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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
十章:なれ果てのメサイア
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混戦



 神の乱入により、バッカス陣営は大混乱に陥りました。


 囮を務めていた部隊は、自分達の目の前で墓守達が自刃。それに対してどう動くか判断を仰ごうにも――本部との連絡が上手く取れない状態に陥りました。


 本部は囮部隊以上に大混乱に陥っており、さらには複数の解呪領域が重なったうえに――そうなるように神が墓守達を誘導してしまった所為で、全部隊の連絡網に大きな支障が出たのです。


「神を守れ! とにかく墓守に攻撃を仕掛けろ!」


「可能な限り拘束を――」


「できませんッ! 次が来ます!!」


「足止めに成功した墓守が、再び自刃を……!」


 それでも何とか状況を掴んだ部隊や、カヨウさん率いる本部の部隊は神を守るために全力で動きました。


 神はバッカス王国にとっても怨敵ですが、その神が死ぬと世界が滅び、自分達や全国民が死ぬ事になる。そのため、自分の命を顧みずに守らざるを得ませんでした。


「ハハッ! 馬鹿共が命散らしていくのを特等席で見るのキモチイーッ!」


 神は戦場のど真ん中をスキップしながら移動していました。


 墓守達は狂い叫びながら神に殺到し、バッカスの戦士達は必死の形相で墓守を止めにかかりました。解呪領域でまともに行動できない戦士ですら、何とか敵の注意を引こうと奮戦しました。


 しかし、敵はひたすら神を狙いました。


 全ての墓守が神に食いついたわけではありませんが――妖精郷内の墓守の九割近くが神の傍に現れました。


 妖精郷の外にいるメサイアですら、神の存在に鋭敏に反応し、ぐずるように鳴きながら配下の墓守達を神に差し向けました。


「カヨウ!! 神様を転移で……!!」


「やってますっ!」


 カヨウさんは、ひとまず神の身柄を何とか逃そうとしましたが、解呪領域の影響もあって失敗しました。対する神は完璧な解呪領域対策を携えているうえに、高度な術式まで用い、鼻歌混じりにバッカスの「救援」を拒みました。


「よぉ~し、ボクチャンも戦うゾーーーーっ!」


 神は棒きれを手に特攻開始。


 墓守に対しては術式など一切使わず、特攻しました。墓守達は全力で攻撃を仕掛け、バッカス側は必死に敵の攻撃を防ぎました。


 バッカス側に大きな被害を発生させながらも、墓守側も騎士団長らに仕留められていきました。ですが、倒しても倒しても――。


「後方で15体の墓守が再起!」


「キリがねえっ……!」


「いや、終わりはある」


 騎士団長は努めて冷静に応戦しつつ、解呪領域に縛られない光信号で他部隊との連絡を取り、動いてもらいました。


 多重の解呪領域に耐えられない者には離脱してもらい、領域の影響が比較的薄い場所から遠距離攻撃を仕掛けてもらいました。あるいは、神の護衛とは別の行動を取ってもらいました。


