊びはまた別の機会に――といった感じですね。



「よっしゃ、お前らとりあえず昼飯に行こうぜ」


「レムスの兄ちゃんの奢りでか?」


「いや、兄者の奢りだ。あ! それと店選びはアンニアの希望を聞くからな」


「やったぁ!」


「それと、セタンタとマーリンちゃんには相談事があるんだよ」


「「相談事?」」


「おう。お前ら、俺らと一緒に採掘遠征に行かねえか?」




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