『セタンタ! フェルグスさんっ! 聞こえてる!?』


『マーリン! 何がどうなってんだ!?』


『今から説明するから、とりあえず指定地点に移動して!!』


 一方、マーリンちゃんは走りながら交信魔術を使っていました。


 彼女を始め、後方部隊の多くは――墓守達が殺到してくる前に――カヨウさんが転移魔術で戦場から一時離脱させていました。


 後方部隊はズタズタの指揮系統を復帰させるため、バラバラになりながらも浮足立っている囮部隊に連絡を取り、状況と次の作戦行動を説明し始めたのです。


『システム破壊の決死隊のところに、神様が出現したの! それで、神様に墓守達が殺到してる! 中枢近くで墓守達を引き連れて走り回ってんの!!』


 セタンタ君達は、自分達の囮行動が全て無駄になった事を知りました。


 悪態をついた囮部隊をあざ笑うように、無数の神罰タライが降り注ぐ中、それでも彼らは動き始めました。


『決死隊はいま、神様の護衛で手一杯だから! システム破壊には皆が向かって! フェルグスさん達がいま比較的安全かつ近くにいるから!』


 神様が両陣営引き連れて「散歩」している場所は、セタンタ君やフェルグスさんのいる場所のちょうど真反対でした。


 マーリンちゃんは妖精郷システム本体の姿を――騒乱者側から提供されたものをフェルグスさん達にも魔術で見せ、捜索と攻撃を求めました。


『確認した。我々も総攻撃に参加する』


『気をつけて欲しいのが、全墓守が神に食いついているわけではない、って事』


『他にもウロウロしてる奴がいるってか?』


『そう。おそらく、神の仕込み。中枢にまだ数体存在してる。さっきの集団自決で敵の位置が全部変わったみたいだから、正確な位置は不明』


 それでも囮部隊改め、システム破壊部隊はとにかく進む必要がありました。


 神が逃げずにいる以上、神が殺される前に何とかシステムを破壊しさせすれば、何とか世界を守れる。神が殺されれば世界はどちらにせよ滅ぶ。


『フェルグスさん達の方は、カスパール様とレムスさん達も合流してくるから、皆で中枢に挑んで! ボクも可能な限り安全な経路に誘導する!』


『了解。任せておけ』


『道案内、よろしくな』


 フェルグスさんとセタンタ君が指定された場所に移動すると、カスパールさんとレムスさんも転移魔術で合流してきました。


 他にも最寄りの部隊が合流してきました。


「カスパールさん、転移で一気に中枢奥に行けねえの?」


「そーしたいのはやまやまだけど、中枢は空間不安定なうえに解呪領域も濃いとこ多いから、どこ飛ぶかわかんない。無理。不可能ではないけど厳しい」


 とりあえず行けるところまでは走る。


 そう決め、マーリンちゃんの案内でフェルグスさん達は中枢へと向かいました。そして直ぐに遊兵の墓守の見つける事になりました。


 ある程度はマーリンちゃんのナビゲートや、使い魔を使った誘導で進む事が出来ましたが――。


「よりにもよって、中枢の入り口に居座ってやがんなぁ……!」


「全員でかかって倒せるかどうか」


「何人かで受け持つしかないかな~……」


 カスパールさんと、合流した部隊員の大半は、この場に残って墓守を引きつける事になりました。その隙に、フェルグスさん達が突入する事になりました。


『いま入った情報なんだけど、エイさんが別経路からの侵入に成功したみたい』


『あのオッサンだけに任せるのは不安だな』


『エイ殿と連絡は取れるか?』


『もう無理。だから、中枢内部の敵配置は不明』


『まあ誰かしら辿り着けばいけるはず。そうでしょう?』


 カスパールさんは騎士達にだけ支給される武器を――魔剣を起動しました。


 彼女のそれは銃型であり、魔剣ならぬ魔銃。性能は神器並みとまではいかないものの、カスパールさんの力を大きく増強するものです。


「先に行ってて。行けたら行くから」


 囮が注意を引きつけた隙に、カスパールさんは転移魔術でフェルグスさん達を――可能な限り中枢近くへ――送り込み、自身も戦闘に参加し始めました。


 囮に食いつかず、フェルグスさん達に襲いかかってくる墓守もいましたが――攻撃されずに済みました。


 その墓守が突如バランスを崩し、勢いよく地面を転がっていったのです。


 実弾による銃撃により、墓守の関節部を正確に壊した近衛騎士カスパールは、敵の標的が自分に移るのを感じ取り――さらに別の墓守に攻撃しながら囮の役目をこなしました。


「は~っ……。騒乱者の不意打ちにやられたツケかなぁ。めんどいめんどい」


 近衛騎士はボヤきつつも機械のように動き続けました。




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